2015年4月7日

希望の資本論』池上彰、佐藤優・著 vol.3913

【資本主義に呑み込まれない生き方とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023313947

以前から資本主義の限界を指摘する動きはありましたが、最近は、トマ・ピケティの『21世紀の資本』の影響で、その動きに拍車がかかっています。

※参考:『21世紀の資本』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622078767

本日ご紹介する池上彰さん、佐藤優さんの対談本も同様で、本書は、ピケティ現象、イスラム国を2人の論客が読み解く、というのがコンセプトになっています。

ほかの方も指摘している通り、実際には佐藤優さんが一方的に持論を展開する場となっており、そういう意味では、対談にする意味はあまりなかったのかもしれません。

ただ、マルクスも『資本論』を読み解き、資本主義の限界を知るというコンセプトは有用で、とりわけ資本主義がどう人間に思想的影響を与えるのか(企業のブラック化や残業など)、それを受けてわれわれがどんな生き方をすべきか、重要なヒントを与えてくれます。

※参考:『資本論』
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本書では、ピケティ氏が本来生産論で決まる賃金を分配論で考えていることを指摘し、内部留保を賃金に回せという考え方の問題点を論じています

本書によると、賃金のファンクションというのは、以下の3つです。

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1.1カ月働いて、次の1カ月も働けるだけのエネルギーが出てくるように家を借りて、食べ物や服を買って、レジャーも少しする
2.家族を養い、次の世代の労働力を生産す
3.さまざまな技術革新が起きると、それに合わせて自分で学習しなければいけない

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個々の資本に任せておくと、次世代の労働力の再生産という要素や技術革新に対応した知識を身につけるための自己教育という要素が欠ける、という指摘はなるほどと思いました。

女性が「名誉男性」化する、反知性主義の台頭、「資本の論理に巻き込まれないためには直接的な人間関係が重要」という指摘は、これからのキャリアや生き方を考える上で、勉強になりました。

タイトルの割に読みやすい本なので、ぜひチェックしてみてください。

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『希望の資本論』池上彰、佐藤優・著 朝日新聞出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023313947

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◆目次◆

はじめに 池上彰
第1章 ピケティからマルクスへ
第2章 一冊の本が世界を変えた
第3章 マルクス主義先進国ニッポン
第4章 「イスラム国」とコミンテルン
第5章 女性が資本主義を支える?
第6章 わたしと『資本論』
第7章 知性という最大の武器
第8章 さぁ、読んでみよう
おわりに 佐藤優
<対談>トマ・ピケティ×佐藤優
<ブックガイド>『資本論』を読み解くための8冊

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