2021年2月18日

『プロデュースの基本』木崎賢治・著 vol.5698

【名音楽プロデューサーの「法則」】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797680628

本日ご紹介する一冊は、沢田研二やアグネス・チャン、山下久美子、吉川晃司、槇原敬之、BUMP OF CHICKENなどのプロデュースで知られる、音楽プロデューサーの木崎賢治氏が、そのプロデュース論をまとめた一冊。

ジャンルは違えど、同じプロデューサーとして、気になったので読んでみました。

オビで糸井重里さんが、「100冊買って社内で配ります」「名著と言われている『アイデアのつくり方』をしのぐかもしれない」などと述べていますが、まったく同感。

こんなに読み応えのあるプロデュース論は、ちょっとなかったかもしれません。

著者自身が体験から導き出したヒットの法則、意外性を作るための言葉のねじり方、より多くの受け手に響かせるための「大きな三角形」の法則など、とにかく実践的な内容が書かれていて、役に立ちます。

著者がいう「アーティスト、歌詞、曲」を、「著者、文章、タイトル・装丁」に変えれば、そのままベストセラーの法則になるかもしれません。

また、アーティストにインプットを促すことや、アーティストと作品をあえて寄り添わせないこと、歌詞と楽曲すら合わない方がいいという考え方は、ブランドに厚みを持たせる、斬新な視点だと思いました。

これらのヒットの法則が、沢田研二さんや阿久悠さん、銀色夏生さん、槇原敬之さんなどとのエピソードを交えながら語られるのだから、これが面白くないわけがありません。

これまで読んだどんなプロデュース論よりも、読み応えがありました。

さっそく、本文の中から、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

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たとえば、歌詞の秘密を知りたいと思ったら、方法のひとつとして一、二行目を見て、三行目以下を隠します。そして自分ならその先に何を書くか想像します。自分は三行目に何を書くんだろうか、自分だったらきっとこう言うだろうな、そんなことを考える。そうして三行目を見ると、素晴らしい詩は想像もしないほうに展開しているものです。その飛び方などから学べることがいっぱいあります

槙原紀之の「SELF PORTRAIT」(一九九三年)という曲では、「♪忙しくしている僕を/わかっているのにわざと/電話してくるみんなが~」という詩がありますが、そのあと「なんで続くと思う?」と周囲に聞けば、だいたい「鬱陶しい」とか、そんな言葉を予想するんです。でも槙原くんは「大好き」と続けた

距離があるほど作品の包容力が増えるアーティスト、歌詞、曲で三角形をつくります。するとそれぞれの距離が離れているほど大きな三角形になります。大きな三角形には、たくさんの人=リスナーが入ることができるんです

山下久美子さんはブルースが好きで、だから最初はブルージーな曲ばかりつくっていました。そうしていると、次第に音楽としてはこじんまりとまとまってしまったんです。またやらかしてしまったと思いました。アーティストに楽曲を寄り添わせ過ぎたんですね。反省して考え方を変えて、ポップな詩とメロディーをぶつけてみたら、今度は彼女の持つブルージーな魅力が引き出されて、いろんな人に聴いてもらえるようになりました

ダサいものとカッコいいものって、表裏一体みたいなところがあると思います。ダサいと思われるものには、みんなの心のなかの触れて欲しくない本音の部分があるのかもしれません

詩というのは、心で思ったことを絵が見えるように伝えるもの。だから「悲しい」とか「寂しい」といった言葉を使うんじゃなく、悲しいときにどんな気持ちだったとか、周りがどんなふうに見えていたとか、ものとか絵とかそういうものに置き換えたほうがいいよって

まず伝えるのは、なにしろ歌は丸く歌わなきゃダメだよっていうことです。尖ってはいけない、角ばってはダメ、丸くないと聴く人の心の柔らかいところに入っていけないから

タイトルは感情ではなく、見えているものを表す言葉がいいだろうなと思っているんです。「悲しくて」というタイトルよりも、「ニキビ」とか「そばかす」とか、「〇〇の月」とか、そういうほうが僕は好き。「また会いたい」よりも「メロンパン」という曲に惹かれますよね

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後半には、プロデューサーとして押さえておきたい人間関係術や交渉術、コミュニケーション術も書かれており、まさにプロデューサーのための教科書。

作品を作る方や、誰かをプロデュース、ブランディングする方には、必読の名著です。

僕も思わず100冊買って、著者に配りたくなりました。

ぜひ、読んでみてください。

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『プロデュースの基本』木崎賢治・著 集英社インターナショナル

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http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797680628

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◆目次◆

第一章 いいなと感じて、つくりたいと思ったら、分析して、答えを見つける
第二章 「新しいもの」とは新しい組み合わせのこと
第三章 人と仕事するということ
第四章 ヒットをつくるために僕がしていること
第五章 クリエイティブなライフスタイル

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