2017年6月24日

『江戸を造った男』伊東潤・著 vol.4721

【国のために生きた商人】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022514094

本日紹介する一冊は、『国を蹴った男』で第34回吉川英治文学新人賞、『巨鯨の海』で第4回山田風太郎賞を受賞した作家・伊東潤さんのデビュー10周年作品。

明暦大火の材木買付で財を成し、その後日本列島海運航路の開発、大坂・淀川治水工事などを成し遂げた、江戸の都市計画・日本大改造の総指揮者、河村瑞賢を主人公に描いた、長編時代小説です。

時代小説ですので、創作ではありますが、国のために生きた大商人、河村瑞賢の生き方からは、たくさん学ぶところがありました。

材木、漬物、壁材、人材派遣…。

ちょっとしたきっかけから儲かる商売を見つけ出す天才・河村瑞賢の視点からは、ビジネス創出の切り口がたくさん学べます。

また、どうすれば商売は上手くいくのか、有事にあって商人はどう行動すべきなのか、少欲を超えた大欲を持つには何が必要なのか、そして国に貢献するために必要な視野とは何なのか、原理原則と心構えが学べるのも本書の特長でしょう。

さっそく、ポイントをチェックしてみます。

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──わいも、もう四十か。
齢四十に達し、人の一生というのは竹と同じように節目があることを、七兵衛は覚っていた。節目で訪れる転機を知り、新たな流れに乗っていくことで、人生は大きく違ってくる

──福島と上松の間の行き来は、冬の間、途絶していると聞くが。逆に考えれば、それは江戸の大火が伝わっていないことを意味する。皆があきらめることなら、そこに付け入る隙が生まれる。
──中山道を通って木曾に行こう

(保科)正之によると、当初、清盛や信長も敵を斃して、その富を奪って自分の富を増やそうとした。しかし他人の富を奪うよりも、そこにはない富を生み出せばよいことに気づいたのだという。
「そこにはない富──」
「そうだ。人の富を奪ったところで高が知れている。それなら、より大きな富を作り出せばよい。それが清盛の日宋貿易であり、信長の南蛮貿易というわけだ」

──そうか。商いとは人のしないことをし、人の望む物を望む形で供することなのだ

七兵衛の商いは、何かを売りたい商人に売り子をまとめて貸したり、壁土を加工する職人を養成し、現場に派遣したりするものに変貌していった。その行きつく先は、かつて小僧として学んだ口入屋だった

──何かをやろうとする時、必ず頭をもたげるのは「そいつは無理だな」という思いだ。さしたる理由がなくても、人は「無理だ」と思い込むことが多い。
──それを取り払えば、自ずと答えは出てくる

人というのは厳しく締め付けるだけでは、前向きにはなれない。しかし些細なことでも役得があれば懸命に働く。七兵衛は、そうした気持ちをよく心得ていた

七兵衛のような立場の者は、幕府の威権を笠に着ていることで傲慢に思われがちである。そこをことさら下手に出ることで、地元の人々から様々な助力が得られる

「江戸の商人というのは、物だけでなく男も売るんだな」

「今日明日、餓え死にする者を救うのは政治の仕事。来年、飢え死にする者を救うのが、商人の仕事です」

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元々は知人に勧められて読んだ本でしたが、これは「当たり」でした。

現在の国の窮状を考えると、一人でも多くの経営者が、この河村瑞賢のような意識でもって国に貢献して欲しいと思います。

わが子を何人も失って、それでも進み続けた河村瑞賢。その生き方から学ぶことは多いと思います。

ぜひ読んでみてください。

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『江戸を造った男』伊東潤・著 朝日新聞出版

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◆目次◆

第一章 艱難辛苦
第二章 漕政一新
第三章 治河興利
第四章 河患掃滅
第五章 天下泰平

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