2022年3月14日

『ルールの世界史』伊藤毅・著 vol.5957

【ビジネス教養としての、ルール作りのノウハウ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532324300

かつてのスキージャンプや水泳の例を挙げるまでもなく、ルールの変更は、競技の結果に大きな影響を及ぼします。

このことは、ビジネスにおいても同じ。だからこそ、ルール変更の際には、新たな勝者/敗者が生まれることになるのです。

本日の一冊は、このルールメイキングのポイントについて、世界史を紐解きながら解説してくれる、興味深い読み物。

著者は、外資系法律事務所を経て、ルールメイキング、スキームメイキングに特化したフレックスコンサルティングを創設した、弁護士の伊藤毅さんです。

民間企業の戦略立案支援や国の政策立案支援に従事しており、『会計の世界史』の田中靖浩先生ともつながりがあるという著者が、『ルールの世界史』を解説した、かつてない読み物。

※参考:『会計の世界史』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532322030

われわれが今日使っている制度やルールがどこから来たのか。ルール制定までにどんな苦労や混乱があったのか。興味深いエピソードが記されています。

日本人は与えられたルールに素直に従う傾向がありますが、本来、ルールというのは人間社会をより豊かにするために生まれた「手段」です。

手段が古くなり、豊かさや競争力、生産力を損なうようなら、変える決断をするのも、大事なことでしょう。

また、ルール決めは、即ビジネスの結果に結びつくため、ビジネスパーソンは、ルールを「目利き」する能力も必要です。

どうすれば、自社に有利なルール決めができるのか、知る上でも読んでおくといいでしょう。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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多くのルールは、技能と偶然のバランスをうまく作ることで面白さを生み出している

ルールは、統一させることで、多くの参加者を生み出すことができます

アジアでは、すでにポルトガルとスペインが確固たる基盤を築き上げています。完全アウェーのアジアに対して、オランダ・イギリスが新参者として参入するには、それなりの規模をもった船団で挑む必要がありました。オランダもイギリスもそれだけの費用を政府が出すことは困難でした。この両国はここで一つのルールを考えます。「国から出資はできない。ただ、お金を払ってくれれば、アジアの貿易を独占する権利を認めてあげよう。それで出資を集めて儲けてみてくれ」

世界中の新しいものを集めた博覧会を可能としたのは、拡散とコントロールのルールである特許制度があったから

人は深刻な問題に直面したときに、到底敵わない相手より、目の上のタンコブが気になるもの

フランス人がイギリスと違っていたのは道路事情だけではありませんでした。彼らはこの新しい乗り物をなんとスポーツにしてしまったのです

現代のイノベーションにおいても、ライドシェアサービスのウーバーが、タクシー事業者からの反発を受け各国で苦戦しているのは記憶に新しいところです。その一方で、オンラインフードデリバリーサービスのウーバーイーツは、配達員の交通事故や労働環境といった問題点を指摘されつつも、社会に定着しています。この差は、やはり競合事業者がいなかったことによるのだと思います

生まれたルールは成長していきます。人々は、より面白くするため、より効果的に、より安全に、ルールをバージョンアップしていきました。そして、人間と同じように、ルールには終わりがあります

「楽しそうな未来像」こそがルールの生まれるための燃料

ルールメイキング自体がビジネスになる

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ルールがまったくない時代から、スポーツや経済、交通などのルールがどうやって生まれてきたのか、その背景、ルーツがわかる興味深い歴史読み物です。

ビジネスパーソンが教養として読むのはもちろんですが、ぜひ図書館において、子どもたちにも読んで欲しい一冊だと思いました。

ぜひ読んでみてください。

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『ルールの世界史』伊藤毅・著 日本経済新聞出版

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◆目次◆

Chapter1 ルールは「遊び」から始まった
Chapter2 期待と安心感 お金と「信用」のルール
Chapter3 拡散とコントロール 知財の創造ルールで産業を振興する
Chapter4 巻き込みと役割分担 イノベーションを巡るルール対決
Chapter5 アシストと放任 企業を成長させるルール
Chapter6 インターネットがルールメイキングを変えた
Chapter7 ルールの一生

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