2017年7月14日

『子ども格差の経済学』橘木俊詔・著 vol.4741

【教育と格差の関係は?】
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今日ご紹介する一冊は、最近話題の教育格差を、京都大学名誉教授で、『日本のお金持ち研究』の著者でもある橘木俊詔さんがまとめた一冊。

<塾に行っている子と行っていない子でどの位の差がつくのか>
<ピアノやサッカーなどの習い事はどのような効果があるのか>

などといった実態に加え、<1人の子どもを育てるのにいくらかかるのか>といった現実的なところも押さえており、人生戦略立案や子育てのヒントになります。

自身、もともとプロ野球選手を目指し、小学校低学年時には半強制的にヴァイオリンも習わされたという著者が、習い事と格差についても述べており、じつに興味深い内容でした。

<高年収を狙うなら投手か外野手>といった話に始まり、あらゆる視点から「狙い目」が論じられており、この国で勝つための人生戦略立案に欠かせない「データ」が盛り込まれています。

本書によれば、現在は<高所得の家庭の子弟が東大に入学するのに有利な時代>。一方で、<官僚の世界における東大法学部出身者が幹部に昇進する比率が減少している>時代でもあります。

実態とズレてきている「勝利の方程式」を見直し、人生戦略を練り直すために、有用なヒントがたくさん詰まっていました。

さっそく、チェックしてみましょう。

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中学受験を目的とした塾に通う小学6年生の学習時間はとても長く、しかも学力の高さが目立つ

プロ野球選手の年収だけに注目すると、投手と外野手が内野手や捕手よりも平均年収がやや高く、格別に収入の高い人も投手と外野手に多い。さらに日本人の選手の中でアメリカ大リーグで成功した人も投手と外野手に多く、捕手や内野手では目ぼしい人は出ていない

芸術活動だけは突出して女の子への支出が男の子のそれよりも高い

もっとも教育費が高くかかるケースは(6)の場合で、幼稚園から大学は私立校で、しかも医歯学部への進学で自宅外通学である。このときには総額で4710万4000円(年額にすると261万7000円)もかかる

理工系のほうが文系よりも教育費用の多くかかることは自明である。理工系は実験設備が必要だし、多人数教育ができない。医歯系にいたってはそれがもっと顕著なので、教育・研究費は巨額になる

単年度による年収差によると、男子の場合における中卒と比較して高卒は1.20倍、高専・短大卒は1.26倍、大学・大学院卒は1.69倍の高い賃金である。生涯年収においては、男子において、高卒は1.11倍、高専・短大卒は1.17倍、大学・大学院卒は1.47倍

企業において幹部に昇進する人々のうち、いわゆる名門大学(東大、京大、一橋大、慶應大など)出身者の比率が減少している

幼児教育の重要性は、非認知能力を高めるのに貢献する、ということに凝縮できる。ここで非認知能力とは、その人の性格なり精神、あるいは意欲に関する能力を意味し、具体的には忍耐力、自制心、協調性、指導力、計画性、向上心、意欲

秋田県、北陸3県の小・中学生の学力が高い1つの理由に、家庭での勉強時間がしっかり保たれていることがあった。それを促す1つの方法は宿題の量を増やすことにある

夜の時間に子どもが勉強に励むには、親が遊びほうけている姿を見せていては、子どもだけが勉強する気にはならないだろう。毎夜父親がパチンコに通うとか、夜遅く飲んだくれて帰宅するといったことはなるべく避けて、静かに本を読むとか静かにテレビを見る、といったことをしたい。これを述べる根拠は、フランスの社会学者・ブルデューが「文化資本」と名付けたことに由来していて、家庭の中で知的ないし文化的な雰囲気が漂っていると、子どもはそれに自然と馴染んで同じく知的ないし文化的な人間になろうとする姿勢が芽生える

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勝つためのルールは、いつだって「羊の群れのなかの狼」になることであり、「銅剣しか使っていないところで鉄の剣を使う」ことだと思っていますが、本書にはそんな戦いのヒントが詰まっています。

ぜひチェックしてみてください。

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『子ども格差の経済学』橘木俊詔・著 東洋経済新報社

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◆目次◆

第1章 塾に行っている子と行っていない子でどの位の差がつくのか
第2章 ピアノやサッカーなどの習い事はどのような効果があるのか
第3章 1人の子どもを育てるのにいくらかかるのか
第4章 なぜ日本は教育を親まかせにしたのか
第5章 子どもたちに親のできることと、社会ができること

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