2021年8月12日

『生きがいについて』神谷美恵子・著 vol.5815

【これは名著だ。】
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本日ご紹介する一冊は、精神科医、神谷美恵子さんによる生きがい論の名著。

本書のベースにあるのは、著者が精神医学的調査のために滞在したハンセン病の国立療養所「長島愛生園」での体験です。

著者は、テストに応じた男性軽症患者180名のうち、およそ半数が将来に何の希望も目標も持っていないことに驚き、またそんななかでも生きる喜びを感じていると答えた少数の人物に興味を持ち、そこから生きがいの本質について考察を始めます。

「同じ条件のなかにいてもあるひとは生きがいが感じられなくて悩み、あるひとは生きるよろこびにあふれている。このちがいはどこから来るのであろうか」

こんな疑問から出発した考察が、まさかこんなに素晴らしい、示唆に富んだ本になるとは。

名著とは聞いていましたが、読んでみて、その考察の深さに衝撃を受けました。

どうすれば、人は絶望に打ち克ち、生きがいを持って生きることができるのか。

金銭的な成功や肩書き、地位だけでは得られない精神的満足を得るために、どう考え生きればいいか、素晴らしいヒントが書かれています。

文章や引用も美しく、著者の教養を感じさせる内容です。

さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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人間はただ真空のなかでぽつんと生きているのは耐えがたいもので、自分の生きていることに対して、自分をとりまく世界から、何かてごたえを感じないと心身共に健康に生きて行きにくいものらしい

ウォーコップにいわせると、人間の活動のなかで、真のよろこびをもたらすものは目的、効用、必要、理由などと関係のない「それ自体のための活動」であるという

生きがいを感じているひとは他人に対してうらみやねたみを感じにくく、寛容でありやすい

ルソーは『エミール』の初めのほうでいっている。「もっとも多く生きたひととは、もっとも長生きしたひとではなく、生をもっとも多く感じたひとである」と。この生存充実感というものを例の『生きられる時間』という角度から言えば、毎日の生きている時間に内容がぎっしりつまっているというだけでなく、時間の流れに対する適度の抵抗感もなくてはならないのであろう

どんなに苦労の多い仕事でも、これは自分でなければできない仕事である、と感ずるだけでも生きがいをおぼえることが多い

自己に対するごまかしこそ生きがい感を何よりも損うものである

自己の生命に対する防衛的配慮が一切必要でなくなったときこそひとはもっとも自由になる

世を捨てるということが伝統のなかでみとめられているときには、個人的にそういう必要の感ぜられる際に、自他ともに抵抗少なくこの道をとることができるのであろう。西行や芭蕉など、いわば大手をふって世の外へ出て行けたのかもしれない

この「経験の深さ」、もしくは「経験のしかたの深さ」が心の深さをつくるのではなかろうか。いいかえれば、ひとの心に、二つ、またはそれ以上の世界が成立し、それぞれの世界から、各々べつな角度で同じ一つの対象をみるとしたら、この「心の複眼視」から、ものの深いみかたと心の奥行がうまれるのではなかろうか

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人生100年時代になると、人はたくさん挑戦し、成功したり、失敗したりします。

その過程で、さまざまなものを得たり、失ったりするでしょう。

本書は、そんな時代の喪失感や無力感に人々が打ち克つ方法を指南してくれる、希望の書です。

第2の人生を生きたいと考える人にもオススメの内容です。

ぜひ読んでみてください。

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『生きがいについて』神谷美恵子・著 みすず書房

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◆目次◆

一 生きがいということば
二 生きがいを感じる心
三 生きがいを求める心
四 生きがいの対象
五 生きがいをうばい去るもの
六 生きがい喪失者の心の世界
七 新しい生きがいを求めて
八 新しい生きがいの発見
九 精神的な生きがい
一〇 心の世界の変革
一一 現世へのもどりかた

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