2018年10月10日

『日本が売られる』堤未果・著 vol.5131

【外国に売られ続ける日本の衝撃実態】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344985184

5年ほど前から不動産投資に関わって、外国人(とくに中国人)がものすごい勢いで日本の不動産を買っている実態を知りました。

「安全保障上、大丈夫なのか?」と疑問を持って、いろいろと調べていくと、外国企業の隠れ蓑を使って中国人に法外な条件で融資している日本の金融機関、外資系企業の片棒を担いでいるコンサルタントなど、さまざまな実態が明らかになってきました。

もちろん、外資が入って日本が豊かになるなら、何の問題もありません。ただ、なかには日本人の富を奪ったり、生活のリスクを増大させる深刻な案件も相当数あるようです。

本日ご紹介する一冊は、そんな「日本売り」の実態を、国際ジャーナリストであり、ベストセラー『ルポ 貧困大国アメリカ』の著者、堤未果さんが明らかにした一冊。

『ルポ 貧困大国アメリカ』
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ちなみに著者の夫は、参議院議員の川田龍平氏だそうです。

本書で書かれている「日本売り」の実態は衝撃で、本書には日本売りに関わっている企業、政治家のリストがズラリと並んでいます。(これが株式投資に役立ってしまうのが皮肉ですが…)

なかでも、日本の公共サービスが売られ、民営化に伴い国益が損なわれるリスクについて書かれた部分は、全国民必読だと思いました。(水道事業、農業、林業、漁業、卸売市場、教育など)

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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2015年に84兆円だった世界の水ビジネス市場は、2020年には100兆円を超えると予測されている

世界が水道再公営化に向かう中、日本は民営化をスタート

複数の電力会社が一つの送電網を共有して電気を流す電力と違い、1本の水道管がつなぐ水道は、1地域につき1社独占になる。つまり水道というインフラには、利用者を引きつけるためにサービスの質や価格の安さで勝負しなければと民間企業に思わせるための<競争>が存在しないのだ

種子法が廃止された今、公的制度や予算なしに農家が自力で種子開発をするのは経済的にも物理的にも厳しくなる。安い公共種子が作られなくなると、農家は開発費を上乗せした民間企業の高価な種子(現在、公共種子の約10倍の値段)を買うしかなくなり、その分、これから日本人の主食である、コメの値段も上がってゆくだろう

業界最大手の米モンサント社(2018年に独バイエル社が買収)は、遺伝子工学で1年しか発芽しない種子を作り、その種子が自社製品の農薬にのみ耐性を持つよう、遺伝子を組み換えることに成功した。これは画期的な発明だった。農家はこの種子を買うたびに、除草剤もセットで買うことになるからだ

日本は野菜40種のネオニコ残留基準を大幅に緩和

日本人が大好きな魚にも注意が必要だ。成長スピードが速いキングサーモンの成長ホルモン遺伝子と、一年中成長する深海魚の遺伝子をアトランティックサーモンに組み込むことで、2倍速で成長する「遺伝子組み換えサーモン」は、すでにアメリカとカナダで認可され、2017年8月から出荷されている(アメリカでは200万人がFDAに抗議コメントを送ったが無視された)。日本での販売は許可されていないが、筋子やいくらなどの卵の加工品としてならいくらでも日本に入ってくる。外食には表示義務がないため、レストランや回転寿司なら全くわからないだろう

自社の会長が偶然にも国家戦略特区会議のメンバーで、特区で農地をたくさん買い占めたアグリビジネスも上昇気流に乗っているオリックスは、「森林経営管理法」でまたしても、会心のヒットを飛ばしたのだった

パソナはさっさとフィリピンの人材派遣大手「マグサイサイグローバル」の家事代行部門と提携を済ませ、2016年1月にはフィリピンで研修を終了した家事手伝い50人が、パソナと直接雇用契約する段取りをつけた

今後は住民票や生活保護、幼稚園や保育園の申請などが、無料通信アプリ「LINE」を通して、マイナンバーカードをスマホにかざすだけで、行政サービスと連動するマイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)を通し、簡単に手続きできるようになる。(中略)LINEでやりとりする内容や個人情報の扱いを決めるのは、日本政府が直接手を出せない、韓国や外資の民間企業

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本来弱者を守るべき責任ある人々が、「日本売り」を実行している現状には、本当にガッカリさせられます。

一方で、第3章「売られたものは取り戻せ」で書かれている、各国の取り組みの実態は、必読に値します。

大企業や多国籍企業から資金援助を受けない政治の実現を目指すイタリアの五つ星運動、有機農業大国を目指し、自国で種子開発を始めたロシア、水道の再公営化をきっかけに、たくさんの市民参加型システムが誕生し始めたフランス、国民の8人に1人が生協に加入し、国産の農産物を守るスイス、子供を農薬から守るべく立ち上がったアメリカの母親たち…。

土井は先日訪れたアテネで、「日本はこれからどうあるべきか」を一人考えていましたが、その結論は「世界に尊敬される国になること」でした。

世界に尊敬されるインフラ、世界に尊敬される住環境、世界に尊敬される技術、世界に尊敬される食文化…。

これが実現できれば、アメリカや中国、インドの富裕層が日本を訪問し、かつ商品を買ってくれるに違いないからです。

日本のやり方がスタンダードになることで生まれるメリットも、たくさん生まれてくるでしょう。

資産を切り売りするビジネスではなく、豊かさを創出するビジネス。ビジネスを超えた国作り…。

本書は、そのヒントとなる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『日本が売られる』堤未果・著 幻冬舎

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344985184/

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◆目次◆

いつの間にかどんどん売られる日本!
第1章 日本人の資産が売られる
第2章 日本人の未来が売られる
第3章 売られたものは取り返せ
あとがき 売らせない日本

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