2014年12月5日

『地政学の逆襲』 ロバート・D・カプラン・著 vol.3790

【「地理」が世界の繁栄を決定する】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023313513

以前、インドネシアの博物館を訪れた時、香辛料貿易の交易ルートが刻まれた板が展示されているのを目にしました。

驚いたのは、その交易ルートが、これからの世界経済の発展予想図に見えたことです。

※参考:wikipedia「香辛料貿易」より
http://ja.wikipedia.org/wiki/香辛料貿易

最近は、インターネットが地理的制約を取り払ったため、住む場所、経済拠点は問題ではないと主張する向きも多いのですが、土井はちょっと違った考え方を持っています。

これからの時代、高度知的生産に携わる人は、都市に集まった方が都合が良いですし、生産に携わる人は低賃金労働が手に入るところ、大消費地を考慮に入れなければならない。

そもそも、生産や物流にはエネルギーだって必要ですし、物資を届けるには天然の良港が必要です。

インターネット化、グローバル化が進めば進むほど、物理的制約は、ますます大きくなってくるのです。

本日ご紹介する一冊は、「地政学」の専門家であり、米政権のブレーンも務めたことのある、ストラトフォーのチーフアナリスト、ロバート・D・カプランによる注目の一冊。

世界の主要国が、地政学的にどんな制約を持ち、ゆえにどんな歴史をたどってきたかひも解き、さらに今後の世界がどうなるか、予言しています。

南北朝鮮の統一、アメリカとメキシコの有機的連携、ロシアの人口減少など、過激ながら来るべき未来を予言し、さまざまなリスクやチャンスに言及しています。

「メガシティが、21世紀の地理の中心になる」

ビジネスに携わる人間なら、本書の予言に耳を傾けずにはいられません。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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地理はトルクメニスタンに希望がないことを示しているのではない。むしろ地理は、歴史的なパターンを説明しようとする試みに、一つの手がかりを示しているにすぎない。すなわち、むきだしの無防備な土地への異民族の度重なる侵入というパターンである

ドイツ、ベトナム、イエメンなど、二〇世紀の分断国家の物語をふり返ると、分裂がどんなに長く続いても、最後には統一を促すさまざまな力が、思いがけない、ときには暴力的でめまぐるしいかたちで、すべてを圧倒するとわかる

ドイツが大陸の大国でイギリスが島国であること以上に重要な、ヨーロッパ史の中心的事実はあるだろうか? ドイツが軍国主義から初期の平和主義までの道をたどったのは、身を守る山脈をもたず東西が無防備だという、危険な立地条件に対処するためだった。これに対してイギリスは、国境が安泰で海洋志向が強いため、近隣国に先駆けて民主主義体制を発達させ、同じ言語を共有するアメリカと、大西洋をまたぐ特別な関係を築くことができた

アフリカは二番目に大きな大陸で、ヨーロッパの五倍もの面積があるが、サハラ以南の海岸線の長さはヨーロッパの海岸線の四分の一程度でしかない。そのうえこの海岸線には、アラブ世界やインドと活発に交易していた東アフリカの港を除けば、天然の良港がそれほどない

世界で経済的に最も立ち遅れた国のリストを調べると、内陸国の割合が高いことに気がつく。熱帯国(南北両緯度二三・四五度以内)が一般に貧しく、中緯度国が最も所得が高いことに注目してほしい

東西方向は気候条件が同じなので、植物栽培や家畜化の新技術が急速に広まりやすく、技術拡散がはるかに容易なのだ

アメリカが偉大なのは、その思想のおかげではなく、大西洋と太平洋に面しているという、「位置的に世界で最も恵まれた国」だということが大きい

カザフスタンは世界の戦略的天然資源のすべてを豊富にもち、ユーラシアのど真ん中の西シベリアと中央アジアと重なり合う位置にあり、西はカスピ海から東は外モンゴルまで、二九〇〇キロにわたって広がっている

シンガポールはマラッカ海峡の最も狭い地点という、戦略上の要衝

ペルシア湾、カスピ海の両エネルギー生産地にまたがる国は、イランだけだ

私の構想では、アメリカは世界中のエリートが集まる、国際商取引の重要な無関税区になるべきだ

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『地政学の逆襲』ロバート・D・カプラン・著 朝日新聞出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023313513

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◆目次◆

日本語版によせて
序章 失われた地理感覚を求めて
第一部 空間をめぐる競争
第一章 ポスト冷戦の世界
第二章 地理の逆襲
第三章 ヘロドトスとその継承者たち
第四章 ユーラシア回転軸理論
第五章 ナチスによる歪曲
第六章 リムランド理論
第七章 シーパワーの魅惑
第八章 空間の危機
第二部 二一世紀初めの世界地図
第九章 ヨーロッパの統合
第一〇章 拡大するロシア
第一一章 大中華圏
第一二章 インドのジレンマ
第一三章 中軸国家イラン
第一四章 旧オスマン帝国
第三部 アメリカの大戦略
第一五章 岐路に立つメキシコ

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