2015年10月18日

『お金に強くなる生き方』佐藤優・著 vol.4107

【お金持ちになるためのマクロ視点とは】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4413044673

数年前、ハーバード・ケネディスクールに行っていたという知人がいて、ちょっとお話をしたことがあります。

政治や行政に関わっている方は、マクロ的にモノを見る習慣があるので、お金持ちになるかどうかは富の配分で決まる、つまりどこに線を引くかで誰が得するかが決まる、と考えているのです。

一方、ミクロ的に経済を見る商人は、そうではありません。彼らは自分の努力や工夫、仕組みづくりが富に直結すると信じているのです。

これはどちらが正しい、ということではありません。

どちらもお金持ちになるための必要条件であり、だからこそわれわれは、マクロ・ミクロ両方の視点を学ぶ必要があるのです。

ミクロ視点で書かれたお金の本は、山ほどあります。でも、マクロ視点で書かれたお金の本は少ない。

そこで読んでおきたいのが、佐藤優さんの『お金に強くなる生き方』です。

『Big tomorrow』誌で連載していた「佐藤優の『逆説』のお金論」をもとに加筆・再構成したもので、国家体制によって貯蓄率やお金のスタンスが変わるという話が興味深い。

また、これから格差が広がる日本社会において、われわれがどう生きればいいのか、著者なりの見解を示しています。

マクロ的な分析とお金の教養、稼ぎ方に関する著者個人の見解が入り混じった、玉石混淆な内容ですが、丁寧に拾えば、面白いヒントが手に入ると思います。

いくつか、気になったポイントを見て行きましょう。

———————————————–

資本主義社会でお金を抜きに生きていくことはできません。だから、お金をバカにしてはならないのです。しかし一方で、お金に振り回される生活をしても幸せな一生を送ることはできません

「会社員」と「大金持ち」は矛盾する

「企業(資本家)は、利益を社員(労働者)には分配しない──」このことは、マルクスが『資本論』で明確に指摘しています

大金持ち、富豪と呼ばれるようになるには、何かを捨てる覚悟が必要です。特に一代で一気に上り詰めるような人は、ときに貧乏時代の友人や人間関係を捨てなければなりません。お金持ちになったとたんに嫉妬やお金の貸し借りなどが出てきて、お互い貧乏だったころの気楽な関係は続かないものです

お金に対する考え方や向き合い方というと、ラテン系の国は貯蓄率が低い、アングロサクソンは投資好きなどと、国民性や民族性に左右されるものと考えられがちです。しかし、その国がどういう体制なのか、どういう国家を目指しているかということの影響のほうが大きいのです。なかでも一番影響を与えるのは社会保障と税金です

低信用社会ほどお金に価値を置く

安倍内閣は2014年4月、「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。それまでの「武器輸出三原則」では武器の輸出を禁止していましたが、条件つきで輸出ができるようになったのです。アベノミクスの第三の矢には、実は軍需産業の拡大が含まれています

お金は自ら増殖しようとする

貨幣は常に商品に交換することができる(G-W)。ところが商品を貨幣に換える(W-G)ことはなかなかできません

一番いい報酬の支払い方は、情報を持ってきたその場ではお金を払わないこと。そして、冠婚葬祭や家族の病気などでその人がお金が入り用になったとき、「これを使ってくれ」と、ある程度まとまったお金を渡します。あくまで仕事とは直接リンクしない形で渡すのがポイントです

金銭感覚のズレが友情をこわす

この世に「国家がなくなったら」「会社というものがなくなったら」「家族という単位がなくなったら」という問いを発してみると、これまでにない新しい考え方や視座を発見する糸口になるはずです

———————————————–

読者が何を目指すかにもよりますが、正直、お金の稼ぎ方や運用に関する部分は、他の本を参照した方がいいと思います。

ただ、マルクス資本論の「生産論」に基づいた格差の解釈や、「低信用社会ほどお金に価値を置く」という指摘、インテリジェンスの視点から見たお金の渡し方などは、じつに勉強になりました。

詰まるところ、個人の富を決定するのは、国家の体制だったり、ルール作りだったりします。

「仕組み」を理解した上で努力する、というのが本来あるべき姿ですが、働く人に決定的に欠けているマクロの視点を手に入れるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

———————————————–

『お金に強くなる生き方』佐藤優・著 青春出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4413044673

————————————————-

◆目次◆

第1章 私たちを衝き動かすお金という幻想
第2章 大格差時代を生き抜くお金の極意
第3章 プロに騙されずにお金を増やすには
第4章 人生を台なしにしないお金の実学
第5章 お金と人間の幸福な関係を考える

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

同じカテゴリーで売れている書籍(Amazon.co.jp)

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー