2016年6月9日

『確率思考の戦略論』森岡毅、今西聖貴・著 vol.4342

【経営者・マーケターは必読】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041422

今日は、近年稀に見る名著をご紹介いたします。

ご紹介するのは、USJのCMOで、元P&G世界本社の北米パンテーンブランドマネージャー、森岡毅さんによる『確率思考の戦略論』。

前回ご紹介した『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』も素晴らしい本でしたが、今回の書籍は、前作の裏づけとなる著者の戦略理論を明らかにした、経営者・マネジャー必読の一冊です。

※参考:『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041414

USJの集客数を600万人以上増やした実績、かつその理論のベースをP&G本社で学んだとなると、これは読まずにいられません。

今回の書籍は、やはりP&G世界本社で市場分析・売上予測を担当していたという今西聖貴さんとの共著ということで、さらに骨太な内容に仕上がっています。

とはいえ、さすがはマーケター。難しい理論を難しいと感じさせることはまったくなく、一部の統計解説を除けば、まったく統計知識ゼロでも面白く読める内容です。

著者は本書の冒頭で、市場構造の本質をズバリ「プレファレンス」という言葉でシンプルに表現しています。

プレファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好意度のことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されています。

このプレファレンスが市場構造を支配するのは、<小売業者も、中間流通業者も、製造業者も、最強の存在である最終購買者(消費者)に従わざるを得ないから>。

だからこそ、<経営資源を集中すべきはプレファレンスである>という結論になるのです。

本書のなかで著者は、理論上どのようにしてこのプレファレンスを上げるのか、また、どのように実践したのか、USJの例を用いながら丁寧に紹介しています。

また、世界一の消費財メーカー、P&Gがいかにしてビジネスを伸ばしてきたのか、その本質とマーケティング技術についても触れています。

見た目は分厚いですが、あまりに面白く、一晩で一気に読んでしまいました。

さっそく、ポイントをチェックして行きましょう。

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P&Gは全てのカテゴリーにおいて、シェアを最も重要なビジネス指標としてずっと重視してきました。それはすなわち、マーケットの本質である「消費者のプレファレンス」をずっとモニターしていたことになるのです

消費者の頭の中には、今までの購入経験から買って良いと思ういくつかの候補となるブランドがある(エポークト・セット)

売上を伸ばすためには、1)自社ブランドへのプレファレンスを高める、2)認知を高める、3)配荷を高める、の3つしかない

Mは選ばれる確率そのものです。数学的にMは、自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を、消費者の頭数で割ったものです(中略)Kは消費者の購入確率がどのような分布の形になるかを決めている指標です(中略)MがKを決めるのです。そして選ばれる確率そのものであるMを伸ばすために、我々がコントロールすべきものは「プレファレンス」しかありません

◆売上を規定する7つの基本的要素
1.認知率 
2.配荷率 
3.過去購入率(延べトライアル率)
4.エポークト・セットに入る率 
5.1年間に購入する率
6.年間購入回数 
7.平均購入金額

ポジショニングやその差別化は、「M」を増やすため

「プレミアム・プライシングは正しい」。それは、私が尊敬しているP&G世界本社の元CEO(かつては日本法人の社長でもあった)ダーク・ヤーガーが残してくれた教えでもあります。その一番の根拠は、消費者を継続的に喜ばすために必要な原資を獲得するためには、プレミアム・プライシングでないと難しいということです

◆USJには大きな「M」の伸び代が4つあった
1)ファミリー層からの「M」の獲得
2)ハロウィーン・シーズンからの「M」の獲得
3)個別ブランド・ファンからの「M」の獲得
4)スリル・シーカーからの「M」の獲得

男性ホルモン「テストステロン」の年齢別分泌量と、テーマパーク来場者の年齢別分布の強い相関関係を発見した

予測においての大きな不確実要素は、人口当たりの浸透率と1人当たりの購入・訪問回数です。テーマパークのような集客施設でこの2つに大きく影響するのは、一番が集客施設のタイプ(テーマパーク、動物園、ショッピング・センター)、次に施設までの時間距離別の人口分布、そして値段です

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行間部分を丁寧にお伝えできないのが本当にもどかしいのですが、本書の理論があれば、マーケティングで押さえるべきポイントが、理論で瞬時にわかるようになると思います。

数式について詳しく知りたい方は、巻末に丁寧な解説があるので、こちらを読み込むといいでしょう。

これだけ分厚い本を熱狂して読んだのは、ベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』以来でしょうか。

※参考:『ストーリーとしての競争戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492532706

それにしても、森岡さんは、文章が上手い。一般向けの本を書き始めたら、神田昌典さんに匹敵する著者に成長するかもしれませんね。

経営者、マーケターは、ぜひ読むことをおすすめします。

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『確率思考の戦略論』森岡毅、今西聖貴・著 KADOKAWA
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041041422

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◆目次◆

序章 ビジネスの神様はシンプルな顔をしている
第1章 市場構造の本質
第2章 戦略の本質とは何か?
第3章 戦略はどうつくるのか?
第4章 数字に熱を込めろ!
第5章 市場調査の本質と役割─プレファレンスを知る
第6章 需要予測の理論と実際─プレファレンスの採算性
第7章 消費者データの危険性
第8章 マーケティングを機能させる組織
巻末解説1 確率理論の導入とプレファレンスの数学的説明
巻末解説2 市場理解と予測に役立つ数学ツール
終章 2015年10月にUSJがTDLを超えた数学的論拠

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