2022年3月16日

『農業フロンティア』川内イオ・著 vol.5959

【「越境」することで見える、農ビジネスの未来】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166613367

本日は、大和書房の新メディア「I am」主催のイベントということで、利尻島で利尻昆布の6次産業化、地方創生に取り組む大路幸宗さんと対談しました。

大路さんがどんな取り組みをしているか、地方創生や移住をどう考えているかを聞いたのですが、やはり、頭のいい人が一次産業に取り組むと、面白いことになりますね。

本日ご紹介する一冊は、この一次産業の新たな取り組みを紹介した、興味深い事例集。

分野や国境を越え、活躍する農業ベンチャーやプロジェクトを紹介したもので、ぶっ飛んだアイデア、取り組みに目からウロコが落ちます。

東大卒のエンジニアで、NASAのプロジェクトにも参加した加藤百合子さんが農業流通に革命を起こした「やさいバス」や、元建設会社のエンジニアで、個人トレーダーでもある松本靖治さんが考案した「茶畑オーナー制度」など、興味深い事例がたくさん紹介されていて、ビジネス、地方創生のヒントになります。

一次産業の問題を各人がどう考え、どう解決したかを追体験することで、ビジネス思考のトレーニングにもなるでしょう。

どんなに行き詰まったと思われるビジネスも、諦めなければ必ず活路が見い出せる。

そう再確認させてくれる一冊です。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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農業界の平均年齢は67.8歳で、65歳以上の割合が69.6%を占める。全国のおじいちゃん、おばあちゃんが豪雨でも、酷暑でも、寒波が来ても農作業を続けることで、日本の食卓を支えているのだ

ひとつの地域にいくつかのバス停があり、バスと呼ばれる保冷車はそのルートを巡回している。生産者がその日の朝に採れたばかりの野菜を農地に近いバス停に持ち込むと、そのバスは町なかにあるバス停に向かう。そこでは、地元の飲食店や小売店の人たちが待っていて、予め注文していた野菜を受け取り、持ち帰る。バス停はさまざまな場所にあり、銀行の支店、電器店、郵便局もそのひとつ。それぞれの企業や組織がやさいバスと提携していて、地元野菜の中継地点となったり、自ら野菜を仕入れて販売したりしている。サービス開始から4年、静岡から始まったやさいバスの導入先は長野、茨城、神奈川、広島、千葉、愛知、高知にまで拡がり、自治体からの問い合わせは引きも切らない

「地球の反対側から大量に飼料や肥料の原料を運んできてSDGsを叫んでも、矛盾してませんか? 僕は、それぞれの地域で水、エネルギー、食糧をなるべく自給自足するという未来が来ると考えています。それができたら一番サステナブルですよね。そのために、日本でも、ほかの国でも、うちの技術が絶対に役に立ちます」(ムスカ 串間充崇氏)

「海外で高く評価されるような一級品の農産物を作っている人が、経営的にブランディングできるかと言えば、そうじゃない場合も多いんです。そこで僕らが代行することで、日本発のラグジュアリー農産物のマーケットを作りたい」(野口農園 野口憲一氏)

京都おぶぶ茶苑は、農業におけるEC(電子商取引)とサブスクリプションモデルの先駆者でもある。2004年にネットショップを立ち上げ、現在は100カ所以上に茶葉を直送。2008年には、毎月1500円払うと、年4回、毎回6種類以上の茶葉が届く「茶畑オーナー制度」をスタートし、現在、750人の“オーナー”を抱える

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農業の最先端に挑む各人の取り組みはもちろんですが、今に至るまでのキャリアについても丁寧に書かれているので、これから地方でビジネスをしたい人のキャリアの指針にもなると思います。

農業関係者、地方創生ビジネスに携わっている方、ビジネス思考を鍛えたい方は、ぜひ読んでみてください。

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『農業フロンティア』川内イオ・著 文藝春秋

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166613367

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◆目次◆

分野を超える
東大発NASA経由 やさいバスとロボットで「境界」を溶かす エムスクエア・ラボ 加藤百合子
素人集団で売り上げ1億円超へ トマトで拡げるダイバーシティ ドロップファーム 三浦綾佳
技術で越える
ブータンからのラブコール 養鶏から始まる「美しい村づくり」 みやぎ農園 宮城盛彦、小田哲也
ロシア生まれのスーパーイエバエで食糧危機に立ち向かう ムスカ 串間充崇
世代を越える
曾祖母の言葉を胸にバラ農家に 食用から多機能スプレーまで ローズラボ 田中綾華
小松菜農園を継いだネパール人仏画師が故郷でも新事業 葉っぴーFarm ダルマ・ラマ
民俗学者が掘り起こした「1本5000円の蓮根」のニーズ 野口農園 野口憲一
国境を越える
「世界一おいしい」カンボジア胡椒を復活させた男 クラタペッパー 倉田浩伸
海外からインターンと観光客が殺到する「お茶ツーリズム」 京都おぶぶ茶苑 松本靖治
フランスの天才醸造家が佐渡島で挑む独創的なワイン造り ジャンマルク・ブリニョ

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