2017年9月24日

『よみがえれ、バサラの精神』会田雄次・著 vol.4813

【物議を醸す一冊】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569562795

本日ご紹介する一冊は、文明評論家で、生前京都大学名誉教授も務めた会田雄次さんが、「バサラ精神」提唱のために書いた一冊。

著者によると、「バサラ」とは、金剛童子のもつ武器“バージラ”よりきたもので、<実力と合理性を欠く旧来の権威の一切を否定、伝統による拘束を排し、思いのままに行動し、財のあるものは財、能力者はその能力のすべてを散じ尽して生きようという精神>のこと。

もうかれこれ30年前の本ですが、権威が崩れつつある今の時代には、しっくり来る思想ではないでしょうか。

アジアの文化的リーダーとしての役割を期待され、観光客も多数訪れている現在の日本にとって、優れた文化の醸成は急務ですが、残念ながら主流はいまだに欧米の模倣であり、これから建設が予定されている国立競技場も、われわれの精神や文化の支柱となることは期待できません。

どうすれば、数百年、千年持つ建築や文化が実現できるのか、どうすれば日本が世界のリーダーとして尊敬されるようになるのか。

本書からは、多くを学ぶことができます。

さっそく、気になったポイントを見て行きましょう。

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国民がそういう苦難を予期し、暗澹たる気分に陥っているその最中に、贅沢な一人の坊主が自分の楽しみのためだけに、いわゆる「民の膏血」を絞り上げて造った、それがヴィラ・デステの名園なのである。しかし考えてみると、なるほど当時十数万人と推定されるフェララ侯国の民百姓は数年間、そのための増税などいろいろの賦課で苦しんだろう。だが、この大司教がまったく自分の好みから、そしてそれだけに凝りに凝った何とも馬鹿々々しい噴水庭園を造ったおかげで、その後数百年にわたって、この土地は大いに潤ってきた。現在もその恩恵をフルに受けているともいえるのである。今後もずっと受け続けるだろう

支配者の贅沢三昧がすべていけないということになれば、ヴィラ・デステだろうがタジ・マハールだろうが、今日の文化遺産といわれるものは、ほとんど全部拒絶されるべきものになる(中略)だが、それが後世に残り、より大きなタイム・スパンで見るとき、その地の人々にとって大きなプラスになっていることが多いのである(中略)民衆にまかせておいたら、彼らは絶対にそんなものを造営しようなどと思わなかったはずである

逆説的な言い方だが、つまり、はた目にはいかにも馬鹿々々しい、内実性にも乏しいものを途方もない巨費と人智を尽して造り上げたからこそ、より一般性をもって、趣味、嗜好、信仰などを異にする人々を文化の差異を乗り越えて魅きつけ、感嘆させるのだ。換言すれば、時代を異にし文化を異にする人間が触れ合えるのは、時代や文化に拘束される実用性や合目的性ではなく、まさに人間のもつ夢によってだからである

男たちが叩きのめされて自失した結果、女性主導によって家庭絶対主義が新社会のシンボルになった。女性それ自体はともかく、母性というのは子供に対する無限愛、いわば親子一体としての利己主義の権化でもある。その暴走がはじまったのだ。家庭絶対主義では、夢や無駄は一切許されない

途方もない大変革は、馬鹿々々しさと集中、この二つからのみ生れる

大きな成果は、一見無駄なことにまとめて金を投入してこそ出てくる

日本にはクォリティ・ペーパーを読もうにも、そもそもそれが存在しない

たんなる内助の妻では、どれほど立派な妻でも夫の仕事の量はふやせても質を変えることはできない。そのためには悪妻のほうがよいことが多いのだ

本を読むにしても、娯楽本は別として、結論まで与えてくれることを期待するのではなく、考えさせてくれる本を選んで読むことだ

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30年前の古い本であり、地方蔑視、ジェンダー差別といった点で、今読むと物議を醸す本ですが、文化を創るという面では、参考になる部分が多々あります。

民主主義の弊害を乗り越え、後世に残る仕事をするために、ぜひ参考にしたい書籍です。

既に絶版ですが、中古品がいくつかあるようなので、頑張って入手してみてください。

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『よみがえれ、バサラの精神』会田雄次・著 PHP研究所

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◆目次◆

第一章 バサラ──集中蕩尽のすすめ
第二章 都ぶりと田舎者
第三章 “知の階層化”待望論
第四章 本物の贅沢
第五章 世紀末──昭和・アメリカ・エイズ

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