2017年11月15日

『あの同族企業はなぜすごい』中沢康彦・著 vol.4865

【同族企業のリアル・ストーリー】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532263581

不祥事、骨肉の争い、泥沼の対立、バカ息子による承継問題…。

日本で「同族経営」というと、決まってネガティブなイメージがつきまといますが、じつはそれは一部の企業の話。

実際には、同族経営は収益性が高く、米ノースウエスタン大学・ケロッグ経営大学院でも研究されているテーマです。

本日ご紹介する一冊は、この「同族経営」を追った日本経済新聞電子版の連載「新・同族経営」の掲載記事に一部、加筆を行いまとめた一冊。

18万社調査でわかった、同族経営の実態、会社を伸ばす経営者のプロファイルなど、興味深いデータが示されています。

また、前半には事業承継のリアル・ストーリーがまとめられており、ちょっとしたノンフィクションとしても楽しめます。

なかでも読みどころは、データ分析の結果を紹介した6章と7章。

婿養子のパフォーマンスの高さや、学歴の高い経営者が有利なこと、また営業、管理、技術、経理では、技術と経理の得意な経営者のパフォーマンスが良いという事実に、目が止まりました。

いろいろと、経営のヒントが詰まった一冊です。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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包装紙を決める段階で十代向けとしてポップなデザインを提案すると、「社のカラーではない」と父に却下された。学んできた理論を持ち出し、説得を試みた鈴鹿氏に父は「違うのはわかる。理論の意味もわかる。ただ、続いていく京都のお商売のやり方というのも忘れないでほしい」と説いた。続けていくためには、ターゲットでない人たちの気持ちを忘れてはならない。その商品のターゲット外であったとしても、誰かに疎外感を与えてしまうならば、全てを受け入れてもらいにくくなり、顧客が離れてしまう──。それが父の考えだった(聖護院八ツ橋総本店 鈴鹿氏)

渋谷氏は2人の子どもがいるが、自分から事業の承継を求める考えはないという。「イノベーションの気概が損なわれるのがこわい」ため、ずっと賃貸物件に住む(スマートバリュー渋谷氏)

「振り子が振れすぎたら、元に戻す。それがファミリー出身の二代目としての使命だ」(YKK吉田忠裕氏)

同族経営では「兄弟だから何も言わなくていいし、わかっているはずだ」「親子だから以心伝心で自然と伝わる」などと思いがちだ。しかし、それが「根拠のない信頼感」にすぎなければ、コミュニケーション不足は積み重なり、やがて企業経営にボディーブローのように効いてくる

ROAでは創業者がトップ、次いで高いのが婿養子

売上高成長率で見た場合には、売上高が1億~10億円の運輸・通信業、1億~10億円のサービス業で、男性の経営者が優位であることがわかった。一方で、女性の企業家の場合、建設業、不動産業において業績が高く出やすい

大学を卒業した創業者は最終学歴が高校卒業までの創業者に比べると売上高成長率が高い

特性は営業、管理、技術、経理の4つのうち、創業者自身がどの分野が得意と思うかに基づいて調査。売上高成長率、ROAとも優位に働くのは技術と経理となった。営業や管理を挙げた創業者の会社は成長性や収益性が相対的に低かった

売上高成長率、ROAともに地元出身のほうが優位

二代目を含め同族会社を引き継いだファミリーメンバーのいる約18万社を対象に調べたところ、売上高成長率からみた場合、後継者は「年齢が若い」「業務経験が短い」「技術や経理に強い」などの場合に成長率が高いことが判明。一方、ROAの高さからは「業界経験が長い」「技術や経理に強い」などの場合に優位さが目立つ

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日本が高齢化するということは、企業も高齢化するということ。

事業継承を上手く行かせるためにも、また後継者にあたる人がどう
すれば成功できるのか探る上でも、興味深い内容です。

承継を考えている現・経営者であれば、どうやって子どもたちが入社・事業承継を承諾したか、その会話を学ぶことも大切でしょう。

ぜひ、読んでみてください。

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『あの同族企業はなぜすごい』中沢康彦・著
日本経済新聞出版社

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◆目次◆

第1章 同族経営は激しい──家族対立も企業成長の原動力
第2章 世代交代はもろ刃の剣──次の成長の好機か消滅への道か
第3章 後継者難の時代、家業を継ぐ哲学──個人の夢と家への思い
第4章 これからの老舗マネジメント──続いてきた、だけでは続かない時代
第5章 脱同族という選択──「その先」にあるものを求めて
第6章 知られざる「もう一つの主役」日本経済に深く根を張る同族経営
第7章 ビッグデータで初検証「同族経営のメカニズム」
第8章 同族だから起きる課題をアカデミズムで斬る

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