2019年11月13日

『リアルビジネス3.0』日経トップリーダー・編 vol.5395

【中小企業を救う「教育化」の視点】
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本日の一冊は、「教育化」をキーワードに成功を続ける中小企業16社(実際には本文にもいろいろ登場するので、それ以上)を取り上げた、成功事例集。

ドラッカーが、「顧客の創造」という言葉で語っていますが、まさに経営は顧客の創造。

「教育化」はその鍵となるコンセプトです。

現在は、サブスクリプションモデルが全盛ですが、じつはサブスクリプションモデルには、「解約しやすい」という弱点があります。

固定費を大量投入した場合、埋没費用の法則が働き、なかなかやめられないものですが、変動費であるサブスクリプションモデルは、顧客の気まぐれで簡単にやめられる。

これを防ぐためにも、そして顧客の深いニーズを満たすためにも、教育化は使えるコンセプトなのです。

化粧品を売るのではなく、キレイになる方法を売る。保冷箱を売るのではなく、温度管理のやり方を教える。

「教育化」は、顧客のライフタイムバリューを伸ばすのと同時に、従業員をプロフェッショナル化し、やりがいを感じさせる手法です。

では、どんな企業がどのようにして教育化にシフトし、成功しているのか。

さっそく内容を見て行きましょう。

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顧客に教えることは楽しい

製品をただ作ったり売ったりするだけでなく、顧客が買った後も関係を維持し、継続的に収益が上がるような仕組みづくり。これが事業のサービス化である。このサービス化がさらに進み、新しい動きが起きている。それが「教育化」だ

たとえば香川県宇多津町の大和製作所。もとは製麺機メーカーだが、製麺機を拡販するには顧客であるうどん・そば店に繁盛してもらわなければいけないと、麺の学校を開設。経営や調理技術を学んだ生徒たちが、製麺機を購入してくれるというモデルを築いた

東邦レオは剪定や花壇の整備だけではなく、植栽委員会の立ち上げ指南、住民同士の意見対立の調整、寄せ植え講座のような住民が仲良くなれるイベントの開催など、植栽という側面からマンションのコミュニティー形成を住民と一緒に進める

資生堂は「SHISEIDO THE STORE」(東京・中央)で、化粧品販売だけでなく、個室でのメークアップレッスンを強化している(中略)料金は1時間で1万2000円からで、SNSでは「プラチナチケット」と呼ばれるほどの人気レッスンだ

今までのような、お客さんとサービス提供者という関係性が崩れて、境界線が曖昧になると見ています。共通のテーマを持って、それを解決したり、共に学んだりする。一緒に事業そのものをつくるプロセス自体が尊いものになるのではないでしょうか(東邦レオ 吉田啓助氏)

「撮った本人は無難なカットを選びがちだが、うちの店員がアドバイスして、あえて下向きの顔、目をつぶった顔も選び、ストーリーをつくっていくと喜ばれる」サトーカメラは子供から高齢者まで、カメラの性能や撮影技術に詳しくない顧客に丁寧に撮り方を教える

金沢市内を走る2台の通学用シャトルバス。金沢大学と学生の居住エリアを結ぶ3ルート・16便に、停留所から続々と乗り込む学生の姿が朝夕に見られる。このバスは「マメバス」という名称で呼ばれていて、苗加不動産(金沢市。屋号は「のうか不動産」)が運行する。主力事業は賃貸物件の仲介・管理だが、2011年から入居者専用の無料サービスとして取り組み始めたワコン(和歌山県紀の川市)は段ボールや保冷箱など、主に梱包材の製造販売を手掛けている。こうした会社の営業担当者は、普通なら「箱を売る」のが仕事だ。しかし西田耕平社長は、営業担当者に「箱を売らずに、温度を売れ」と指導する。医薬品や食品など、保冷輸送が必要なものについて、どうしたら適切な温度管理ができるかを教えることを優先しなさいという意味だ

パッケージメーカーであるアンゼン・パックスにとって、マーケティング支援は付帯サービスという位置づけなので、基本的に無料に設定している

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適切な温度管理の手法を教える和歌山の保冷箱メーカー「ワコン」、イベント運営方法や星空の楽しみ方を教える天体望遠鏡国内トップシェアメーカーの「ビクセン」、トイレの臭いの原因を探し出すプロ集団「アメニティ」…。

いずれも個性的かつローテクでできる手法を紹介しており、いますぐ自社で実践できそうなのがポイントです。

ぜひチェックしてみてください。

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『リアルビジネス3.0』日経トップリーダー・編 日経BP社

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◆目次◆

PART1 教育化の根拠 顧客に教えることは楽しい
PART2 教育化の実例 [BtoC編] 消費者は何を求めているのか
・人間関係も良くします! 住民の対立に首を突っ込む緑化会社【東邦レオ】
≪インタビュー≫吉田啓助氏(東邦レオ グリーンカルチュラル・エンジニアリングカテゴリ事業責任者)
・部活動型ビジネス 人気集める「花ひろば学園レモン部【花ひろばオンライン】
・顧客一体経営の模範店 カメラでなく、「撮る楽しさ」を売る【サトーカメラ】
・不動産会社なのに無料バス、廉価カフェで学生をサポート【苗加不動産】
・「学べるホームセンター」 年間2万人参加の驚異のワークショップ【グッデイ】
・月1000円で提供する「家ドック」 社長ホットラインも開設【日本戸建管理】
・スタイリストが選ぶ服 「新しい発見」を届けて、女心を魅了【エアークローゼット】
・全人類職人化計画 「好きな壁紙」と暮らす生活を提案【フィル】
・楽天大学の仲山進也学長に聞く 目指すのは「学校のような店」

PART3 教育化の実例 [BtoB編] カスタマーサクセスが鍵
・全力でカスタマーサクセス 顧客の成功と社員の評価をひもづけ【ベルフェイス】
≪インタビュー≫中島一明氏(ベルフェイス社長)
・和歌山の保冷箱メーカー 合言葉は「箱を売るな、温度を売れ」【ワコン】
・イベント運営方法も指南 星空の楽しみ方を教えるプロ集団
・商品は「社員の教育速度」 修理専門会社が大手社員の教育を代行【京西テクノス】
・トイレメンテナンスを極める 臭いの真因を探し出す診断士軍団【アメニティ】
・「どこにでもある酒屋」から「95%」を捨て小口取引へ。顧客に合う酒を個別提案【酒商山田】
・「経営課題、解決します」 売るのは自社製品でなく、自社の失敗【アスクラボ】
・全国の売れ筋を把握 職人技が生きる情報を無償で提供【アンゼン・パックス】
PART4 教育化の手順 本質的欲求の満たし方
【付録】三段活用シートを使ってみよう!

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