2019年5月10日

『流れといのち』エイドリアン・ベジャン・著 柴田裕之・訳 木村繁男・解説 vol.5269

【やっぱりこれも名著だ。】
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本日ご紹介する一冊は、土井が2013年に「仮に今年一年、一切の読書を禁じられたとして、その前に一冊だけ読みたい本を選べと言われたら、間違いなく本書を選びます」と言い切った名著『流れとかたち』の著者、エイドリアン・ベジャンによる待望の新刊。

※参考:『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』
エイドリアン・ベジャン、J・ペダー・ゼイン・著
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314011092/

今回も大いに期待して読んだのですが、やっぱり「当たり」でした。

既に原稿を読んだ京都大学大学院教授の鎌田浩毅さん、経営コンサルタントの神田昌典さん、橘玲さんが絶賛していますが、橘玲さんにいたっては、「ひと言でいってスゴい」と言い切っています。

著者のエイドリアン・ベジャン氏は、マサチューセッツ工科大学で博士号取得後、カリフォルニア大学バークレー校で研究員、コロラド大学で准教授を経て、デューク大学の特別教授になった人物。

30の専門書と650以上の論文を発表しており、「世界の最も論文が引用されている工学系の学者100人」にも選出。2006年には、熱工学分野のノーベル賞と言われる「ルイコフメダル」を受賞、2018年には「米国版ノーベル賞」とも言われているベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞している、ノーベル賞候補でもあります。

そのベジャン氏が、われわれの文明やテクノロジー、生命の秘密と方向性を物理法則から導いた本、ということで、正直「うならせる」内容でした。

さっそく、ポイントをピックアップしてみましょう。

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生命は、変化する自由を伴う物理的な動きだ。動くもの、流れるもの、突き進むものはすべて、配置や道筋やリズムを変えることによって、しだいに動きやすくなる傾向と、動き続ける傾向を示す。進化するこの流動構成とその終焉(死)こそが自然であり、生物・無生物の二領域を網羅する

何であれ地球上を動くものの進化は、自ずと動きの階層制につながる。この世界は、自らの階層制を通してそれぞれが際立つ多様な流れの「河川流域」が重なり合った見事な織物だ

流れには速いものと遅いものという二通りあったほうが、一通りしかない場合よりもはるかに優る。速い流れは数が少なくて大きく、遅い流れは数が多くて小さい。これこそ、一つの平面領域あるいは立体領域全体に流れを行き渡らせる方法だ

短距離走では、大きさに加えてピッチの速さも強みになる。一方、長距離走では正反対の進化の傾向(小型化)が勝利につながる

良いアイデアは遠くまで広まり、そして広まり続ける。こうしてデザインが進化しながら流れることこそが、「良い」という言葉の意味するところだ

成長は最初はゆっくりで、その後急速に進み、最後にまた減速して止まる

流れが楽になれば、流れを推進するのに必要な重力の位置エネルギーが少なくて済む

火は、動物や奴隷からではなく、無生物(最初は石炭、のちには石油)から力を生み出した

賢くなるのは動きと生命にとって良い。私たちは自分や自分の所有物を動かしやすくするために、新しい科学やテクノロジー、ビジネス手法を発明する

世界中で流動アクセスを増すデザインは、一部の流動抵抗を減らすことばかりではなく、他の流動抵抗を増やすことも求める

今や私たちは、なぜ小型化が起こるのかわかった。それは、私たちの体や輸送手段、仲間をより楽に、より長く、より遠くへ動かすという、私たち一人ひとりの中にある自然の傾向なのだ

流れの構成要素の最小のものがどれだけ小さくなろうとも(たとえば、マイクロからナノになったとしても)、人間と機械が一体化した種に力を与える新しい装置は、手、目、耳、内臓といった、人体のあらゆる部分で、人体の長さスケールと一致し続けなくてはならない

注目するべき種は人間と機械が一体化した種だ

新しいものは数が少なく、大きい。古いものは数が多く、小さい

避難時間は、講堂の縦横比が約1のときに最小値になる

自然界におけるS字カーブ減少の普遍性は、樹状の流れの普遍性に匹敵する。後者も、生物の領域と、無生物の領域と、人間の領域を結びつける

知識とは、自分たちに役立つようなデザイン変更を引き起こす人間の能力だ

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今回も期待を裏切らない名著。

今年はすばらしいビジネス書がたくさん出されていますが、間違いなくトップ5に入ってくる内容だと思います。

『FACTFULNESS ファクトフルネス』あたりを読みこなす読者の方なら、きっとぐいぐい引き込まれるでしょう。

『FACTFULNESS ファクトフルネス』
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読者の仕事がインフラ作りであれ、モノ作りであれ、流通であれ、教育であれ、本書はすべてに共通する自然法則を明らかにした、驚くべき一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『流れといのち』エイドリアン・ベジャン・著
柴田裕之・訳 木村繁男・解説 紀伊國屋書店

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◆目次◆

第1章 生命とは何か
第2章 全世界が望むもの
第3章 目的を持った動きとしての富
第4章 テクノロジーの進化
第5章 スポーツの進化
第6章 都市の進化
第7章 成長
第8章 政治、科学、デザイン変更
第9章 時間の矢
第10章 死とは何か
第11章 物理学的現象としての生命と進化
謝辞
解説 木村繁男
訳者あとがき 柴田裕之
第5章の補遺
原注
索引

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