2014年10月6日

『フラッシュ・ボーイズ』マイケル・ルイス・著 vol.3730

【先取り!マイケル・ルイス待望の新作!】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163901418

13年前、「ニューヨーク・タイムズ」で話題となっていた、『ウォールストリートの歴史』を読んだ時、今をときめく外資系金融機関がいかにインチキなならずもの集団だったのかを知り、衝撃を受けました。

※参考:『Wall Street: A History』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000VI8C7Y

本日ご紹介する一冊を読めば、残念ながら、今もあまり変わらないことに気づき、うんざりするかもしれません。

本日の一冊は、『マネー・ボール』『ライアーズ・ポーカー』などの名著で知られるマイケル・ルイスが、ウォール街にはびこる超高速取引業者「フラッシュ・ボーイズ」にスポットを当てた一冊。

※参考:『マネー・ボール』
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※参考:『ライアーズ・ポーカー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/415050394X

<電子化されたマーケットでは、千分の一秒の違いが、数兆円の価値を生む>

そのことに目をつけた通信業者と、遅れを取るライバル・一般投資家を食い物にする投資銀行…。本書には、コンピュータ化された市場で常態化した巨大な八百長に気づいた、ウォール街の「二軍」、カナダロイヤル銀行のブラッド・カツヤマが、巨大詐欺を暴き、公平な市場を創るまでを描いています。

数億円の報酬を捨て、正義のために立ち上がった信念の人、ブラッド・カツヤマ。

彼の考え方や、人の選び方、物事の進め方には、革命を起こすためのヒントが隠されています。

人を信頼させる「何か」、金しか信じていない人を口説くための作法、市場の仕組みを伝えるというアイデア、自己中心的な人間を見抜く法…。

ストーリーとしての面白さは、さすがマイケル・ルイスですが、ビジネスのヒントとしても得ることの多い内容です。

「アメリカで二〇一四年三月末に発表されるや否や大反響をよび、ナスダックや超高速取引業者は一斉に、本書の内容を否定するコメントを発表、ニューヨークの司法長官は調査を約束するなど、上を下への大騒ぎとなった」という問題作。

名翻訳家、東江一紀氏の遺作ということもあり、これは見逃せません。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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ウォール街で働く人たちは、嘘をつき、真実を隠し、ひとをごまかすことで大金をもらっているようなものなので、金融市場で信頼感が生まれても、そのあと必ず延々と疑念が続くということになる。投資家が警戒心を緩めて、ブラッドを信頼したのは、彼が何かを持っていたためだ

ブラッドは修道僧ではないが、多額の金を稼ぐ必要性をまったく感じていなかった。ところが不思議なことに、新しい証券取引所でどのくらい稼げそうか強調すると、投資家候補らは好意的になることに気づいた

ものごとがうまくいかない原因は、ドンの考え方によると、意外でもなければ複雑でもなかった。それは人間の本性と、インセンティブの力に関係があるという

食い物にされない証券取引所を構築する最も簡単な方法は、食い物にする腕がある連中を雇い入れて、取引所の構築に全力を尽くしてもらうことだった

ブラッドはこう言う。「ぼくはただ彼らが、ここでうまくやっていけないタイプか、確かめるようにしていた。そういう連中はだいたい、自分の経験について語るときや話題なんかが、すごく自己中心的だからわかるんです。『自分の功績は十分に認められていない』とか『わたしは蔑ろにされている』とか、自分に関することばかり。そういう人は肩書や本来重要ではないことにこだわりすぎる(略)」

たとえば二〇一三年四月、グーグルの株価は一秒の四分の三で七九六ドルから七七五ドルに値下がりし、続く一秒で七九三ドルに反発した。五月には、公共事業部門がミニ・フラッシュ・クラッシュに見舞われ、数秒で五〇パーセント以上も値を下げると、その後に元の価格まで戻した。個々の銘柄でのこうしたミニ・フラッシュ・クラッシュは、多くが気づかれない、あるいは気にされないというだけで、今では日常的に起こっている

ナスダックは超高速取引業者が使うクールな新技術に膨大な資金をつぎ込み、取引のスピードを上げる一方で、一般投資家が使う市場については、基本の配管にさえほとんど資金を投入していなかった

市場の仕組みを伝えるのが、実はいいアイディアだと思う人は本当にいないのでしょうか?

超高速取引には、勝者がすべてを手に入れるという面がある。いちばん迅速な捕食者がいちばん大きな獲物を持ち帰るのだ

かつてないほどスピードが増す金融市場において、ウォール街の大手投資銀行の強みは、実は一つしかなかった。自分たちの顧客の株式市場での最初の一撃だ。顧客が自行のダークプールにとどまっていれば、その暗闇の中で、顧客を食い物にして利益を得ることができた

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『フラッシュ・ボーイズ』マイケル・ルイス・著 文藝春秋
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◆目次◆

序 章 幻想のウォール街
第1章 時は金なり
第2章 取引画面の蜃気楼
第3章 捕食者の手口
第4章 捕食者の足跡を追う
第5章 ゴールドマン・サックスは何を恐れたか?
第6章 新しい取引所をつくる
第7章 市場の未来をかいま見る
第8章 セルゲイはなぜコードを持ち出したか?
終 章 光より速く

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