2013年12月13日

『デザインの骨格』 山中俊治・著 vol.3433

【プロダクトデザインの発想法】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482226470X

本日の一冊は、Suicaの自動改札機をはじめ、自動車、鉄道車両、腕時計、椅子など、さまざまな製品のデザインを手掛けてきた山中俊治さんが、プロダクトデザインの発想法を紹介した一冊。

社会科学においては、1.体験(実験)、2.人に聞く、3.読書が主なインプットの手段だと思いますが、著者は、自然から多くを学んでいるようです。

いくつか、言葉をピックアップしてみましょう。

<雨はあんなに高いところから落ちてくるのにあまり痛くない>
<螺旋が単調な成長の典型であるのに対し、節は複雑化の典型>
<濃度の違う液体が引き起こす複雑な拡散現象は、実は自然界にも広く見られる現象>

著者はこうした「観察」「疑問」からアイデアを得て、結果として優れた製品をいくつも生み出しています。

その代表作がSuicaの自動改札機なのですが、じつはあの改札機のアンテナ面の角度は、13.5度傾いています。

この絶妙な角度のおかげで、かつてテスト段階で5割近かった読み取りのエラー率が1%以下に下がり、「読み取り率」が劇的に向上したそうです。

以前、『発想する会社』の著者、トム・ケリーさんにインタビューした際、「優れたプロダクトデザインの肝は観察だ」という趣旨のお話を伺いましたが、まさに本書は、その「観察」の実践が学べる本です。

※参考:『発想する会社』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/415208426X

もともとブログだったものをまとめているので読みやすく、また著者の日常生活や仕事を通じて、プロダクトデザインの発想法を学べる内容となっています。

作品のカラー写真も載っているので、目でも楽しみながら学べる一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人々が当たり前と思って見過ごしてしまうことに意味を求め、誰もがそう信じていることを確かめずにはいられない。それは私のデザインの源泉でもあります

複数のボタンを機能させるためには、必ずある種の決めごとが必要になります。その決めごとは文字や記号で表示されることになり、それを理解しない限り、そのキーを使うことはできません。アップルはそういう言語的な決めごとを嫌ったのでしょう

私たちは想像以上に、車のエンジン音で身を守っている

新たな警告音を作ることには賛成できません。街は様々な警告音であふれているので、クラクションのような大音量でない限り、人はそれを黙殺します(中略)一方、人間は、聞き慣れた音の変化には意外なほど敏感です

空気の抵抗の大きさは速度に比例する。高いところから物が落ちると重力に引っ張られて段々速くなっていく。それに応じて空気抵抗も大きくなる。重力は一定なので、増大する空気抵抗はやがて重力と同じ大きさになる。そうなると、その落下物はそれ以上加速されず、それ以後は空気抵抗と重力が釣り合ったまま一定の速度で落ちていく。目から鱗でした。雨が痛くない理由も、綿ぼこりがふんわり落ちる理由も同じだったのです。大きさの割に重い石の場合は、かなり速くならないと空気抵抗と重さが同じにならないから、当たると痛い。アリが高いところから落ちてもケガしないのは、アリの体重と空気抵抗がすぐにバランスしてしまうから

手応えをデザインするときには、この「ビヨン」と「しっとり」をうまく組み合わせることが重要です

3体のロボットを作りながら探求してきたものは、生き物の仕組みですらありません。人がどんなものを生きていると認識するか、つまり私たち人間にとっての「生き物っぽさ」の抽出です。そこで目指すものは寺田寅彦の言う「漫画」と同じように、「実物と似ない点において正に実物自身よりも実物に似る」というものなのです

フューチャリストと言われたシド・ミードは、こういったそうです。
「私は未来予想図を描いているのではない。現代の人々が望む未来を見せているのだ」

未来の人工物はもっと表情豊かな質感を持つことになるはず

感覚を射抜くことばを見つけよ。そうすれば、掴みかかっていることが確かなものになる

アイデアは二律背反を疑うところから始まる

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『デザインの骨格』山中俊治・著 日経BP社  
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/ 482226470X

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◆目次◆

第1章 アップルのデザインを解剖する
第2章 デザインを科学する
第3章 コンセプトを形にする
第4章 スケッチから始める
第5章 モノ作りの現場から考える
第6章 人と出会う
第7章 骨を知る
第8章 人体の秘密を探る
第9章 漫画を描く、漫画を読む
巻末付録

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