2020年2月18日

『2050年世界人口大減少』ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン・著 河合雅司・解説 倉田幸信・訳 vol.5457

【世界人口の大減少が始まる】
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「人口は最も確実な未来」と言われますが、それはよほどのことがない限り、30歳の人が20年後には50歳になるから。

30歳で結婚して子どもを産んだなら、当然その子どもは20年後に20歳になっているわけで、それに伴い、進学、就職、消費をするわけです。

最近は、人口予測に関する本がいくつかベストセラーになったこともあり、2050年に97億人、2100年に110億人という国連の予測が広く知られるようになってきています。

ただ、本当にそうシナリオが進むのか?

そこに疑問を投げかけ、むしろ2050年を機に人口は減り始める、というのが本日の一冊、『2050年世界人口大減少』の主張です。

著者のダリル・ブリッカーは、名門調査会社イプソスのグローバルCEOであり、本書を書き上げるにあたって、中国、インド、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパ、韓国など世界各地でフィールドワークを敢行。

現地で進行しつつある都市化と女性進出の社会的トレンド、宗教、その他の価値観も加味しつつ、現実的な予測をしています。

出生率低下と高齢化が同時進行している日本に関してもコメントしており、これによると、現在わが国が取り組んでいる各種の政策は、変更を迫られそうです。

女性の労働参加率向上の余地は意外と小さく、定年を引き上げても消費は増えない。また、AIやロボットは生産するが消費しない。

どれも経済成長の真の足かせである消費不足の問題を解決できない、という点を、ズバリ指摘しています。

データとフィールドワークに基づいた本書の予測は、目からウロコであり、今後、政策や経営方針に影響を与えそうです。

それではさっそく、気になる部分を赤ペンチェックして行きましょう!

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21世紀を特徴づける決定的な出来事、そして人類の歴史上でも決定的に重要と言える出来事が、今から30年ほど先に起きるだろう。世界の人口が減り始めるので
ある。そしてひとたび減少に転じると、二度と増加することなく減り続ける

これまで数十年間、カナダは人口一人当たりで見て、主要な先進国のなかで最も多くの外国人を受け入れてきた。しかも他国で生じたような民族間のトラブルやスラム街の発生、猛烈な論争はほとんど起きていない。そのようにできた理由は、カナダが外国からの移民を経済政策の一手段と考えた──移民政策には能力に応じたポイント制(merit-based pointssystem)を用いたため、概してカナダへの移民はカナダ生まれの現地人より教育レベルが高い──点と、カナダが多文化主義を受け入れた点にある

人口減少をなんとかしたいなら、国として移民と多文化主義の両方を受け入れなければならない

一度下がった出生率を人口置換水準──人口の維持には女性一人当たり平均2・1人の子供を生む必要があるとされる──にまで高めることに成功した政府はない。しかも、そうした支援策にはとてつもない費用がかかるので不況時には削減されがちだ

農場では子供を作るのが「投資」になる。牛の乳搾りをする手、畑を耕す腕が増えるからだ。だが都市では子供は「負債」になる。養うべき口が一つ増えるだけだ

女性は都市に引っ越すことで知識が増え始める。知識が増えた女性にとっては、自分が男性に服従するのは自然で当たり前なことではなく、是正すべき間違いとなる

都市化と女性の地位向上が、発展途上国でも起きつつある

実はもう一つ、「低位推計」と呼ばれるシナリオがある。全女性が産む赤ちゃんの数が、平均で予測より0・5人少ないというシナリオだ。出生率は先進国のみならず発展途上国や最貧諸国でも激減する。このシナリオが正しければ、世界人口は2050年前後に85億人で頂点に達し、その後は減り始める。しかも急速に、だ。その減り方があまりに急なため、2100年ごろの世界人口は今とさほど変わらない70億人前後に戻るだろうと予測される。世界人口は増え続けるのではなく減っていくのである

日本人女性と韓国人女性の労働参加率は、アジア以外の先進国より低めではあるが、それほど低くはないのだ。日本は49%、韓国は50%だが、米国は56%でドイツは55%である。国からも、雇用主からも、夫からも、ほとんど支援を得られないまま、それでも仕事をしようと心に決めた(おそらくはお金の必要性もあろう)ア
ジア人女性の多くは、時間切れギリギリになるまで出産を先延ばしする。日本人女性の第一子出産時の平均年齢は30歳だ。米国では26歳である

仕事を続ける高齢者が増えたところで若者ほど消費しないという現実は変わらないし、機械はいっさい消費をしない。生産に関する問題にはいくつもの現実的な解決策があるものの、それらはひとつとして経済成長の真の足かせである消費不足の問題を解決できない

日本がかつて一度も競争力を持てたことのない分野、1970年から80年代の活気に満ちていた時期でさえそうだった分野として、デジタル技術研究がある

アフリカの人口爆発は止まる

ケニアの大学生の40%が女性

1990年から1995年にかけて世界人口のおよそ0.75%が国外に移住したが、2005年から2010年にかけてその比率は0.61%に減っている

どうやら「我々ふたり、私たちのふたり」のスローガンはインド人の急所を突いたらしい

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大学で「歴史人口学」を履修していたため、この手の本は欠かさず読んでいますが、本書の予測にはリアリティがあります。

結局、未来を決めるのは、「われわれがどうしたいか」なのですが、その点も含めた予測が本書には書かれているのです。

現在好調なインド経済、アフリカ経済が今後どうなるのか。中国はいつ失速するのか。

投資家にとっても気になる未来予測が、専門家の本音、現地で生きる若者たちへのフィールドワークとともに示された、じつに読み応えのある一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『2050年世界人口大減少』ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン・著
河合雅司・解説 倉田幸信・訳

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◆目次◆

序章 2050年、人類史上はじめて人口が減少する
1章 人類の歴史を人口で振り返る
2章 人口は爆発しない──マルサスとその後継者たちの誤り
3章 老いゆくヨーロッパ
4章 日本とアジア、少子高齢化への解決策はある
5章 出産の経済学
6章 アフリカの人口爆発は止まる
7章 ブラジル、出生率急減の謎
8章 移民を奪い合う日
9章 象(インド)は台頭し、ドラゴン(中国)は凋落する
10章 アメリカの世界一は、今も昔も移民のおかげだ
11章 少数民族が滅びる日
12章 カナダ、繁栄する“モザイク社会”の秘訣
13章 人口減少した2050年、世界はどうなっているか
解説 「少子高齢化大国・日本は、“世界の未来の姿”だ」河合雅司
謝辞
ソースノート
訳者あとがき

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