2018年1月21日

『「かわいい」のわざが世界を変える フィールウェアという発想』 下川眞季・著 vol.4932

【井深大の遺言】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4779123224

本日ご紹介する一冊は、ソニーの女性修士エンジニア第一号として、CCDイメージセンサ、CCDカメラの開発・設計に従事し、デジ
カメの電子シャッター特許で全国発明表彰を受賞、社内特許表彰の最高位「特級表彰」も受賞したという、元ソニーの「女性エジソン」による一冊。

ビジネス書の専門でない出版社から出ているためか、あまり露出していない本ですが、アマゾンのレビューを見ると、みなさん大絶賛。

おそらくそれは、本書で掲げられている「フィールウェア」というコンセプトが良いからだと思います。

著者は、<ハードウェアは「身体」、ソフトウェアは「頭脳」、フィールウェアは「心・感性」>と説明した上で、これからは「フィールウェアの時代が来る」と主張しています。

本書によると、ソニーの創業者・井深大氏は、生前、こんなことをおっしゃっていたそうです。

「二十世紀は、心を置き去りにして、モノだけが独り歩きをしていた。二十一世紀は、心を取り戻す時代だ」

本書では、この心に訴えるモノ作りと作品を、著者が技術面のポイントも含めて紹介しています。

商品開発現場のワクワク感を感じながら、斬新なコンセプトの例が学べる、じつに優れたケース・スタディです。

さっそく、いくつか本書のなかから気になる部分をピックアップしてみましょう。

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定量化しづらい人間の感性に訴える《フィールウェア》という時代がくるんじゃないか?

ソニーはまったく違う文化を産み出すために必要なハードウェアを作っていた

イノベーションの両輪は、「高い技術力」×「感性価値」

感性は立派な情報なので、自在にデザインすることもできる

◆プルタブ缶オープナー「CANGAL」石田製作所(2013年、グランプリ最優秀賞)
女性のミュールのようなシンデレラの靴。確かにカワイイです。さあ、これはいったい何でしょうか? 単なる可愛いアクセサリーなのでしょうか? 何とこれは、プルタブ缶のオープナーなのです。足首の部分に指を入れて、梃子の原理で缶をあけるのです。ではいったい、誰が使うのでしょうか? ネイルをしている女性たちです。ネイルの爪が邪魔をして缶の蓋の部分に指が入れられません。その困った問題を解決してくれる、ちょっと驚きの製品なのです

◆ネイルニッパー「ミニョン」マルト長谷川工作所(2013年、新潟地区賞)
名付けて「天使の爪切」。工具用ニッパーの百分の二ミリの薄刃の技術は妥協せずに使っていますので、切れ味は工具同様、抜群です。「カラバリの法則」を活かして、現在ではブルーなど全部で五色のカラーバリエーションも揃っています

私が入院していた頃に、こんなに切りやすくて、カラフルで心を和ます爪切りがあったら、どんなに嬉しかったことかと思い出しながら「天使の爪切」に願いを込めました。ご高齢の方にも、優しく働く爪切りです。使う人の心に寄り添い、心のケアもしてくれるもの、それがフィールウェアです

お線香の風雅な香りが漂うなか、螺旋のバネの隙間から煙が見えた瞬間に閃いた、共感覚!「あっ、いま、香りが見えた!」そこで、ビジュアル・フレグランス、「見る香り」と名付けました

「買いたい!」のスイッチを押してもらうには、買う動機づけが必要になります。そして買う動機づけに必要なものは、「メリット」ではなく「ベネフィット」だったのです。(中略)その違いは、まず主語にありました。メリットは、商品(売り手)が主語ですが、ベネフィットは、相手(買い方)が主語になります

ひとりで見る夢は、睡眠中の夢。しかし、仲間と見る夢は、人を輝かせます

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どうでしょう? ちょっと読んでみたくなったのではないでしょうか。

じつはこの著者の下川眞季さん、開発者として部長職に昇進した後、2006年9月に瀕死の交通事故に遭い、半年間車いす生活、一年三カ月の休職を強いられました。

今でも体内には、骨盤を修復するための二枚のチタンと十一本のボルトが埋め込まれているそうです。

大企業で順風満帆なキャリアを送っていた人物が、やがて一念発起して日本のモノ作り中小企業の支援を始める……。そんなドラマチックなストーリーも、本書の読みどころです。

本書を読んでいると、「日本人みんなで頑張ろう!面白いものを作ろう!」という気にさせられます。

薄い本ですが、ノウハウと一緒に元気までもらいました。

ぜひ読んでみてください。

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『「かわいい」のわざが世界を変える フィールウェアという発想』
下川眞季・著 彩流社

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4779123224/

<楽天ブックスで購入する>
http://bit.ly/2mZX5db

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◆目次◆

プロローグ 燕三条での出会い
第一章 フィールウェア物語
第二章 世界に挑戦したフィールウェア
第三章 感性モノづくりの世界
第四章 フィールウェアの未来
エピローグ

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