2019年11月20日

『観光ブランドの教科書』岩崎邦彦・著 vol.5400

【祝・5400号】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453232307X

インバウンド施策が打たれてからしばらく経ちますが、ここにきて「観光公害」などの問題が浮上し、本当に観光が社会経済にプラスになっているのか、検証段階に入っています。

本日ご紹介する一冊は、地域マーケティングの功績により、日本地域学会賞奨励賞、財団法人商工総合研究所中小企業研究奨励賞などを受賞している、静岡県立大学経営情報学部教授・学長補佐・地域経営研究センター長の岩崎邦彦さんが、観光ブランディングの基礎と実践を説いた一冊。

観光に関する各種調査をもとに、何が観光ビジネス成功の決め手になるのか、どうすれば地域のブランド力を上げられるのか、具体的な切り口が示されています。

興味深いのは、「ブランドは、論理を超える」と題した項目で書かれている、以下の事例。

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長野県に行ってみたいと回答した人は47.9%であるが、軽井沢に行ってみたいと回答した人は、61.6%

栃木県に行ってみたいと回答した人は26.2%であるが、日光に行ってみたいと回答した人は、ほぼ倍の53.1%

岐阜県に行ってみたいと回答した人は37.0%であるが、飛騨高山に行ってみたいと回答した人は、60.0%

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これは論理的に考えて明らかにおかしいのですが、人間の認知の面白さを伝えています。

では、どうすれば観光客に地域を認知させ、訪問→滞在→消費→リピートを実現させることができるか。

本書には、そのヒントが示されています。

さっそく、内容をチェックして行きましょう。

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長野県に行ってみたいと回答した人は47.9%であるが、軽井沢に行ってみたいと回答した人は、61.6%

栃木県に行ってみたいと回答した人は26.2%であるが、日光に行ってみたいと回答した人は、ほぼ倍の53.1%に上っている

検索サイトで、それぞれの地域を画像検索してみると、興味深いことが分かる。軽井沢、日光、飛騨高山の画像検索では、その地域ならではの「写真」が検索結果の上位に表示される(中略)一方、長野、栃木、岐阜の画像検索の結果はどうだろうか(中略)上位に表示されるのは、「地図」である

ブランド力にもっとも大きな影響を与えている因子は、「明確なイメージ」

「明確なイメージ」に関わる因子は、具体的には次のような変数(質問項目)から構成されている。
・地域のコンセプトは明確か
・地域のイメージは明確か
・「らしさ」のある地域か

京都は、「伝統」で尖っている。北海道は、「おいしい」で尖っている。沖縄は「海」で尖っている。東京は、「活気」で尖っている

日本の山全体で高さの競争をしても、どの山も「富士山」には絶対にかなわない。だが、山から、カルデラ火山以外を「引き算」し、カルデラ火山に絞り込むと、どうだろうか。高さでは全国100位にも入らない「阿蘇山」がナンバー1になれる

温泉全般で勝負しても、「おんせん県」の大分県にはかなわないかもしれない。「温泉」と聞いて、全国の3割の人が思い浮かべる都道府県が、大分県だ。では、「温泉」と「猿」を“掛け算”するとどうだろうか。
「温泉」×「猿」=地獄谷野猿公苑

独自のシンボルがあれば、イメージが浮かびやすくなる。イメージが浮かべば、地域引力が生まれる

日清食品よりも「カップヌードル」、江崎グリコよりも「ポッキー」、食よりも「ラーメン」に絞った方が、インパクトも、引力も強くなる

かつおの漁獲量の第1位は「静岡県」、2位は「東京都」、3位は「宮城県」である。「高知県」はベスト3には入っていない(中略)地域の「食」のブランドづくりにおいて大切なのは、「生産量」や「漁獲量」の多さではない。観光客や地元の人々が、その食と出会える場所の多さである(中略)「高知県」&「鰹たたき」で検索すると、136件の飲食店が出てくるが、「静岡県」&「鰹たたき」で検索すると、わずか21件だ

観光大国のベスト10で、幸福度ランキングのベスト10に入っている国は、一か国もない

どうすれば「質の観光」が追求できるのか。キーワードは、(1)「滞在」、(2)「リピート」、(3)「地元消費」だ

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書かれていることは、王道のブランディングメソッドですが、リサーチをもとに観光における地域ブランディングの正解を示した点が興味深い。

画像検索や飲食店検索を使った著者のリサーチ手法は、どんな地域、お店でもできるので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

これはおすすめの一冊です。

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『観光ブランドの教科書』岩崎邦彦・著 日本経済新聞出版社

<Amazon.co.jpで購入する>
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◆目次◆

はじめに──引力ある地域をつくろう
第1章 誘致・誘客からマーケティングへ
第2章 観光のブランドづくりとは何か
第3章 どうすれば、強いブランドが生まれるのか
第4章 イメージが浮かばなければ、選ばれない
第5章 「ブランド」と「地名」は何が違うのか
第6章 地域に「尖り」はあるか
第7章 何かで、一番になろう
第8章 強いブランドには、「シンボル」がある
第9章 「引き算」で引力を生み出そう
第10章 「食」がブランドを強くする
第11章 ブランドづくりの6ステップ
第12章 観光立国は「幸せな国」か
第13章 「量の観光」から「質の観光」へ
第14章 「質の観光」「持続可能な観光」をどう実現するか
おわりに──大切なものは、目に見えない
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