2020年7月31日

『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』 金谷武洋・著 vol.5567

【名著です。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864103127

思考はビジネスパーソンの武器ですが、じつはその武器は、母国語の影響を強く受けています。

われわれは、言葉で思考するからです。

本日ご紹介する一冊は、知人が「いままで読んだ中で最高の一冊」と絶賛していて、半信半疑ながら読んだ日本語の本。

読み終えた感想は、「日本語教師を含め、日本人は全員読んだ方がいい」でした。

オビ裏を見てみたところ、なんと慶應義塾大学名誉教授の鈴木孝夫さんも、大絶賛しているではないですか!

「この本を読んで、生きていてよかったと思いました」

って、すごい褒めようですね。

本書の著者、金谷武洋さんは、函館ラサール高校、東京大学教養学部を経て、ラヴァル大学で言語学の修士号を取得、モントリオール大学で同博士号を習得した人物で、2012年までモントリオール大学東アジア研究所日本語科科長を務めた人物。

日本語の専門家としての知見と、カナダでの25年にわたる日本語教師の経験から、日本語と英語・フランス語の違いについて論じており、特に言語の思考に与える影響について論じた部分が面白い。

主語を強調する言語と、主語がなくても成立する言語とで、どれだけ思考や価値観が変わるのか、じつに興味深い事例が示されています。

あいさつから理想の愛のとらえ方、文学表現の違いまで、なぜそれが生じているのかが言語学的視点から詳細に分析されており、これはわれわれの世界のとらえ方を変える本だと本気で思いました。

さっそく、本文の中から気になったポイントを赤ペンチェックして行きましょう。

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日本語の「ありがとう」には話し手も聞き手も、つまり人間が一人も出てきません

英語は「(誰かが何かを)する言葉」、日本語は「(何らかの状況で)ある言葉」

この表現ができた時代に二人が見ていたのは、おそらく外の景色です。例えば、まだ太陽が上がりきらずに地平線に顔を出した様子を二人が並んで見ているのです。そして「まだ朝早い」という状況に二人が心をふるわせて、「こんなに早いんですねぇ」と心を合わせているのが「おはよう」という表現となりました。別の言葉で言うと、二人はそこで「共感」しているのです

日本語は共感の言葉、英語は自己主張と対立の言葉

お互いを見合うのではなく、心を通わせるために二人が同じ方向を見ようとすると、不思議なことが起きます。相手と並ぶことで相手が視界から消えてしまい、見えなくなるのです

日本人は心を合わせるときに、見つめ合うのではなく、並んで同じものを見る

日本人の苗字は「祖先はどこに住んでいたか」に注目しますが、アメリカ人は「祖先はどんな人だったか」が大切

間違いなく現代の最も優れた文法研究家だと私が思う三上章さんは、「日本語は述語だけで文になります。日本語文法から、主語という概念を抹殺しなくてはいけません」と主張しました

英語の話者は聞き手と同じ地平に立たないどころか、自分を含めた状況から身を引き離して上空から見下ろしているようになってしまった

Iは空からでないと見えない

日本語の基本文
(1)(動詞文)よく笑う。
(2)(形容詞文)可愛い。
(3)(名詞文)赤ちゃんだ。

「名詞+は」は主語ではなくて「主題」なのです。「主題」が何のためにあるかをここでお話しましょう。それは「~について、これから大切なことを言いますよ」と、聞き手の注意を引くための話し手の合図なのです

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著者は日本語と英語、フランス語を比較してその違いを語っているわけですが、なるほど言語が違うと愛のカタチや視点が著しく異なるということがよくわかりました。

個人主義が発達するにつれて英語が変化し、主語を強調するようになったという話も、興味深く読めました。

言語はわれわれの視点や思考に多大な影響を与えています。

思考本を読むのも大切ですが、その前に自分たちが使っている言語について意識すること。

勧められて読んだ本ですが、本当に「目からウロコ」の一冊でした。

読むことを強くおすすめします。

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『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』
金谷武洋・著 飛鳥新社

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◆目次◆

はじめに
第一章 日常表現に秘められた理由
第二章 人名・地名に秘められた理由
第三章 声と視線に秘められた理由
第四章 愛の告白に秘められた理由
第五章 道の聞き方に秘められた理由
第六章 日本語の十大特徴
第七章 英語をマスターするための五つのアドバイス
第八章 だから、日本語が世界を平和にする!
おわりに
文庫版のためのあとがき

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