2014年3月5日

『値上げの技術』 辻井啓作・著 vol.3515

【消費税増税!しっかり値上げする技術とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484142058

インフレ+増税の時代は、サラリーマンより経営者が圧倒的に有利。

ただし、それは「インフレ+増税分を価格に転嫁できた場合」に限ります。

もしこのタイミングで値上げに失敗したら、売上減少あるいはコスト高による収益の悪化が襲ってきます。経営者とて安泰ではありません。

そこで本日ご紹介するのは、この大事な時期に、値上げを成功させるためのとっておきのマニュアル。

その名も『小さな会社・お店のための 値上げの技術』です。

今回の消費税増税に関して、おそらくほとんどの経営者は8%の税金をそのまま乗せるか、自分が辛抱して増税分を吸収しようとするはず。

本書の著者が提案するのは、そういった対処療法的な値上げではなく、顧客満足を前提とした、戦略的かつ大胆な「値上げ」です。

本書の冒頭には、老舗のラムネ飲料メーカーが、マーケティングのプロのアドバイスに基づいてパッケージを一新し(昔のレトロなデザインに戻した)、かつ100円だったラムネを150円にしたエピソードが載っていますが、このエピソードが、値上げの本質を語っています。

このマーケティングのプロ・S氏は、老舗のU専務に、こんな質問をしたのです。

「U専務さん、今、美味しいからラムネを飲む人って日本に何人いると思いますか?」

この答えは、「ひとりもいない」が正解。驚くU専務に、S氏はこう言うのです。

「日本中のラムネを飲んでいる人はみんな、美味しいからじゃなくて、『懐かしいから』飲むのです。見たところ、U社さんのラムネはあまり懐かしくない感じですね」

この老舗のU社は結局、パッケージを昔のレトロかつ簡素なものに変え(原価が下がった)、かつ売価を150円にしたわけですが、これが当たった。

従来の卸先のバイヤーは、値引きしないで売れるわけがない、と冷ややかな反応でしたが、他の小売店は「それ、面白いんじゃない」と好反応で、結果、U社は「ALWAYS 三丁目の夕日」などの昭和ブーム、全国的に広まりつつあった「地サイダー」ブームに乗り、大成功するのです。

あくまでお客様の満足から考えて、より良い提案、素材、パッケージを考え、その上で大胆な値上げをする。

本書には、そのための方法論と注意点が書かれています。

プライシングの詳細は、『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』などの専門書を紐解くべきですが、経営者ならこの一冊からたくさんのヒントを得るはずです。

※参考:『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4791765281

読者の扱う商品が大量生産品であっても、きっと値上げのヒントが得られるはず。

増税前に、「いますぐ」読みたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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最初にコスト管理ありきではなく、まず「どんな商品ならお客さんが喜ぶか」を考え、それを実現することを優先して考える

売り上げが上がれば利益も増えると考えがちですが、実際には、安売りによる低い利益率で売り上げを伸ばすと、新規出店の経費や増やした社員の人件費などの経費でコストが増え、利益が減ってしまうのです。さらに、新規出店のために借り入れを増やしていますから、リスクが増えており、店舗を拡大している間は業績がよく見えても、少し立ち止まったり、成長のスピードを落とすと経営が悪化、何らかの事情で売り上げが少しでも落ちると行き詰まるという状況になっているのです

値下げをすることは、普段、正価で買ってくれるお客さんから得た利益を使って、正価では買わない人を優遇することです

値上げをしないと、商品の良さが伝わらない

「◯◯の要因による仕入価格の高騰により、まことに申し訳ありませんが、以下のように料金を改定させていただきます」というように、具体的に理由を説明して、ひと言お詫びをしつつ値上げします

どのような値段がついていようとも、値段以上の価値を感じる人は買い、値段以下の価値しか感じない人は買わないということです。つまり、人はついている値段より安い、と思うものだけ買う

人は商品そのものだけでなく、商品を取り巻く環境にも価値を感じます。同じ商品でも「あの人から買うほうが安心」や「あの店で買うことにステイタスがある」というように、どこから買うかとか、どのような保証やアフターサービスがあるかというようなことも商品の価値に含めて考えます

作る側、売る側は、やみくもに努力しても価値を高めることはできないので、「どの部分の価値を高めるか」を意識することが必要

◆値段がわからない商品・サービス
・購買経験がない商品
・これまでに売っているのを見たことがない商品
・類似のものから価値を推測することができない商品

値段が知られていないものを売る商店は強い

価値を増幅して「値段がわからない」商品にする

多くの人に売れる値段で売ると利益が少なくなる(中略)高い値段で買ってくれる人だけが買う値段をつけるのが、利益につながる方法

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『値上げの技術』辻井啓作・著 阪急コミュニケーションズ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/ 4484142058

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◆目次◆

はじめに 中小企業が幸せになるには
第1章 どうして値上げが必要か
第2章 値下げの麻薬にはまっていませんか
第3章 人はなぜ値上げに抵抗があるのか
第4章 値段のメカニズムを知る
第5章 中小企業が実践できる値上げの技術
第6章 値上げのための心構え
おわりに 値上げで一番大切なこと

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