2019年7月11日

『アパレルは死んだのか』たかぎこういち・著 Vol.5313

【業界専門家による、アパレルビジネス分析】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862806929

ライブドア、スタートトゥデイは、ともに業界知識がないことによって成功し、業界知識がないことで失敗したと思っています。

ベンチャー起業家は「常識を破壊する」ことに重きを置き過ぎて、最終的に業界の洗礼に遭う。

その点、アマゾンはしたたかです。すべての商品ジャンルで人脈と信用を持つ業界のプロフェッショナルを責任者に据え、巧みに交渉を進める。完全に優位性を握り、抜けられない状況を作った上で、さらなる条件交渉をする。

やはり、業界知識は重要なのです。

本日ご紹介する一冊は、アニヤ・ハインドマーチ、オロビアンコ、リモワ、マンハッタン・ポーテージなどを日本に広め、東京モード学園ファッションビジネス学科でも講師を務めるファッションビジネスの専門家、たかぎこういちさんによる、アパレル業界論。

「アマゾン vs ZOZO」
「ユニクロ vs GAP」

といったポピュラーなトピックで、アパレル業界を取り巻く環境、競争状況、メインプレイヤーの実力を分析しており、じつに読み応えがあります。

ジャーナリストや投資家が書く、表層的な分析とは違う、各社の真の競争力が浮かび上がってきて、じつに勉強になります。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

———————————————–

ファッション企業各社のECサイトの売上比率が上がり、社内にもIT人材が定着するようになった。当然、各社は利益率の高い自社運営サイトに売れ筋を集中させるようになる。先ほど述べたように、他社のEC支援事業を大きな売り上げの柱としているZOZOにとって、この変化は大きな危機である。こうした背景から、ZOZOは性急な成長目標を掲げたのではないだろうか

セール感が続けばどうなるか。ジャーナルスタンダードなどを展開するベイクルーズがそうしたように、業界全体がゾゾタウンをアウトレット販売専門の在庫処理モールとして扱い、プロパー販売は自社運営ECで、という構図にもなりかねない

「服好きのいない企業」だと結論付けたことには、さらに大きな理由がある。それは採寸についてである。ゾゾのPB商品ではゾゾスーツでヌードサイズを測って注文するが、実はビジネススーツの採寸とヌード計測サイズは、ほぼ関係ない

PB事業を統括する伊藤正裕取締役には、明日にでもプロに助言を求められることをお勧めする。すばらしいビジネスモデルを作り上げたチームの斬新なIT技術で、新しいPBのビジネスモデルを築いてほしい

アマゾンが目指すものは、他社の商品の販売データと日々アップされる画像データから見える、トレンドや傾向を正確に踏まえた商品企画だろう。母数が大きければ大きいほど、統計精度は高くなる。究極の目的は、利益率の高いオリジナル商品の販売である。2017年9月には実験的とはいえ、ヨーロッパで「find」と名付けたオリジナルファッションブランドのコレクションをスタートさせている

「AT TOKYO」は確実にアマゾンのファッションイメージを高め、定着させていくと共に、東京発信の有能な新人デザイナーを取り込みつつある。5年後に注目を浴びる東京発のデザイナーは、ほとんどアマゾンから生まれるであろう

ファッションビジネスで最も重要なのが、MDである。MDとは、「五つの適正」のことを指す。「商品」「時期」「場所」「量」「価格」の適正な提供

ユニクロは、常時同じ商品を販売するため、1SKU当たりの生産量を多くできる。そのため、コストダウンが容易に図れるのである

メイシーズ、コールズ、ノードストロームなどは、不採算店を閉めるとその地域のオンラインの売り上げも減少すると報告

米国のオフプライスストアの上位3社(TJマックス/ロス・ストアーズ/バーリントン・ストアーズ)は2019年1月期の合計売上高606.4億ドル。百貨店上位3位(メイシーズ/ノードストローム/ディラード)合計の468.1億ドルを29.5パーセントも上回った。売上格差はさらに開く傾向にある

エシカルを全面に出したビジネスモデルの火付け役となったのが、TOMS(トムス)

———————————————–

ファッション業界でビジネスをしている人や、就活生はもちろん、ファッション企業に投資をしている人、別の角度から現在のビジネストレンドを眺めたい人に、オススメの一冊です。

業界のプロが各企業の将来性をどう見ているのか、どんな指標を参考にしているのかがわかる、ビジネス書的に見ても力作です。

ぜひ読んでみてください。

———————————————–

『アパレルは死んだのか』たかぎこういち・著 総合法令出版

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862806929/

———————————————–

◆目次◆

第1章 アマゾン vs ZOZO
第2章 ユニクロ vs GAP
第3章 米国ファション業界のいま
第4章 変われない日本企業
第5章 パラダイムシフト前夜
第6章 アパレルの生き残る道

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー