2021年5月14日

『まちづくり幻想』木下斉・著 vol.5754

【地方再生失敗の原因は?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4815609128

本日ご紹介する一冊は、なかなか上手く行かない地方創生の現実と処方箋をプロが示した、注目の一冊。

著者は、高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞した、木下斉(きのした・ひとし)さんです。

コロナでも結局進まない地方移住、なぜか上手く行かない大企業の地方拠点、じつは大したことなかったインバウンド消費など、地方創生のとほほ話がたくさん書かれており、その理由をデータを元に冷静に分析しています。

反対に、国内外の上手く行った事例も紹介しており、今後地方が豊かになるのに何が必要か、重要な指摘をしています。

<パソナの淡路島進出が評価される「怪」>
<「成功者」を収奪者だと思い込む人>
<関係人口とは地元のファン増加だという幻想>
<なぜ「ハイエナコンサルタント」は現れるのか>

など、ゴシップ目線で見ても面白い見出しが並んでおり、これは読み物として楽しめる一冊。

地方創生に携わる人はもちろん、官民一体のビジネス、地方ビジネスに取り組む人にとっても、勉強になると思います。

さっそく、本文の中から気になった部分を赤ペンチェックして行きましょう。

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今、地域に必要なのは少なくとも後世に遺恨を残すような「とんでもない大失敗」をしないこと

今では、工場が作られても、本社とは給与体系の異なる子会社、孫会社による工場開発であり、「非正規雇用」ばかり。さらに、地元から人が集まらないからと、外国人労働者の方々に頼るところも少なくありません

地域産業で大切なのは、一部の強い企業に頼るのではなく、重層的な集積です。それは中長期にわたって、地元資本で続けられていくことが大切なのです

地方の人口減少は衰退の原因ではなく、結果なのです。つまり、稼げる産業が少なくなり、国からの予算依存の経済となり、教育なども東京のヒエラルキーに組み込まれる状況を放置した結果、人口が流出したわけです

北海道江丹別でブルーチーズ生産を行う伊勢昇平さんという方が面白い取り組みを続けています。江丹別は今や80名程度の旭川市郊外の集落。そんなところで彼は、家族経営のグラスフェッドにこだわる酪農家の家に生まれました。(中略)あまり量はとれない。それを逆手にとって、彼はこだわったブルーチーズを自ら製造、今ではエアラインのファーストクラスから一流レストランまで使われる大
人気の商品になっています(中略)さらにその独自のライフスタイルが多くの人の共感を呼び、江丹別にはレストランができたり、若者たちが集まってフォレストセラピーを計画したり面白い展開になっています

付加価値の高い製品を少人口で作るから地域は長期にわたり繁栄する

地方社会が女性に閉鎖的で、成長機会に乏しい

常勤にこだわらない柔軟な勤労形態が地方のチャンスに

「応援する」=「売り上げに貢献する」

◆初めての事業 4つの原則
1.負債を伴う設備投資がないこと
2.在庫がないこと
3.粗利率が高いこと(8割程度)
4.営業ルートが明確なこと

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ちょうど長崎県の文化観光事業アドバイザーに就任した直後だったので、「こんなことあるんだ」と、興味深く読ませていただきました。

何事にも「真因」というのがあると思いますが、本書は、地方創生失敗の「真因」について書かれた本だと思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『まちづくり幻想』木下斉・著 SBクリエイティブ

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◆目次◆

第1章 「コロナ禍で訪れる地方の時代」という幻想
第2章 えらい人が気づけない、大いなる勘違い
第3章 「地域の人間関係」という泥沼
第4章 幻想が招く「よそ者」頼みの失敗
第5章 まちづくり幻想を振り払え!

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