2017年6月5日

『技術は戦略をくつがえす』藤田元信・著 vol.4702

【戦略と技術、どっちが大事?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4295400882

アルフレッド・D・チャンドラーJr.の『組織は戦略に従う』が出たのはもう50年以上前。

※『組織は戦略に従う』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478340234/

以来、『戦略は直観に従う』だの、『戦略は実践に従う』だのといったタイトルが雨後の筍のように出てきたのですが、昨今の経営環境を考えると、一番気になるのが、本日ご紹介するタイトル。

『技術は戦略をくつがえす』は、元陸軍将校の祖父を持ち、東京大学工学部を経て防衛省技術研究本部に入省、現在、防衛装備庁に出向中という著者が、戦略と技術の歴史をまとめたもの。

読むと、いかに戦争の歴史のなかで、技術が戦略を翻弄してきたのか、というのがよくわかります。

シリコンバレーでは、コードを組めない経営者は見向きもされないそうですが、技術の進歩著しい現在、技術がわからないために有効な戦略を立てられていない、という経営者は多いと思います。

本書を読んでも、経営者が技術に詳しくなるわけではありませんが、戦略と技術の歴史を知ることで、技術を学ぶことへの意識は確実に高まると思います。

さっそく、内容をチェックしてみましょう。

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技術は、既存の戦略をくつがえす力を持っています

戦略は、非対称性を利用する

新たな戦略により対抗手段が講じられ、非対称な条件が利用できなくなった時、戦略はその価値を失う

空間は、一度戦場として認識されてしまうと、元に戻ることはありません

戦略爆撃を実現するために必要不可欠なものは、爆弾を運ぶ手段

潜水艦は、見えない水中から水上の船を攻撃できるという非対称性を生む兵器でした。そして、潜水艦が使われた最初の戦争は、アメリカ南北戦争でした

暗号の起源は古く、古代ギリシャ時代まで遡ります。紀元前480年にペルシア艦隊とギリシャ艦隊の間で行われた「サラミスの海戦」で、ギリシャ側が勝利できたのは、「秘密の書記法」で敵に知られないよう情報を伝えられたから、と考えられています

Uボートは、エニグマ暗号機と無線のおかげで、大西洋を自由に航行し、次々と戦果を挙げていきました

ドイツ陸軍は、戦車を単に移動できる砲台とは考えませんでした。ドイツ戦車の特徴は、速度が速く、全車両に無線機を装備しており、組織的な戦いを可能とした点にありました

私たちは、より遠くを見渡すために、高いところに登ります。19世紀以前の戦いでも、勝利の鍵は、高い場所を敵に先んじて手に入れることだと考えられていました。高地をいち早く占領し、より多くの情報を得ることで戦いを有利に展開することが、戦略の基本と考えられていました。19世紀に入り、その戦略を無効化する発明が登場しました。それは、「気球」です

水面に向かって回転をかけた石を投げて、水面で石を跳ねさせる“水切り”という遊びをご存知でしょうか。地方により呼び名は違うそうですが、世界中に存在する遊びだそうです。ウォリス博士のコンセプトは、なんと、水切りの原理を応用した、「反跳爆弾」(bouncing bomb)で魚雷網を回避する、というものでした

技術の歩みは止まらない

「どうして、日本軍は負けたの?」
祖父の答えは、教科書には書かれていない、意外なものでした。
「我が軍は、士気と練度では決して劣らなかった。しかし、技術で負けたのだ。」

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アマゾンのカスタマーレビューにもあったように、トリビア集になってしまっているのが残念ですが、戦争マニアでもない限り知らないことばかりで、楽しく読むことができました。

ビジネス書になりきれていないので、読者にある程度の読解力が求められますが、それさえできればきちんと役立つ書籍だと思います。

「おわりに」に書かれた、著者と祖父の会話は、すべてのリーダーが心しておくべきことと思います。

経営者、リーダーが技術の大切さに気づくために、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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『技術は戦略をくつがえす』藤田元信・著 クロスメディア・パブリッシング

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◆目次◆

序 章 戦略と技術について
第1章 戦略の「常識」はいつも「技術」によってくつがえされてきた
第2章 新技術の強みを生かし、既存戦略をくつがえす
第3章 既存技術の新たな使いみちを見つけ、既存戦略をくつがえす
第4章 既存戦略をくつがえす技術を生み出した技術者と組織
第5章 戦争が生み育てた技術の「その後」

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