2022年3月8日

『地に足をつけて生きろ!』スヴェン・ブリンクマン・著 田村洋一・訳 vol.5953

【デンマーク心理学者による、反自己啓発の書】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4908148244

本日の一冊は、現在の「加速文化」に疑問を呈した、注目の生き方指南本。

気鋭のデンマーク心理学者が書いた「反自己啓発の書」ということで、既に世界16カ国で翻訳、累計18万部を突破しています。

現在、推奨されている生き方に、多くの方が息苦しさを感じている、良い証拠ですね。

ベースとなっているのは、いわゆるストア派の哲学で、セネカやマルクス・アウレリウスの本が好きな人は、きっと気に入るに違いありません。(土井もその一人です)

21ページに著者自身がまとめていますが、本書の主張と、現在主流の自己啓発との違いは、以下の通りです。

・現代ではポジティブ思考(実現したい夢をイメージする)が推奨されるが、ストア派ではネガティブ思考(自分が所有しているものを失ったらどうなるか)を推奨する
・現代では常にチャンスのことをお考えろと言われるが、ストア派では自分の限界を知って祝福しろと言われる
・現代では感じるままに生きることを期待されるが、ストア派は自制心と感情の抑圧を教える
・現代では死がタブー視されているが、ストア派では日々己の死を想い、今生きている命に感謝する気持ちを育むことを推奨する

「己の内面を見つめたりするな」「愚痴れ」「コーチをクビにしろ」など、痛快な主張が展開されており、一読の価値ありです。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

—————————-

人は自分の努力だけで幸せになれるものではありません。私たちは他人に頼るものだし、他人もまた私たちに頼るものです

根を下ろすよりも機動性を重んじる21世紀の社会では、結婚生活や友人たちとの関係を安定させるのが極めて困難になってきている。安定しない人間関係はたいてい「純粋な関係」と言われるもので、情緒のみに基づいている

「地に足をつける」のは難しい。実存的不安と不確実性が現代社会を覆っているからだ。その結果として、セラピー、コーチング、マインドフルネス、ポジティブ心理学、成人発達理論などあらゆる種類のガイダンスが横行し、私たちはいいカモになっている

ストア派の教えは、自制心、心の平穏、尊厳、義務感、そして人生の有限性を考察することを教えてくれる。こうした美徳を学ぶことによって、私たちはうわべの成長や変容に惑わされることなく、深い充足感を育むことができる

人生の大事とは、正しいことをすること、つまり己の務めを果たすことである

自分が持っている世界観に立脚しつつ、同時に他人が違う世界観を持っているかもしれないことを受け入れることだ。これを「寛容」という

自尊心の高さは、統計学的に精神病質や不道徳と関連している。近年さまざまな研究結果からわかってきたのは、高い自尊心(自己肯定感)は教育や人材育成に携わる人々が期待していたような素晴らしい精神状態ではないということだ

世の中には自分に何の見返りもなくても、それ自体が良いもの、重要なもの、意味のあるものが存在する

自分自身の過去を振り返るだけでなく、自分が組み込まれている文化の過去を振り返ることも大切だ

—————————-

ファイナンシャル・タイムズ紙は本書を評して、このように書いています。

<挑発に次ぐ挑発のご馳走。企業のサラリーマンたちが声なき声をあげて抵抗するための破壊的マニフェストであり、キャリア開発のお題目で荒稼ぎしてきた業界への痛烈な批判>

社会のなかには、みなさんが「走り続ける」ことで得する人がいる。

そのことに気づかせ、地に足をつけて生きるためのヒントを与えてくれる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

———————————————–

『地に足をつけて生きろ!』スヴェン・ブリンクマン・著
田村洋一・訳 Evolving

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4908148244

———————————————–
◆目次◆

第1章 己の内面を見つめたりするな
第2章 人生のネガティブにフォーカスしろ
第3章 きっぱりと断れ
第4章 感情は押し殺せ
第5章 コーチをクビにしろ
第6章 小説を読め
第7章 過去にこだわれ

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー