2014年9月21日

『リスクを取らないリスク』堀古英司・著 vol.3715

【何もしないことのリスクとは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844373757

本日の一冊は、ニューヨークに拠点を置く投資顧問会社、ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC最高運用責任者の堀古英司氏が書いた、これからのお金、キャリア、老後のリスク対策に関する本。

本書で提示しているのは、極めてまっとうな「金融的に考える」技術であり、そこからわれわれが「リスクを取らない」ことによるリスクやコストが見えてきます。

たとえば、サラリーマンの賃金に関して、著者はこのようなコメントを述べています。

<会社はリスクだらけの中で従業員に雇用を保証しているのですから、保険と同様、従業員は何らかの形で保険料を支払っているのと同様の状態と考えなければなりません。この場合、従業員はどのような形で保険料を支払っているのでしょうか。それは本来得られるべきよりも低いリターン、すなわち賃金で我慢している、という状態になっているのです>

要するに、リスクを取らないことにはコストがかかる、あるいはリスクがある、ということを伝えたいわけなのですが、本書では今後、日本において想定されるリスクについて述べ、最後に「リスクを取らないリスク」対策を示しています。

想定されるリスクに関しては、「日本の更なる資本主義化」「広がる格差」「円安」「年金カット」などが挙げられていますが、本書では、その対策として株式投資、なかでも米国株投資を勧めています。

著者が運用するファンドの宣伝もあり、必ずしも中立的な見方とは思いませんが、人口が減少する国における不動産投資への懸念などは、おっしゃる通りだと思います。

自己啓発書のような見た目とは異なり、中身はまっとうな金融、経済に関する論考で、軽い読み物を期待すると、ちょっと骨が折れるかもしれません。

今後の日本経済において、個人がキャリアをどう考えるか、どうリスクを取って投資するかの良いヒントとなる一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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リスクを回避して株式投資しなかった人は確かに資産の増減はなかったかもしれませんが、「アベノミクス長者」に比べて、相対的には資産が小さくなっているのです。これが「リスクを取らないリスク」です

テレビの生放送に出てきたAXAの会長はこう断言しました。「アメリカの皆さん、安心して下さい。AXAは全ての保険金の支払いをお約束します。私たちは皆さんとともにいます」

能力にかかわらず、その人なりに昨日まではここまで頑張ったけど、今日はもう少しここまで頑張ろう、という限界的な努力が経済成長につながっていきます。逆に世の中の多くの人が、今日はもういいや、と思うようになってしまったら経済は成長しなくなってしまいます

人間は本来「弱いもの」「リスクを回避したがるもの」ですから、力を発揮させるには資本主義が必要だったのです

最も重要な勘案材料は何かというと、それは皆さんの競争相手と比べてその給料が妥当かどうかということ

ハイテク革命やグローバル化の波に上手く乗った者や、高度な技術を持った付加価値の高い労働力、そして革新をファイナンスする資本家は相対的に希少価値化し、需給が歪んで高収入を得るようになり、次第に所得格差が広がっていきました

日本の今後20ー30年考えた場合、かなり高い確率で格差が拡大していく国になると予想することができます

かなり長い間、日本の金利は上昇しない状況が続くと私は見ています。最も大きな理由は先進国間で最悪の財政赤字です

人口が減少していく日本では、長期的に見て不動産が魅力ある投資対象であると私には思えません

「リスクを取らないリスク」対策にはアメリカの株式への投資が最も適している

アメリカはカナダと並んで、先進国の中では今後最も人口が増える国になると予想されています

しんどいこと、他人がやりたがらないこと、できないことを選んだ方が勝率は高くなるはず

限界点を上げるもうひとつの方法は、自分を逆境に追い込む、又は逆境にいると想定することです。経済学で「資源の呪い」という現象があります。これは様々な論文によって指摘されていますが、要するに、資源に恵まれた国の経済成長率は、そうでない国の成長率を下回る傾向があるというものです

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『リスクを取らないリスク』堀古英司・著 クロスメディア・パブリッシング
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◆目次◆

第1章 リスクに関する3つのルール
第2章 リスクの担い手がいないとどうなるか
第3章 「リスクを取らないリスク」の例 日本の金融政策
第4章 想定されるリスク 日本の更なる資本主義化
第5章 想定されるリスク 広がる格差
第6章 想定されるリスク 進む円安
第7章 想定されるリスク 年金カット
第8章 リスクを取る前に
第9章 お金でできる「リスクを取らないリスク」対策
第10章 お金でできない「リスクを取らないリスク」対策
終 章 実行

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