2016年5月19日

『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』 井手直行・著 vol.4321

【ぷしゅ?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492502823

商売をやっていると、その間、ブームが起こることがあります。

勢いに乗って、ビジネスも伸びるけれど、波が去ったら、商品の存在や、下手するとカテゴリーそのものまで忘れられることがある。

でも、真価が問われるのは、そこからです。

起業において、「儲かっているからやる」のか、「儲からなくてもやる」のかは、大きな違いです。

なぜなら前者の場合、儲からなくなればやめるけれど、後者の場合、儲かる仕組みさえ作れば永続するからです。

本当の成長は、足踏みした後に始まる。

そのことを教えてくれるのが、本日ご紹介する『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』です。

著者は、星野リゾート系列のヤッホーブルーイング社長、井手直行さん。

本書では、地ビールブームの終焉により、ビールを大量廃棄しなければならないほど苦しんた著者らが、どうやってそこから這い上がったのか、そのエピソードが紹介されています。

赤字続きの会社が、11年連続増収増益、売上前年比40%増に至るまでに、どんなドラマがあったのか、そこでどんな学びが得られたのか、さっそくのぞいてみましょう。

———————————————–

すべてを捨てて、無重力のような状態に身を置くと、自分がどっちに引っ張られるのかがよくわかる

星野は「でもさ、もう本当に全部やり尽くしたのかな?」と言ったあと、こう言ったんです。
「とことんやろうよ。とことんやって、それでもだめだったら、そのときは会社をたたもう。会社をたたんだら、湯川で一緒に井手さんの好きな釣りでもしてのんびり暮らそう」
湯川とは、軽井沢の星野リゾートの敷地内を流れる川のことです。
そして、星野は釣りをしません(中略)
僕は電話を握りしめて泣いていた。確かに僕は釣りが好きだ。でも、星野に僕との釣りを付き合わせては、絶対にだめだ

僕は……、「よなよなエール」というビールを、強く、信じたんです。このビールを一生懸命つくり続けていれば、いつか、日本になかったこの個性的な味を理解し、愛してくれる人が、少しずつ増えるはずだ。この味を楽しみ、喜んでくださるはずだ

「スポットで棚に置いてもらっても、ブランドの価値を損なうリスクが大きいだけですよ。スポットだ、定番だなんて、消費者からは見えやしない。世間に、ああ、結局売れずに置かれなくなったんだなと思われるだけ。こういう展開が、最もブランドイメージを損なう原因になる。そもそもコンビニだって、売れないときはメーカーと一緒にブランドを盛り上げていこうという心構えが必要だ──」僕は星野が放ってきた球を、真芯でとらえて打ち返した。「社長、そんなことないですよ」

言うことを聞かないから社長にしよう

「だから、いまの不満を社員に言ってはいけません。だって、あなたのことなんです。あなたがそれでよしとしているわけです。社員に非はありません。あなたはあなたを映した鏡に不満を言っていたんです」(楽天トップセミナーの講師を務めた、大西芳明氏の言葉)

僕らは最悪の時期、会社が崩壊寸前になるほど、悪い雰囲気を経験した。だから僕は「チームビルディング」に興味を持って、その必要性を確信し、実践した。すると、社員がチームになって、さらには、この感覚でイベントを運営してくれた。すると、今度はファンがチームになってくれた。人生、やっぱり「それはちょうどいい」んでしょう。僕は独力でチームがつくれなかった。経営のことがわからなかった。だからこそ、会社を伸ばしていくことができたんです

自分が変われば、組織が変わるんです。自分が変わらなきゃ、いっさい、何も始まらないのです

———————————————–

団結力のあるチームにありがちな閉鎖性を感じて、嫌気がさす読者もいるかもしれませんが、個人的にはこの再生物語に感動しました。

誰かの「本気」に応えられるか、自分の扱う商品を信じることができるか、人生を委ねる覚悟があるか、いざというとき、体を張れるか…。

テクニックではなく、経営に最も大切な「気概」を教えてくれる本だと思いました。

雇う側、雇われる側どちらにも、得られるものがあると思います。

ぜひ読んでみてください。

———————————————–

『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』
井手直行・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492502823

————————————————-

◆目次◆

プロローグ
第1章 おもしろそうな仕事は裏切らない
第2章 ファンは100人に1人でもいい
第3章 弁当代が出ないなら東京に行きません
第4章 どん底だから、この仕事に人生を賭ける
第5章 運命を変えた七年前の手紙
第6章 スキルは挑戦しながら身につければいい
第7章 リーダーの不満は自分を映した鏡
第8章 早ければ早いほど、最高のチームができる
第9章 僕らの働き方を変えたら、ファンも販売店もチームになった
エピローグ
付録 今夜から使える エールビールの楽しみ方

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー