2020年9月7日

『お金とアート』山本豊津、田中靖浩・著 vol.5592

【珠玉の対談本】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4046046287

本日ご紹介する一冊は、名著『会計の世界史』の著者、田中靖浩さんと、『アートは資本主義の行方を予言する』の著者で東京画廊の代表、山本豊津さんの夢の対談本。

※参考:『会計の世界史』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532322030/

※参考:『アートは資本主義の行方を予言する』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569826172/

歴史に造詣が深い2人の名著執筆者、しかも会計×アートという知的好奇心を刺激する組み合わせ。

アートと資本主義に深い関わりがあることを知っている読者なら、これが面白くなるのは、当然予想できるでしょう。

読んでみた感想を先に言うと、「予想以上の面白さ」。

2人の教養・雑学がスパークする内容で、「そうだったのか!」と目からウロコが落ちる歴史の真実がたくさん書き込まれていました。

透視図法の出発点に人間の主体性が存在するという話、ダ・ヴィンチ作品の根本にあるサイエンス思考、なぜ江戸時代に日本人の数学能力が向上したのか、利休が長次郎に黒楽茶碗をつくらせた理由など、これからの自己開発、教育、産業振興のヒントがビッシリ詰まっており、これは政治家からビジネスパーソン、教育者、アーティストまで、幅広く読むべき内容です。

著者2人の掛け合いも軽妙で、ものすごく充実した対談企画に立ち会った印象です。

あまりに内容が濃すぎて、紹介しきれませんが、さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

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ずっと中国をお手本にしていた日本ですが、これまでに2度、手本を変えたときがあります。その一つが千利休の侘び茶。室町時代までは中国の美術品を書院に飾るのが大事なしつらいだったのですが、利休は和物のほか、朝鮮やフィリピンのルソン島など、アジア全域にその対象を広げていった。唯一のお手本だった中国が、そこからワン・オブ・ゼムに変わったわけです(山本豊津)

美術の近・現代を支える「文明」としての大切なインフラが「ホワイトキューブ」です。世界のどこでも国立・公立・私立のギャラリーは「真っ白い空間」です。この真っ白い空間が生まれて、額縁が絵画から外れたと言ってもいい(山本豊津)

アルファベットは文字数が26個しかないので、活版印刷に向いていた。(中略)アラビアの生んだ数字はヨーロッパに対して優位性がありましたが、活版印刷の誕生以来、文字情報については圧倒的に劣位になった(田中靖浩)

確認しておきたいのは、透視図法の出発点に「私がここから見ている」という人間の主体性が存在することです。消失点の創造と透視図法の発展は「神からの視点」から「人間の視点」への転換を意味します(山本豊津)

『塵劫記』に戻りますが、この本の海賊版が出回って数学塾がたくさんできた。きっとそれにムカついたのでしょう。著者の吉田光由は『新篇塵劫記』を出版し、そこで「遺題」を出しています。これは問題だけ出して解答を出さず、「解けるものなら解いてみなさい」という読者への挑戦です。この本以降、数学書の「遺題」が流行しました。これで江戸時代の数学レベルが格段に上がったようです。この時代、日本の数学レベルは世界一だったという説がありますが、それは負けん気と「難問を解くのが楽しい」といった社会の空気がレベルを上げたのだと思います(田中靖浩)

そろばんが横に長いのは、金と銀と銭の3種類の通貨は価値の変動があり、三つを同時に計算するためだった(山本豊津)

自分の人生は商品をつくるためだけにあるのではないと考えている人が化ける(山本豊津)

いまおっしゃったことは今回の対談で一番大切なことのように感じます。美意識とは、自分の人生を作品として見ることができる感覚。もはや神がいないのだとしても、自分のことを空の上から誰かが見ている(田中靖浩)

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日本が再び輝きを取り戻すためのヒントや、個人が40代を過ぎてもピカソのように自分を変革し活躍するヒント、自分の人生を作品ととらえ、美意識を持った生き方をすることなど、じつに示唆に富んだ素晴らしい対談でした。

アートや会計の教養が身につき、さらには生き方や自己表現、自己ブランディングのヒントまで示された、期待以上の内容です。

ぜひ、読んでみてください。

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『お金とアート』山本豊津、田中靖浩・著

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◆目次◆

第1章 なぜアートは日本に浸透しなかったのか
第2章 簿記という芸術的なプラットフォーム
第3章 日本で会計の礎をきずいた福沢諭吉と渋沢栄一
第4章 価格から考える「アートの問題点」
第5章 これから絶対に必要な「価値と価格」の話
第6章 「未来の資本主義」の話をしよう

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