2017年10月13日

『アメリカンドリームの終わり』ノーム・チョムスキー・著 寺島隆吉、寺島美紀子・訳 vol.4832

【チョムスキー、富と権力の集中原理を語る】
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1年間ニューヨークに住んで、アメリカ合衆国の強烈な格差を目の当たりにしました。

どうしてここまでひどい格差があるのに、みな不満も言わずに頑張っているのか。それは、「いつかは自分もああなれる」という「アメリカンドリーム」があるからです。

でも、もしそのアメリカンドリームが終焉に向かっているとしたら?

本日ご紹介する一冊は、そんな『アメリカンドリームの終わり』を、かの著名な言語学者であり、政治哲学者、活動家でもあるノーム・チョムスキーが予言した書。

アメリカでは、『ニューヨークタイムズ』のベストセラーとなり、米国アマゾンでもMacroeconomics部門で1位に輝いています。

アメリカンドリームの重要な部分は、階級の移動性であり、それが今、崩壊しつつあると述べる本書は、今後の先進国の政治・経済・社会をうらなう上で、極めて重要な位置を占めています。

アメリカの偽善、資本家の偽善、そして見せかけの民主主義…。

チョムスキーの手にかかると、これらのすべてが詳らかにされてしまいます。

本書を裏読みすれば、これはサブタイトルにある通り、「富と権力を集中させる10の原理」であり、われわれのような庶民はここから脱却することが、豊かさを手に入れるための出発点になるでしょう。

極めて高度な内容をここまで平易な言葉で語れるのは、さすがチョムスキー。

内容のポイントを、かいつまんでご紹介しましょう。

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重要なことは、特権階級や権力層が決して民主主義を好んだことはない、ということです。それには十分な理由があります。民主主義は民衆の手に権力を委ねるものだからです。逆に言えば、特権階級から権力を奪うものです。だからこそ富裕層は民主主義を嫌います。それが、富と権力を集中させる基本原理です

社会が不平等になればなるほど、国民の健康に深刻な悪影響がもたらされる、とされました。富裕層にすら、その影響が出てくるというのです。というのは、不平等という事実そのものが、人びとの社会的な人間関係も、意識も、生活全般もむしばんでいくからです

アリストテレスは正しかったのです。かれの言うとおり、民主主義の矛盾を克服する方法は、不平等を減らすことであって、民主主義を減らすことではありません

最近の公教育は、教育を技術訓練に貶めることに力を注いでいます。こうして、子どもたちの創造性や独立心を奪うのです。これは単に生徒・学生だけではなく、教師の創造性や独立心さえも奪います。それが「テストのための教育」です。具体的には、ブッシュ大統領の「落ちこぼれゼロ法案」、オバマ大統領の「トップをめざして競
争せよ法案」です

会社経営の頂点に座る人たちは、いまや技術者ではなく、大学の経営学修士号を取得した人たちばかりです。かれらはさまざまな種類の詐欺的な金融操作を学んで卒業してくるのです。そしてこのことが、経営者の態度を一変させました。かれらはますます企業に対する忠誠心を失い、自分自身にだけ忠誠心を発揮するようになってきています

なぜそこに働く労働者や地域共同体が、その鉄鋼会社を経営してはならないのでしょうか

考えてもみてください。仕事を増やし、投資を増やしたければ、需要を増やしさえすればよいだけです。もし需要が増えれば、投資家はその需要を満たすために投資するでしょう。だから、投資を増やしたければ、貧しい人たち、働く人たちにお金を与えればよいのです。そうすればかれらは、それを高価なヨットやカリブ海の休暇に
は使わないで、生活必需品の購入に充てるでしょう

たとえ不法就労者であっても、かれらはこのアメリカで生活し、ビルの建設作業に携わり、芝生の草を刈ったりしています。にもかかわらず、かれらは人間ではないのです

『国富論』の、たとえば、四五〇頁まで読み進んだひとはそう多くないでしょうが、しかし、アダム・スミスは、そのあたりから分業を鋭く批判しはじめているのです。分業は人を機械に変えてしまうから、というのがその理由です

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真に知的な人間とは、難しいことの本質を、平易な言葉で、かつワクワクしながら語れる人だと思っていますが、チョムスキーはまさにそんな方だと思います。

翻訳もじつに読みやすく、最後まで一気に読んでしまいました。

チョムスキーの主張の元となる資料が、緑のページでまとめられているのはじつに親切です。

ビジネスパーソンでも興味が持てるように編集されているので、ぜひ恐れずに読んでみてください。

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『アメリカンドリームの終わり』ノーム・チョムスキー・著
寺島隆吉、寺島美紀子・訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン

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◆目次◆

原理1 民主主義を減らす
原理2 若者を教化・洗脳する
原理3 経済の仕組みをつくり変える
原理4 負担は民衆に負わせる
原理5 連帯と団結への攻撃
原理6 企業取締官を操る
原理7 大統領選挙を操作する
原理8 民衆を家畜化して整列させる
原理9 合意を捏造する
原理10 民衆を孤立させ、周辺化させる

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