2018年1月27日

『男性という孤独な存在 なぜ独身が増加し、父親は無力化したのか』 橘木俊詔・著 vol.4938

【橘木教授による新しい家族論。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569837468

本日ご紹介する一冊は、京都大学名誉教授であり、『日本のお金持ち研究』などの著書でも知られる橘木俊詔さんが、日本の家族の歴史を振り返り、これから男女の恋愛、結婚がどうなるか、それが社会・経済にどんな影響を与えるかを予測した一冊。

今の日本の低迷ぶりには、間違いなく少子高齢化が関わっていますが、少子化の原因の多くは、男女関係の変化にあるわけです。

本書では、なぜ独身が増加したのか、父親が無力化したのか、さまざまな論文、著書を引きながら、論理的に説明を試みています。

現在の家族制度が制度疲労を起こしているのは明らかですが、それがなぜなのか、人々はどんな意識を持っているのか、調査結果なども紹介しています。

また、諸外国の制度も紹介しており、今ではすっかり有名になったフランスの準家族制度「PACS」や、スウェーデンの事実婚制度「サムボ」、母系の血縁者が中心にいるインドのナヤール人の家族などが紹介されています。

日本人は、かつて有効だった家族制度に未だ引きずられ、疲弊していますが、本書を読めば、制度や常識は時代によって変わってきたことがよくわかります。

不勉強なマスコミや政治家、財界人には、ぜひ読んでいただきたい一冊。

さっそく、内容をチェックしてみましょう。

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男性(その4分の3は自分を草食系であると認識している)は肉食系女子に好感をもっているが、女性のほうが草食系の男子に好意を抱いているとはいえないので、男性と女性が恋愛や結婚にうまくマッチする確率は低くなる

平安末期から鎌倉時代、室町時代にかけて武士の勢力が強くなったのであるが、武士は身体能力が女性より強い男性の職業なので、家庭や社会で支配するのは男性である、という考え方が一般化された

農民や商人の中でも豪農や豪商と呼んでもよいほどの広い土地を持つ農民や、商売をうまく成功させた大商人が存在したのであり、こういう人は上流階級のように「家」なり職業を世代で継承したい気持ちがあるので、結婚や子どもを持つことへの執着はあったし、経済的な裕福さはそれを可能にした

ナヤール人の文化では、夫婦は家族の中核ではなく、母系の血縁者(すなわち母親の兄弟姉妹)が家族の中心にいる。夫(あるいは父親)は同居しておらず夕食後に妻の家に来て、一晩過ごした後に、翌朝早く立ち去るのである

現在は女性も稼ぐ能力を高めているので、父系社会が衰退に向かう可能性があり、母系社会復活の恐れあり

父系家族よりも母系家族の方が家族人数が多いので、稼ぎ手の数が多い母系社会では経済生活の不安は少ない

父親になりたいという男性が減少している

近い将来に女性の所得水準はかなり高くなると予想できる。こういう女性の中には、男性に従属することを嫌う人も出てきて、シングル・マザーを目指す人も現れると推測される

所得のある女性に結婚への希望度が低下した。あるいは経済力を得たことによって、女性の男性に対する要求が高くなった

質の高い子どもを求める傾向がさらに強くなると、一部の優秀な男性の精子だけが求められる時代になるかもしれない(中略)ディープインパクトは種牡馬になった際、五一億円のシンジケートが組まれたと聞く

非認知能力に関して幼児教育が肝心となれば、母親が外に出て働いて子どもと接する時間が少なければ、この能力の醸成はやや犠牲に
なるかもしれない

男性は今でも男の子を希望しているが、その数字は40%前後で圧倒的な高さではない。しかし女性の女の子の希望からすると、30年前は40%あたりだったが、現在では60%の高さに達しており、女性は圧倒的に女の子を望んでいることがわかる

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著者は本書をこう結んでいます。

<経済的に豊かな国になったのでガツガツ働く必要はないし、競争に勝って有利な立場にならなくても生きていける、男女平等が叫ばれる世の中になり強い男が必ずしも称賛されない、男女ともに優しい人間であることが価値の高い特質とみられるようになった>

こんな時代にあって、男はどうあるべきか。社会はどうあるべきか、ビジネスやマーケティングはどう変わって行くべきか。

生き方、働き方、稼ぎ方のヒントが見えてくる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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『男性という孤独な存在 なぜ独身が増加し、父親は無力化したのか』
橘木俊詔・著 PHP研究所

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◆目次◆

第1章 「普通の男」は父、夫になりづらい時代
第2章 日本の結婚・家族の歴史
第3章 現代における「家族のかたち」の変容
第4章 父親という存在の実像
第5章 雄のいらない動物からの示唆
第6章 男という存在の軽さ

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