2013年11月22日

『熔ける 大王製紙前会長井川意高の懺悔録』 井川意高・著 vol.3412

【在庫切れ続出の話題作。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4575306029

本日の一冊は、現在、在庫切れ続出の話題作。

大王製紙前会長、井川意高氏の懺悔録、その名も『熔ける』です。

1200坪の屋敷で少年時代を過ごし、麻布中学校と筑駒に合格。東大卒業後は、20代で赤字子会社を立て直し、42歳で社長就任…。

順風満帆の人生を送っていたはずの氏が、なぜカジノで106億8000万円もの大金を失い、転落したのか…。

本書には、その詳細が書かれています。

創業家に生まれた人間ならではの風景や、ギャンブルにハマった人しかわからない心理、そして有名人との華麗なる交遊…。

庶民には決して知ることのできない世界が描かれ、じつに興味深い内容です。

著者が父や祖父から聞いたというビジネスの教訓も書かれており、ビジネス書として読んでも貴重な示唆が得られるでしょう。

事件のイメージとは裏腹に、厳格な父親に育てられ、倹約意識の高い著者。そんな著者を陥れたものは一体何なのか。

負けを取り戻そうとする心理、勝つことの誘惑もそうですが、読んでいて、金持ちを食い物にするいわゆる「富裕層ビジネス」にも問題があると感じました。

著者は、富裕層が集うシンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」のカジノ、マカオの「ウィン・マカオ」で多額の損失を負ったようですが、これらのカジノでは、VIP向けにさまざまな優遇がなされていたようです。

ホテルのスイートルーム、ビジネスクラスでの移動が無料など、至れり尽くせりのサービスですが、その目的は、カジノ近くに部屋を取って、24時間カジノ漬けにことにあるようです。

また、有名人を襲うメディアの暴力についても書かれており、なかでもノンフィクション作家・佐野眞一氏については、「デタラメな報道」と猛烈なバッシングをしています。

会社に多大な損失を負わせ、関係者に迷惑をかけたことは明らかですが、富裕層を取り巻く異常な状態にもその原因があったのかも、と思わずにはいられませんでした。

また、どんなに忙しくても礼を尽くしたタレントのほしのあき氏や、東京拘置所に差し入れをしてくれた堀江貴文氏のエピソードも紹介されており、興味深い手記となっています。

みなさんがビジネスで成功すれば、いずれ待っている世界。

そこを垣間見る意味でも、ぜひ読んでみてください。

—————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
—————————————————

通算で100回以上カジノへ通い詰める中、億単位の勝利を収めた成功体験は忘れがたい快哉をもたらした

シンガポールの「マリーナ・ベイ・サンズ」では1ゲームに最大で50万シンガポールドル(約3900万円)を賭けることができた

「負けが一定額になった段階でカジノをあとにする」
「勝ちが一定額になった段階で勝ち逃げする」
「借金をしてまで勝負しない」
これらのルールを厳格に守っていさえすれば、106億8000万円もの大金をカジノに突っ込むなどという馬鹿げた行動は取らなかったはずだ。だが、ギャンブラーはそんな常識人のような発想はしない

父は倹約家だったため、小学生の息子にホイホイ何でも買い与えてやるような甘やかした教育はしなかった。私は釣りがとても好きだったため、「釣竿を買ってほしい」と頼んだことがある。すると「それは誕生日のプレゼントに買ってやるから待ちなさい」と言われ、すぐには買ってもらえなかった。いくら裕福な家庭だからといって、ほしいものをその場で買い与えてくれるほど父は甘くはなかった

「引っ掛かり(=売り掛けの焦げつき)は許さんぞ。営業の仕事は、請求額を1円残らず回収して初めて完結するのだ」常日ごろ、父からは口を酸っぱくしてこう言われていた。たとえ数万円、10万円程度の請求額を取りっぱぐれたとしても、厳しい社内処分が待っていたのだ

ビジネスにおいては、必ず数字を重視しなければならない。定量的な目標、時間軸としての期限を定めなければ、ビジネスとして結果を出せたかどうかが曖昧になってしまう。「5W1H」から一歩進んで「5W2H」を意識することによって、会議は実のあるものへと変質していくと私は考えていた

いの一番に東京拘置所に差し入れをしてくれたのは、ほかならぬホリエモンだ。東京拘置所の床は硬いため、長時間座っているとお尻が痛くなってしまう。しかも、私が収監されたのは冬の寒い時期だ。東京拘置所での長期勾留経験者である堀江氏は、誰よりも真っ先に分厚い座布団を差し入れしてくれた

観光客を目当てにしていては、カジノの収益はさして上がらない。ではどこでカネ儲けをしているのか。それは、VIPルームに上客を呼びこみ、高待遇をしながらどんどんカネを投入させるのだ

大王製紙創業者の祖父・伊勢吉は、一度会社を倒産させて苦労した。かつて祖父がよく語っていた言葉がある。「10人の味方をつくるよりも1人の敵をつくるな」

————————————————

『熔ける 大王製紙前会長井川意高の懺悔録』井川意高・著 双葉社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4575306029

————————————————-

◆目次◆

序章 灼熱
第一章 極限
第二章 追憶
第三章 邁進
第四章 君臨
第五章 疼き
第六章 放熱
第七章 熔解
第八章 灰燼
終章 下獄

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー