2013年10月6日

『データ分析ってこうやるんだ!実況講義』吉本佳生・著 Vol.3365

【ビジネスマンのたしなみ。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478026173

本日の一冊は、『金融広告を読め』『スタバではグランデを買え!』などのベストセラーを持つ吉本佳生さんが、データ分析の具体的手法、騙されないための読み方を指南した一冊。

※参考:『金融広告を読め』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334033067

※参考:『スタバではグランデを買え!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478002290

最近は、にわかに「ビッグデータ」ブームが広がりつつありますが、本書では、日本におけるビッグデータブームのお粗末さや、公開されている統計の問題点を指摘し、ビジネスに活かせる正しいデータの読み方を説明しています。

高校・大学時代に「確率・統計」「社会調査法」をきちんと学ばなかった方は、ぜひこの機会に学んでみてはいかがでしょうか。

本書の前半部分には、企業がデータを活用している例として、携帯電話会社の例が載っています。

以下、長くなりますが、引用してみましょう。

<以前から顧客の消費行動についてのデータをうまく活用している企業の代表格が、携帯電話会社です。近年は「学生のいる家族」に丸ごと契約してもらおうとして、料金制度のうえで大幅に優遇し、春先などに大量のCMを流しています。これがデータに裏づけられた戦略であることは、日本政府(総務省)が調査・公表している経済統計からわかります(中略)携帯電話・PHS使用料は、中学・高校・大学・専修学校生がいると、世帯員1人当たりでみて相当に高くなることがわかります。在学者のいない世帯と比べて、中学生がいる世帯は約2割高く、高校生がいる世帯は約5割高い。大学・専修学校生のいる世帯は6割以上高い支出となっています>

ほかにも、パソコンは値下げが止まらないのに、プリンタは比較的値下げが厳しくない理由など、ビジネスに役立つ事例が多く、ビジネスを学びながら、データ分析を身につけることができます。

本書で指摘されている、データを読む際の注意点から、一部をご紹介しましょう。

<なんらかのデータについて深く読み解きたいと思ったら、まずは広い範囲で基本データをざっとながめておくべき>

<グラフでなく、まずは表で分析する。それが基本>

<データに強くなりたいなら、対数目盛のグラフ用紙の使い方を覚えるべき>

「失業率」や「就職内定率」「消費者物価指数」「ジニ係数」など、公表されているデータの実際に迫りつつ、データの深い読み方を教えてくれる。

ワンランク上のビジネスマンになるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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インターネット調査は高齢者を軽視する

統計学の威力を適切に利用したいなら、やってはいけない注意事項がいくつもありますが、そのなかでもとりわけ大切なのは「サンプルデータの偏りを避ける」こと

ビジネスの参考にしたいなら、データはできるだけ自分たちで集めるべきで、他の誰かが調べたデータを使うときには、それが使えるデータかどうかを慎重にチェックしなければダメ

時間に応じた推移を示すグラフを作成しようとすると、悩ましいのがつぎの3点です。
(1)どれだけの長さの期間をみるか
(2)期間区切りを「月」「四半期」「年」のどれにするか
(3)どの時点の値を基準にした指数でみるか
これらを安易に決めてはダメで、まずは、自分でなにかの理由をつけて決めればいいのですが、そのあとずっと、(1)・(2)・(3)を変更したほうがいいかもしれないと意識し続けることが大切

指数化されたデータのグラフをみるときについ忘れてしまいがちなのが、別系列のグラフとの上下関係にはまったく意味がないという点

じつは『平成24年版経済財政白書』が、国民の物価予想は「頻繁に購入」と「月に1回程度購入」のモノやサービスから影響を受けやすいと指摘しています。とりわけ、前者の「頻繁に購入」するモノやサービスの現実の物価上昇率の影響は大きく、物価上昇率の予想値との相関係数はプラス0.75とのことでした

リーマン・ショックがあった2008年度以降は、卒業直前の2カ月でやっと就職先をみつける学生が多くなっていて、その2カ月のあいだに就活をあきらめてしまう学生も多い。そうして、卒業直前に就職(内定)率が13ポイント程度跳ね上がることで、結果としての就職率は90%を超えている。しかし、この数字から「大学卒業者のうちで就職を希望した者の、9割以上が就職できた」と考えるのは正しくないことがわかります

もし、テレビの価格が1年のあいだに半値に下がってしまえば、全体の1%部分で50%の下落ですから、消費者物価を年率で0.5%下げる要因になります。全体的にみて異常なほど安定している、いまの日本の消費者物価指数では、年0.5%の下落でも大き
な変化だといえます。6.6%のウエイトを占める耐久消費財が年10%値下がりすれば、消費者物価を年0.66%下げます

メーカー側の価格戦略における、パソコンとプリンタのいちばんのちがいは、年賀状印刷イベントという明確な値上げタイミングがあるかどうかです。そして、多機能なパソコンではそうしたイベントが絞り込みにくい。そのうえ、上位2社のシェアを合わせても50%に達していないので、ライバル同士が一斉に価格を戻すのはむずかしい

日本の株式市場では2000年代半ばに大きな構造変化があり、各業種の株価指数とTOPIXの相関性(連動性)が、質的にも量的にも変わりました。質的には、マイナスの相関係数をもつ業種が消えたことが大きな変化です。量的には、同じプラスの相関係数でも、大半がプラス0.9以上になったことが大きな変化です

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『データ分析ってこうやるんだ!実況講義』吉本佳生・著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478026173

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◆目次◆

はじめに ケータイ会社が学生のいる家族を優遇するのはなぜか?
第1講 テレビと旅行に関するインターネット調査が役立たず
    なのはなぜか? ビッグデータ&統計学ブームの危険性
第2講 米よりパンのほうがインフレ予想に影響が大きいのはなぜか?
    折線グラフを読むときの基本
第3講 高学歴のほうが若者の失業率は高いのか?
    細かく分けたデータをみるべきとき、みてはいけないとき
第4講 就職難なのに、大学生の就職率が90%超と高いのはなぜか?
    錯覚を起こしやすいグラフより表分析を優先
第5講 多機能な家電のほうが値下がりしやすいのはなぜか?
    複数のデータから共通性をみつけるコツ
第6講 分散投資のために特定業種の株を買うべきなのはなぜか?
    相関係数の意味と活用法
第7講 日本の格差は本当に拡大しているのか?
    凝った計算で求めた統計データの疑い方
第8講 若者の免許離れは本当に起きているのか?
    ミクロとマクロのデータを組み合わせた分析
おわりに 数字でコミュニケーションを!

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