2014年11月20日

『時間資本主義の到来』松岡真宏・著 vol.3775

【おみごと。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/479422088X

リーマンショック、東日本大震災を経て、様変わりした日本の消費、そして働く意識。

お金でもなく、ステイタスでもない「何か」が人々を動かしているのは確かですが、どうもその実態が見えてこない。

そんなもやもやした状況下で、ズバリ今、何が起こっているのか、明らかにしたのが、本日ご紹介する『時間資本主義の到来』です。

著者は、野村総合研究所やUBS証券などで流通・小売り部門の証券アナリストとして活躍し、UBS証券で株式調査部長に就任後、産業再生機構でカネボウやダイエーの再生計画策定を担当した人物。

ご存じのように、現在は、かつてないほどの高齢化社会ですが、その本質を、著者はこう説いています。

<高齢化とは国民全体で平均余命が少なくなることと同値であり、国民全体で見た時間の希少性は否応なく高まっている>

つまり、「時間」こそが現在の消費行動を解き明かす鍵となっているわけですが、その事例として本書では、すすぎが1回で済む洗剤、ユニクロ、働く場所としての東京の人気を挙げています。

著者によれば、今後、人々が商品選択をする際の基準は、以下の2つ。

◆今後は、以下の2つの時間価値が商品選択に関わってくる
1.その物やサービスを使うことによって時間が短縮でき、有意義な時間が生み出される=「節約(saving)時間価値」
2.その物やサービスを利用することによって、有意義な時間が生み出される=「創造(creative)時間価値」

つまり、人々は時間が節約できたり、有意義に過ごせるサービスにプレミアムを払う可能性がある、ということです。

このように本書では、「時間資本主義」という新たなコンセプトで現在の消費を説明し、今度どんなサービスが流行るのか、どんな働き方が主流になるのか、著者の持論を展開しています。

「時間資本主義」時代の値づけの理論も展開されており、ひさびさに読んで目からウロコが落ちました。

ワクワクする一冊です。ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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高齢化とは国民全体で平均余命が少なくなることと同値であり、国民全体で見た時間の希少性は否応なく高まっている

時間というものは正負両方の面を持っている。例えば、時間の短縮にお金を払う場合もあれば、そこにいる時間を確保するためにお金を払う場合もある。無駄な時間は短くしたいが、楽しい時間・生産性の高い時間は長くとりたい

時間資本主義の時代には、商品の代金にプラスして、消費者が享受する時間価値の対価を払うようになる

時間資本主義に則って考えれば、消費者はサンクコストをできるだけ極小化しようとする。そのために、時間を消費するサービスを選ぶときは、失敗しないように「テッパン型」のサービスに頼ろうとする人が増えるだろう。絶対にはずれのないところに人気が集中するようになるのだ

ユニクロが猛烈に売れている一方、伊勢丹の高級服が売れている現状を、所得の二極化で説明する論考は多いが、高所得者であってもユニクロで買い物をするし、アマゾンで安い商品を探したりする(中略)消費の二極化の真犯人は、「時間資本主義時代の到来」ではないか

ダイムラーは2025年に高速道路での実用化を目指す、自動運転式のトラックを国際商用車ショーで発表した。実現すれば移動している時間、トラックの運転手はハンドルを握る必要がなくなる。データ管理をしたり、営業担当と連絡をとりあったりと、他の仕事にあてることができるのだ

「時間の快適化」は、消費者の好みという多様化された環境の下、群雄割拠で勝ち組企業が多数存在しうるのに対し、「時間の効率化」は、デジタルに勝ち負けが決まることで寡占企業や独占企業を生みやすい

時間資本主義時代は「職住近接」が進む

付加価値型のサービス業で成功することを目指し、全員が東京に集まったらどうなるのか。東京の地価は、まだ他の地方都市よりは格段に高いものの、若干の上昇率程度でおさまっている。それがきっと、急激に(地方と比較して相対的に)上昇するポイントがやってくるだろう

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『時間資本主義の到来』松岡真宏・著 草思社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/479422088X

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◆目次◆

いま、なぜ「時間資本主義」なのか?
第1部 時間資本主義の到来
第1章 人類に最後に残された制約条件「時間」
第2章 時間価値の経済学
第3章 価値連鎖の最適化から1人ひとりの時間価値の最適化へ
第2部 時間にまつわるビジネスの諸相
第4章 時間そのものを切り売りする
第5章 選択の時間
第6章 移動の時間
第7章 交換の時間
第3部 あなたの時間価値は、どのように決まるのか
第8章 人に会う時間を作れる人、作れない人
第9章 公私混同の時代
第10章 時間価値と生産性の関係
第4部 時間価値を高めるために──場所・時間・未来
第11章 時空を超えて
第12章 巨大都市隆盛の時代
第13章 思い出の総和が深遠な社会へ
結局のところ、時間資本主義とはいかなる時代なのか

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