2016年12月11日

『日本人の9割が知らない遺伝の真実』安藤寿康・著 vol.4526

【人生を変える「行動遺伝学」】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797389745

橘玲さんの『言ってはいけない』は、能力開発や犯罪の可能性において、個人にはどうしようもできない「遺伝」的要素を取り上げ、30万部のベストセラーとなりました。

※参考:『言ってはいけない』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106106639/

読んでいて「ふむふむ」と納得したり、反発したりする一方、「この本の言うことはどこまで本当なのだろう」と疑問に思った人も多かったのではないでしょうか。

じつは、あの本がベースとしていたのは「行動遺伝学」という学問。そして本日ご紹介する一冊は、その行動遺伝学の専門家が、『言ってはいけない』をふまえつつ、いったいどこまでわれわれが遺伝の影響を受けているのか、明らかにした一冊。

人間の才能はどこまでが遺伝によるものなのか、学校教育や家庭教育の影響はどの程度あるのか、じつに気になる「真実」が書かれています。

著者は、行動遺伝学と教育心理学を専門にする慶應義塾大学文学部の教授で、本書には、行動遺伝学に基づく、未来の教育のあり方についても提言がなされています。

「やっぱりか」と思うデータがある一方で、親や学校ができることに関しても希望が示されており、よい教育の指針となりました。

さっそく、気になるポイントを見て行きましょう。

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正規分布はノーマル・ディストリビューション(normal distribution)の訳なのですが、集団の中に必ず両極端のアブノーマル(異常)な人がいることがノーマル(正常)だということを示唆する、この分布の含蓄には深いものがあると思いませんか

特に重要な部分がIQと関連していることが示されています。それは頭頂葉と前頭葉の結びつきです。このちょっと離れた部分が同期して働いている人ほどIQが高いようなのです

情緒不安定性が高い人はうつ病になりやすい、勤勉さと好奇心の強さが高い人は、社会的な業績を上げやすいといったことがわかってきています。意外かもしれませんが、学業成績は外向性が低い、つまり内向的な人の方が少し高い傾向にあります

◆ビッグ5(人間の性格を表す5要素)
Openness to experience(経験への開放性、または好奇心の強さ)
Conscientiousness(勤勉さ)
Extroversion(外交性)
Agreeableness(協調性)
Neuroticism(情緒不安定性)

GFP(General Factor of Personality)
=情緒不安定性をマイナスの値、それ以外はプラスの値として足し合わせたもの

GFPが高い人ほど、現在就いている職業についての満足度が高く、離婚しない傾向がありました

青年期のIQの個人差は、遺伝54%、共有環境19%、非共有環境27%によってつくられている

人間の行動のほとんどは、遺伝+非共有環境で説明できる

収入に及ぼす遺伝の影響は約30%でした。ところが年齢まで考慮してみると、就職し始める20歳ぐらいのときは遺伝(20%程度)よりも共有環境(70%程度)がはるかに大きく収入の個人差に影響していることが示されました。ところが年齢が上がるにつれ、その共有環境の影響はどんどん小さくなり、かわりに遺伝の影響が大きくなって、最も働き盛りになる45歳くらいが遺伝の影響のピーク(50%程度)になり、共有環境はほぼゼロになるのです

英才教育によって見つけられる才能の多くは、芸術やスポーツなど、ごく限られた個人プレイによる才能

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著者が提案する、「学年制から能力性への転換」や、「能力検定テストの創設」は、実際にやろうとするとかなりの困難を伴いますが、方向性としてはじつに面白いと思います。

教育に携わる方にとってはもちろんのこと、自らの能力開発や40以降の人生設計を考える人にも、参考になる一冊です。(遺伝の影響は、45歳くらいがピーク)

ぜひ読んでみてください。

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『日本人の9割が知らない遺伝の真実』安藤寿康・著 SBクリエイティブ

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◆目次◆

第1章 不条理な世界
第2章 知能や性格とは何か?
第3章 心の遺伝を調べる
第4章 遺伝の影響をどう考えるか
第5章 あるべき教育の形
第6章 遺伝を受け入れた社会

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