2019年11月15日

『2030年の世界地図帳』落合陽一・著 vol.5397

【落合陽一が解説する2030年の世界】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797399953

毎年、年末になると未来予測本が出てきますが、本日ご紹介する一冊は、2030年の世界を、人気の著者、落合陽一さんが解説した一冊。

「世界地図」というコンセプト通り、世界の人口推移、覇権の推移、テクノロジー、貧困、環境問題といったあらゆる視点で、これからの世界地図がどうなるのかをまとめています。

人工増減率やGDP成長率、貧困率等の各種統計を用いながら、世界の問題と日本の相対的地位の推移、課題と解決策を論じており、年末に読むにはピッタリの読み物です。

議論のベースにSDGs、デジタル化、グローバル化、格差問題があり、「デジタル発酵」という新しいコンセプトも示されています。

「発酵」とは、<ある限られた領域の中で無秩序に混ざり合う内向きの力>のことですが、これがデジタルで起こった場合、何が生まれてくるのか。

閉塞感のある日本に、希望をもたらす論考が示されています。

なかでも、面白かったのは、著者と経済学者・安田洋祐氏との対談。

「高度な技術力」と「安価な労働力」の掛け算の公式は、これからあらゆる分野で活用できる考え方だと思いました。

そして、これから台頭するアフリカについて、『アフリカビジネス入門』を著書に持つ池上彰さんと語る対談も興味深い。

※参考:『池上彰のアフリカビジネス入門』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822274349/businessbookm-22/ref=nosim

編集面から見ると、通常、巻末に置いてお茶を濁す対談企画が、戦略的に用いられている点が、斬新でした。

さっそく内容を見て行きましょう。

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さまざまなテクノロジーが、その土地に根付いたモノやサービスと掛け合わされることで、新たな魅力と価値が現れてくる。それは、じめじめして朽ちかけた場所から生えてくる「新しい芽」のようなもので、一見奇妙に見えていても、そのユニークさにおいて外部に開放された、新しいローカリズムのあり方を示しています

◆世界のハイテク都市(2017)
1位 サンフランシスコ
2位 ニューヨーク
3位 ロンドン
4位 ロサンゼルス
5位 ソウル

◆2030年人口予測(単位:千人)
1位 インド  1,503,642
2位 中国   1,464,340
3位 アメリカ  349,642
4位 インドネシア 299,198
5位 ナイジェリア 262,977

◆2016年から2030年(予測)の成長率予測
1位 インド     248.3%
2位 ベトナム    212.0%
3位 バングラデシュ 194.3%
4位 フィリピン   179.2%
5位 パキスタン   173.2%

テクノロジーの動向を概観するのもののひとつとしてよく名前が挙がるのが、たとえばガートナー社が毎年発表している「ハイプ・サイクル」

テクノロジーの動向予測として有名なのが、IBM社が毎年発表している「5in5」

インドのすぐ後ろに控えているのはアフリカ諸国でしょう。アフリカ最大のナイジェリアの人口は、2030年には2億6000万人、2050年には約4億人にまで増加し、米国を抜いて世界3位になると予測

それまでは先進国内の「高度な技術力」と「高価な労働力」によって製造されていた商品が、「高度な技術力」と「安価な労働力」を組み合わせたことで、より競争力を得たんです。多国籍化した企業が新興国にガンガン工場を作ってシェアを拡大していく。このコンビネーションは最強です(安田洋祐氏)

知的生産の分野もリモートワークや、自動翻訳などの恩恵による安価なローカライゼーションができるとなると、国内コンテンツが、世界のトップに席巻される可能性もありますね。ネットフリックスやアマゾンのビデオサービスなども、国内へのインパクトは確かに大きいです

アフリカならではのサービスはほかにもあります。CarePayというケニアの企業は、モバイルウォレットを利用して、医療費を積み立てるサービスを始めています

社会や産業のソフトウェア化によって限界費用がゼロに近づくと、やがてその矛先はエネルギー産業へと向かうかもしれません。なぜなら、無料で提供されているソフトやサービスの限界費用をさらに下げようとすれば、コンピュータやデータセンターの電力コストの削減に行き着くからです

古典的で端正な日本文化を好む人には、悪趣味に見えるかもしれません。しかし、私はこの「違和感のある接続」によって創造された「奇妙な日本」という方法論こそが、これから始まる2030年代の世界における日本の立ち位置を見つける鍵になると考えています

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最新の議論、固有名詞がいろいろと登場してくるので、読者にはある程度の知識ベースが求められますが、まさに来年以降、問題となってくるポイントがズバリ示されています。

延命措置が限界を迎える今後の日本で、どう生きるか、どう働くか、たくさんヒントが詰まった一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『2030年の世界地図帳』落合陽一・著 SBクリエイティブ

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◆目次◆

第1章 2030年の未来と4つのデジタル・イデオロギー
第2章 「貧困」「格差」は解決できるのか?
第3章 地球と人間の関係が変わる時代の「環境」問題
第4章 SDGsとヨーロッパの時代
落合陽一×池上彰対談

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