2016年9月16日

『トヨタの原価』堀切俊雄・著 vol.4440

【トヨタの秘密「原価企画」とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4761271981

本日ご紹介する一冊は、トヨタの原価管理のしくみに切り込んだ、じつに興味深い一冊。

著者は、トヨタ自動車株式会社で国内生産ラインの工程設計・設備計画などに従事した、堀切俊雄さん。

ハーレーダビッドソンやボーイングなどにも指導した経験がある、製造業のベテランコンサルタントです。

本書『トヨタの原価』では、これまであまり言及されてこなかった、トヨタの「原価企画」の全貌を明らかにしており、トヨタがどこまで原価を管理しているのか、よくわかる内容です。

なぜ、トヨタは原価を重視するのか。

著者によるとそれは、<売上は机上の計算通りにはいきませんが、原価低減なら努力次第で全部門での対応が可能になる>からです。

そして、ここからが目からウロコでしたが、<売上に直接関わらない部署であっても「原価低減」で貢献することは可能>だからだと
いうのです。

つまり、従業員のモチベーションを意識して、そうしているのです。

本書には、そんなトヨタの、原価企画のしくみ、経理のしくみを公開しているのですが、正直、驚きました。

<商品の設計段階で原価と販売効果との関連を探る>という思想は出版業界にはあまり見られませんし、また、企業会計と原価管理で
経理が二つに分かれているというのも、通常ではあまり見られないことだと思います。

また、商品別に原価を出すやり方も書かれているのですが、ここまでやるのかと、正直驚きました。

中小企業だと、やれることとやれないことがありますが、読んで改善のヒントには必ずなると思います。

さっそくポイントをチェックしてみましょう。

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商品の設計段階で原価と販売効果との関連を探る

「(1)製品企画」と「(2)原価企画」はペアになって提出され、「製品企画」を常に原価面からチェックし続けているのが「原価企画(会議)」であり、それがトヨタのクルマづくりの最大の特徴

売上に直接関わらない部署であっても「原価低減」で貢献することは可能(中略)すべての社員が利益に貢献する、それは「原価低減」で実現できることなので、トヨタでは「原価低減」を重視しているのです

トヨタの工場の原価管理では、必ず「商品別、部門別、組別」に、何をどれだけ使ったかをすべて分類しています

トヨタの経理部は他企業とは異なり、実は二手に分かれて仕事をしているのです。それは、
・企業会計(法律上)のための経理屋さん
・原価管理(原価低減)のための経理屋さん
の2つです

「原価低減」につながるデータはオープンにすべき

ある部品を内製すると100円かかり、外注では80円の見積りを得た場合、ほとんどの企業は外注に出そうとします。ですが、内製費100円の中身を分析すると、減価償却費、人件費などが入っています。これが曲者です。もし、内製費100円の中に減価償却費が20円、人件費が50円と入っていたとすると、その仕事を外注に出しても、減価償却費の20円、人件費の50円が社内から消えてなくなるわけではありません。ということは、その部品にかかる真の外注コストは「20円+50円+80円=150円」になります。したがって、内製費100円と比較する外注費は80円ではなく、150円のほうなのです

部品原価が不明なときは工場を新設して調査する

◆不良を激減させた「4M+1M」の手法
(1)材料が悪いのか……Material(材料)
(2)機械に不具合があるのか……Machine(機械)
(3)やり方(方法)が悪いのか……Method(方法)
(4)作業員の技能に問題があるのか……Man(作業者)
(5)良品かどうかを検査する……Measurement(検査)

デザインレビューで「手戻り」を回避する

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本書のなかで著者は、こんな問いかけをしています。

<あなたの会社では、工場の照明費用や電気代を「工場の電気代」といった形で一括処理していないでしょうか。フロア別ぐらいで処理していないでしょうか。つまりは、きちんとそれぞれの商品別に「電気代はいくら」と算出しているかどうか、ということです>

商品別の原価をきちんと把握する。

そこから正しい意思決定が生まれてくる、という指摘はもっともで、本当に良い経営改善のヒントになりました。

ぜひ読むことをおすすめします。

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『トヨタの原価』堀切俊雄・著 かんき出版

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◆目次◆

第1章 トヨタの仕事の基本 原価を意識して「付加価値」を生みだす
第2章 トヨタの原価低減の進め方
    商品別の原価を洗いだして他社の原価を推定する
第3章 トヨタの設計開発チームのつくり方
    自工程完結の仕組みとチーフエンジニアの役割
第4章 トヨタの原価企画の進め方
    原価企画にトヨタの原価低減のすべてが凝縮
第5章 トヨタのムダ取り
    工夫とカイゼンの徹底で「原価低減」の仕上げをする
第6章 トヨタの大部屋方式の効果と進め方
    「見える化」すると人は「原価低減」を意識する

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