2016年7月18日

『「考える」は技術』グル・マドハヴァン・著 須川綾子・訳 vol.4380

【世界的天才エンジニアから思考技術を学ぶ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478067406

古今東西の偉人の話を読んでいると、やはり奇跡を起こすのは「目的」への真剣さと、観察、思考であると感じます。

以前、サントリーさんでお話させていただいた時、「最高のビール、ワインを作るのでなく、ビール、ワインに匹敵するカテゴリーを作れ」というお話をさせていただきましたが、やはり仕事は「革命」を意識して行うものです。

1cmでもいい、先人の築き上げてきた知恵を一歩先に進めようとする努力が、知恵を生むのだと思っています。

そういう意味で読んでおきたいのが、本日ご紹介する『「考える」は技術』という本。

<ダボス会議 ノーベル賞経済学者が認めた天才エンジニア>である著者のグル・マドハヴァン氏が、古今東西の偉大なエンジニアリングの成果を、エピソード形式で伝えています。

フランスの大砲の使い勝手を変え、戦い方にまで影響を与えたグリボーバル、ストックホルムの交通渋滞を緩和したIBMのチーム、全米を「ゾーン」に分割し、ZIPコードを開発したシステム設計者たち、セルフサービスの時代を創り、トヨタ生産方式にも影響を与えたスーパーマーケット「ピグリー・ウィグリー」創業者のクラレンス・ソーンダース、ATMを創ったシェパード・バロン、商品の梱包の原理からヒントを得てシートベルトを設計したデ・ヘイヴン、コダックでデジタルカメラを創ったサッソン、パンパースを創ったP&Gのミルズ…。

天才エンジニアたちの思考法とエピソードがびっしり詰まっており、じつに読み応えのある本です。

思考法が体系的にまとめられていないのが残念でしたが、個々のエピソードにはぐいぐい引きつけられます。

いくつか、気になったエピソード・言葉を拾ってみましょう。

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グリボーバルはフランスの大砲の設計に磨きをかける仕事に取りかかった。精密さを追求し、(紙の厚さにも満たない)1インチの1000分の1以下まで指定する設計書を作成した。冶金には熟練した技術者を雇い、最新式のドリルで砲腔をくりぬき、砲身の仰角を微調整するねじ機構を設けて高精度の照準を実現した。照準を合わせやすいように銃砲の後方に照門を加え、さらに運搬用の革の紐を取りつけたことは、戦場の兵士にとって大きな助けとなった。グリボーバルは起伏の多い場所でも移動しやすいように砲台の車輪を大きくし、木製だった車軸を、整備や修理の利便性を考えて鋳鉄に替えた。どれも小さなことだが、大砲の使い勝手を向上させる重要な調整だった。また、それはグリボーバルの戦術を反映したものだった

◆最適化のための重要な2要素
1.目的 2.制約

エンジニアによく見られる誤謬は、あるレベルで好適なモデルが規模を拡大しても同じく通用すると考えてしまうことだ<技師たちの架空のチームが、普通の馬より2倍の背丈がある「強化馬」をつくることにした。ところが誕生したのは、欠陥だらけの非効率的な獣だった。背丈だけでなく、横幅も全長も2倍なので、重量は8倍以上になった。しかし、動脈と静脈の断面積は普通の馬の4倍しかなく、心臓に2倍の負担がかかった。足の裏の面積は普通の馬の4倍だが、単位面積当たりでは普通の馬の2倍の重量を支えなければならない。結局、強化馬は処分するしかなかった>

ピグリー・ウィグリー──スーパーマーケットにしては、なんとも奇妙な名前だ。1916年、創業者のクラレンス・ソーンダースは、テネシー州メンフィスにオープンした1号店をそう名づけた。買い物客は木製の回転バーを通って売場に入り、買い物カゴを持って品物を選び、最後にレジで支払いをすませて店を出る。じつに画期的なシステムだった(中略)ソーンダースは自分の店について、「商品の販売に不必要なサービスをすべて省いた」と自信満々に語った。「ピグリー・ウィグリーでは、買い物をすませた客が48秒ごとに店をあとにする」(中略)ここで見落としてはならないのは、買い物客には自らの選択に従って買い物をするインセンティブがあるという点だ

デ・ヘイヴンは商品の梱包の原理からヒントを得て、生涯にわたって自動車の衝突対策を研究した。箱や容器は、内容物を守るために外部からの力に耐えられるように設計されている。デ・ヘイヴンは基本的機能から考察した。「梱包容器は蓋が開いて中身が飛び出してはならないし、想定される力が加わったときに内容物が損傷するようであってはならない」。このような着眼点から、彼は容器のなかに固定された内容物を「外的な衝撃から守るべく」、「内側梱包」という概念を構築した

「自分が取り組む問題について、誰かが専門用語を振りかざして攻撃を仕掛けてきたとしても、おじけづいてはいけない」(テッド・カウフマン)

本当に価値ある技術とは、ユーザーにとっての経験を高めるものだ

優れた技術というのは、直感的であることが多く、なおかつ進化するものである。理想を言うなら、存在すら意識させない技術こそが素晴らしい

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エンジニア、エンジニア予備軍はもちろん、これから社会の問題を改善しようと意気込む方には、ぜひ読んでいただきたい、元気の出る一冊です。

「思考が世界を変える」。そう信じるすべての方に、強くおすすめしたい内容です。

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『「考える」は技術』グル・マドハヴァン・著 須川綾子・訳 ダイヤモンド社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478067406

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◆目次◆

プロローグ 世界にまだない「解」を出す──エンジニアの思考法
1章 「モジュラーシステム思考」で分解して考える
2章 モデル化で問題を「最適化」する
3章 「逆算思考」で信頼性と効率性を両立する
4章 組み換え発想で解決策を「標準化」する
5章 「制約」を逆手にとってトレードオフを乗り越える
6章 「適応思考」で共感と理性の均衡点を探る
7章 「プロトタイプ思考」で創造力を最大化する
8章 「人類学思考」でアイデアの中心に人を置く
フェードアウト 万人のための思考法へ

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