2017年9月27日

『かくて行動経済学は生まれり』マイケル・ルイス・著 渡会圭子・訳 阿部重夫・解説 vol.4816

【マイケル・ルイス新作】
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本日ご紹介する一冊は、『ライアーズ・ポーカー』、『マネー・ボール』などの名作で知られる著者、マイケル・ルイスの最新刊。

※参考:『ライアーズ・ポーカー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/415050394X/

※参考:『マネー・ボール』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150503877/

かつてウォール街(ソロモン・ブラザーズ)に勤めていた著者だけに、テーマが野球であれ何であれ、中身は必ず数字や投資の話になるのですが、今回も同じです。

『かくて行動経済学は生まれり』は、行動経済学の祖であるダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーの人生を追った一冊。

なぜ彼らは行動経済学を生み出すに至ったのか、その裏にはどんな人生経験と信念があったのか、そこからわれわれビジネスマン/投資家が学ぶべきことは何なのか…。

人物伝と行動経済学のエッセンスが同時に学べる、興味深い内容です。

「人間の直感は間違う」

であれば、われわれは何を頼りに、どうやって意思決定をすればいいのか。

本書には、そのヒントが書かれています。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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野球選手の市場は非効率なことで溢れている。それはなぜなのか?アスレチックスのフロントは市場における“バイアス”について語っていた。たとえば足の速さが必要以上に評価されるのは、それが目に見えやすいからだし、選球眼があまり評価されないのは、四球がすぐに忘れられるからだーー四球を選んでも、ただ立っていただけだと思われる

ものごとがうまくいかないとき、人は過去に成功したときの習慣に戻る

何であれ、先入観で選手を選ぶと、たとえ害があってもそれに固執しがちだ。先入観を正当化しようとするからだ。さらに悪いことに、スカウトたちは自分の若い頃を思わせる選手をひいきする

モーリーはこのとき、行動経済学者が“保有効果”と名付けたバイアスを知った。保有効果に対抗するため、彼はスカウトと自分のモデルに、目をつけた選手それぞれの評価基準をきちんと決めさせてから、ドラフトに臨むことにした

ダニエル・カーネマンが信じていないものは数多くあるが、その中でもっとも興味深いのは「自分自身の記憶」である

大きな選択は、実際はでたらめだ。小さな選択を見たほうが、その人がどういう人間かわかるだろう

いくつかの選択肢があるとき、合理的な人間は自分の好みに従って、論理的に順序をつけられる。たとえばメニューを渡されて、そこに三種類のホットドリンクがあったとする。そしてその人が以前、ココアよりも紅茶、紅茶よりもコーヒーが好きだと言っていたら、論理的にはココアよりもコーヒーが好きなはずと考えられる。もしCよりB、BよりAが好きならば、CよりAが好きだろう、と。学術用語ではこれを“推移的”であるという

簡単に思い浮かべられる、つまり利用可能である状況ほど、起こる頻度は高いと感じてしまう。特に強烈な事実や出来事、あるいは起きたばかりのことや誰もがよく知ることは、しばしばとても簡単に思い出せるため、判断を下すさいには実際より重要視されてしまう

わたしたちの頭はステレオタイプによって惑わされる

手術が成功する可能性は九十%と告げると、八十二%の患者が手術を選ぶ。しかし手術で死ぬ可能性が十%あると説明すると、手術を選ぶ人の割合は五十四%まで下がってしまう

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昔、『天才の精神病理』という本を読み、ニュートンやダーウィン、フロイトがなぜあれほど偉大な発見をしたのか、興味深いヒントをいただきましたが、本書を読むと、行動経済学もまた、2人の精神病理がもたらしたものではないかと思えてなりません。

行動経済学の本をしこたま読んでいる人なら、内容のほとんどはご存知かもしれませんが、そうでないなら本書はじつにエキサイティングな本です。

人物評伝として、また意思決定の実用書として、1粒で2度美味しい、そんな一冊です。

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『かくて行動経済学は生まれり』マイケル・ルイス・著
渡会圭子・訳 阿部重夫・解説 文藝春秋

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◆目次◆

序 章 見落としていた物語
第1章 専門家はなぜ判断を誤るのか?
第2章 ダニエル・カーネマンは信用しない
第3章 エイモス・トヴェルスキーは発見する
第4章 無意識の世界を可視化する
第5章 直感は間違える
第6章 脳は記憶にだまされる
第7章 人はストーリーを求める
第8章 まず医療の現場が注目した
第9章 そして経済学も
第10章 説明のしかたで選択は変わる
第11章 終わりの始まり
第12章 最後の共同研究
終 章 そして行動経済学は生まれた
解 説 「ポスト真実」のキメラ 月刊誌『FACTA』主筆 阿部重夫

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