2020年8月7日

『トレイルブレイザー』マーク・ベニオフ、モニカ・ラングレー・著 渡部典子・訳 vol.5572

【マーク・ベニオフ、求心力の秘密】
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本日ご紹介する一冊は、セールスフォース・ドットコムの創設者、会長兼CEOのマーク・ベニオフが、企業哲学の重要性と企業にできる社会変革について述べた一冊。

タイトルの『トレイルブレイザー』は、「開拓者」の意味だそうです。

どうしたら儲かるか、売上を伸ばせるかといった話ではなく、企業が新しいバリューに挑む時に大切な推進力とその源となる信頼をどう築き上げるか、そのためにCEOに何が求められるか、著者の体験、エピソードと共に綴られています。

現在、高報酬のIT企業においても、人材の獲得競争は熾烈を極めており、本当に優秀な人材を採りたければ、彼らが心の底から賛同できる企業を作ることが必要不可欠。

具体的には、企業が本気で社会変革に挑むこと、善い企業文化を醸成することがポイントとなってきます。

本書では、セールスフォースが実際に直面した危機を、CEOである著者が思考を変えることでどう乗り越えてきたか、その実際が書かれています。

拠点のあったインディアナ州でLGBTQ差別につながる法案が可決された時、社内で男女差別問題が浮上した時、ツイッターで「黒人比率は、フェイスブック2%、ツイッター2%、セールスフォース2%」と批判された時…。

それぞれの困難に際して氏がそれをどう受け止め、どう思考を転換して正しく対処したか、その苦悩が書かれており、勉強になります。

興味深かったのは、マーク・ベニオフ氏の商売人としてのスタンスを作った、父親の話。本書の冒頭では、著者が経営者だった父から学んだこと、父のような経営者を助けたくてセールスフォース・ドットコムを運営していることなどが書かれており、興味深く読むことができました。

さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

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「成功してお金儲けを追求するうちに、他の人のために何かすることを忘れてはいけませんよ」(マーター・アムリタ─ナンダマイ─が著者にしたアドバイス)

テクノロジーをはじめとした競争の熾烈な業界では、優秀な人材を獲得できるかどうかが損益の分かれ目になりうる。トップ人材が会社を選んだ理由を見ると、多様性があり、インクルーシブ(包的)で、バリューを重視する企業文化であるなど、目には見えない要素が多い

成功と社会貢献を対立軸にしない

父親としては、時には近づきがたいところもあったが、仕事では本物の深い人間関係を築き、従業員と顧客に喜んでもらうためなら手間暇を惜しまなかった。それがビジネスの核心であるかのように

どの企業にとっても、最も貴重な資産は、詰まるところ、顧客との関係だ。そして、あらゆる規模の企業向けに、営業、マーケティング、顧客サービス、EC(電子商取引)の全般で顧客とつながることのできる、よりスマートでかつ直観的な方法を提供するというのが、私たちのビジョンだった

法人登記書類に署名した日、私はCEOとして、また人として、自分の成功の尺度は将来の全従業員がめいめいの仕事にどれだけ意味を見出だせるかにあることを承知していた

インディアナの従業員たちは、差別を認める状態で生活したり仕事をしたりするのが怖いと、私に訴えていた。従業員を守り、安心させるのが私の役割だ

バリューに反する問題から目を背けてはならない

大規模な危機が発生するのは通常、CEOが自社のコアバリューをリセットする必要があるというサインだ

信頼を築くためには、常にカスタマーファーストの文化をつくり、利益だけでなく世の中の状態を良くする選択をしなくてはならない

私たちに必要なのは、21世紀の社会契約を新たに構築することにほかならない。この重大かつ複雑な課題を、政治家だけに任せておくことはできない

本当の自分や本当に信じていることと再びつながる時間を持たないと、最も重要なときに勘頼みで失敗してしまうだろう

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本書の主張を「理想的すぎる」と取る向きもあると思いますが、企業が力強く前に進むためには、「大義」が必要なのもまた事実。

そういう意味で、本書の内容は、経営者や企業に力を与えるものということができるでしょう。

マーク・ベニオフ氏の経営哲学と、そのルーツとなった幼少期の体験が書かれた、じつに興味深い一冊です。

ぜひ、読んでみてください。

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『トレイルブレイザー』マーク・ベニオフ、モニカ・ラングレー・著
渡部典子・訳 東洋経済新報社

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◆目次◆

PartI バリューから価値が生まれる
新しい方向
始まり サンフランシスコのベニオフ家
価値観 何をすべきかが重要だ
信頼 第1のバリュー
カスタマーサクセス テクノロジーを使って変革する
イノベーション AIとエコシステムの力
平等 鏡に映る姿を見る
PartII ビジネスは世界を変えるための最良のプラットフォームである
企業文化
オハナ 企業文化を再定義する
社会貢献 未来のトレイルブレイザーに投資する
初心¥ 空白のページから同じページへ
ステークホルダー 私たちは皆、この地球上でつながっている
アクティビストCEO 企業が本気で社会を変える

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