2014年2月9日

『仕事に生かす孫子』 越智直正・著 vol.3491

【「靴下屋」のタビオ会長が『孫子」から学んだこと】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4800910285

本日の一冊は、中卒から一代で日本一の「靴下屋」を築き上げた男、タビオ代表取締役会長の越智直正さんによる一冊。

氏は、中学を卒業して単身上阪することになった際、恩師から中国古典を読むよう指示され、『孫子」を読み始めたようですが、その教えが随分と経営の役に立ったようです。

本書は、そんな越智会長が、『孫子」を解説し、そこから学んだ経営の要諦を紹介した一冊。

『孫子」で、戦争に勝つための基本条件とされている5つ、すなわち「道」「天」「地」「将」「法」に即して氏が考えることをまとめており、指導者の立場にある方なら、きっと心に響くものがあるはずです。

まずは『孫子」のおさらいも兼ねて、五つの基本条件について書かれた部分を引用してみましょう。

<戦争に勝つためには、五つの基本条件がある。すなわち「道」「天」「地」「将」「法」である。「道」とは、民衆と為政者の意思を一致させるものである。これがあってこそ、民衆は危険を恐れず、君主と生死を共にするのだ。「天」とは、天候、季節、時期などの時間的条件を指す。「地」とは、距離、険しさ、広さ、高さなどの地理的条件を指す。「将」とは、智謀、信義、仁愛、威厳、勇気など、将が備えるべき徳性のことである。「法」とは、規律、軍隊の編成、装備が整っているかである>

では、氏はこの教えに従い、どんなことをしたのか。

「地」について書かれた部分をご紹介しましょう。

<当社が創業した一九六〇年代後半、大阪の問屋業の中心地といえば梅田や本町界隈でした。だがその時代に、当社が創業の場所に定めたのは、そんな中心地から一時間以上も離れた、大阪の南の外れの東住吉区、現在の平野区にあった文化住宅でした。手元資金に事欠いていたことは確かです。ですがそこを選んだのには、もっと前向きな理由がありました。私たちが、物作りに自信を持っていたことです。だからこそ、当時「靴下のメッカ」と呼ばれていた大阪の住所と電話番号が使え、かつわが国最大の靴下産地である奈良に近い場所であることが、何より重要だと考えたのです>

タビオは、結局この立地が物を言い、迅速な補充で競合店を駆逐することに成功しました。

本書では、このように実際の経営と『孫子」のエッセンスが解説されており、ビジネスマンの教養として、有用な一冊です。

中国古典に親しむきっかけとして、ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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戦争に勝つためには、五つの基本条件がある。すなわち「道」「天」「地」「将」「法」である。「道」とは、民衆と為政者の意思を一致させるものである。これがあってこそ、民衆は危険を恐れず、君主と生死を共にするのだ。「天」とは、天候、季節、時期などの時間的条件を指す。「地」とは、距離、険しさ、広さ、高さなどの地理的条件を指す。「将」とは、智謀、信義、仁愛、威厳、勇気など、将が備えるべき徳性のことである。「法」とは、規律、軍隊の編成、装備が整っているかである

債権回収という点から言えば、本当に大切なのは、予め掴んだ経営不振の徴候を元に交渉することで、不渡りが出てしまってからではもう遅いのです。ですから、実際にそうなってから強行な取立てをするとか、債権者会議で罵倒するとかは、実は立ち遅れている阿呆のすることなのです

『隋書」独孤皇后伝に、「騎虎千里を走る」という有名な話があります。混乱する中国を統一し、隋の国を開いた文帝楊堅は、天下統一の作業が終盤を迎えたころ、妻の独孤伽羅に宛てて、戦場を駆け巡り一段落したが、疲れたので一度お前の元に帰って一休みしたいという旨の手紙を認めました。すると、妻・伽羅からの返事には、こうあったそうです。「あなたは今、虎の背に乗って走っているのです。もし途中で降りれば、たちまちその虎に食い殺されますよ」

当社が創業した一九六〇年代後半、大阪の問屋業の中心地といえば梅田や本町界隈でした。だがその時代に、当社が創業の場所に定めたのは、そんな中心地から一時間以上も離れた、大阪の南の外れの東住吉区、現在の平野区にあった文化住宅でした。手元資金に事欠いていたことは確かです。ですがそこを選んだのには、もっと前向きな理由がありました。私たちが、物作りに自信を持っていたことです。だからこそ、当時「靴下のメッカ」と呼ばれていた大阪の住所と電話番号が使え、かつわが国最大の靴下産地である奈良に近い場所であることが、何より重要だと考えたのです

五事の中でお金を必要とするのは、唯一、ここで言われる「主用(装備)」だけです

短期決戦に出て成功した例はあっても、戦いを長引かせて成功した例はない。戦いが長期化しては国に何の利益もない

兵力に応じた戦い方をせよ。弱小でありながら強気一点張りでは、大敵の餌食になる

およそ一国の君主たる者は、怒りによって戦争をしてはならない

戦争という大事業をするのに、わずかな費用を惜しんで調査を怠る者は、人の上に立つ資格がない

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『仕事に生かす孫子』越智直正・著 致知出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4800910285

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◆目次◆

序 章 『孫子』について
第1章 実戦・始計篇(上)
第2章 実戦・始計篇(中)
第3章 実戦・始計篇(下)
第4章 その他十二篇の名言と教え

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