2013年9月9日

『稼ぐ力「仕事がなくなる」時代の新しい働き方』大前研一・著 vol.3338

【大前研一が提案する新しい働き方】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093798478

企業の業績が良くなっても、雇用が増えるわけではない。そんな状況下で、ビジネスパーソンは次の時代の働き方を模索しているわけですが、そんな折、大前研一さんが、待望のキャリア論を出版してくれました。

元マッキンゼーの日本支社長で、海外通。そんな大前さんが説く、グローバル時代のキャリア論とは何か。じつに興味深い一冊です。

本書のなかで著者は、花王とP&G、味の素とネスレの業績を比較し、こんなことを述べています。

<トイレタリー業界で、日本国内トップのエクセレントカンパニーの花王と世界一のアメリカのP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)を比べると、売上高は1兆2000億円と6兆9000億円、営業利益率は8・9%と15・9%だが、時価総額では1兆6000億円と15兆6000億円という10倍もの大差がついている。食品業界でも、日本国内トップの味の素と世界一のスイスのネスレでは、売上高が1兆2000億円と7兆8800億円、営業利益率が6・1%と15・2%だが、時価総額が9000億円と18兆円と20倍以上の開きがある。これほどの差がどこでついているかと言えば「海外」だ。海外売上高比率が花王は27%、味の素は33%にすぎないが、P&Gは61%、ネスレは71%を占めている>

著者は、日本企業が欧米に後れをとる原因を「組織」「採用」「人事」に求めていますが、働き手の立場から見れば、これはP&G、ネスレ並みのグローバル人材にならなければいけない、ということだと思います。

本書には、著者が考えるこれからのグローバルリーダーの条件が示されており、この3つは、読者がこれからのキャリアを考える上で、参考になると思います。

◆これからのグローバルリーダーの条件
1.海外勤務経験
2.「Two extreme(両極端)」──将来有望な事業か、撤退・整理が容易でない不採算事業──のどちらかを任せ、その結果から判断するというやり方
3.強いリーダーシップによって「新しい方向・価値観」を示せる人物かという点

また、サラリーマンの会社人生を3つに分けた「会社人生3分割計画」も、キャリアのステップを考える上で参考になるでしょう。

◆会社人生3分割計画
第1フェーズ(入社~30代前半)
 命じられた仕事を覚え、実務を鍛える「能力向上&受命・拝命期」
第2フェーズ(30代前半~50歳まで)
 中間管理職として、身についた実務を生かす「実力発揮期」
第3フェーズ(50歳前後~60代半ば)
 最後に自分のやりたい仕事をやる「成熟期」

名立たる日本の有名経営者の実名を挙げ、その施策にダメ出しをする辛口の論評は、読んでいて痛快。

<次のIT業界の主戦場はスマホでもタブレット端末でもなく、「リビングルーム」である>とする意見も、参考になりました。
※ただし、リビングルームの定義は「自宅の居間」ではなく、「その人がいる場所(room in which he is living)」

もともとは、「週刊ポスト」の連載に、「SAPIO」掲載記事と書下ろしを混ぜてまとめたもののようですが、キャリアやビジネスのヒントがたくさん詰まっています。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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与えられた仕事を与えられた通りにやっているだけの人には“名札”がつかないからだ。“名札”がつかなければ、当然“値札”もつけられない

◆第3フェーズに必要な三つの役割
「全く新しい事業を立ち上げる」(スタート・ニュー)
「ダメな事業を立て直す」(ターン・アラウンド)
「うまくいっている会社の中核事業をさらに伸ばす」(ドゥ・モア・ベター)

◆会社人生3分割計画
第1フェーズ(入社~30代前半)
 命じられた仕事を覚え、実務を鍛える「能力向上&受命・拝命期」
第2フェーズ(30代前半~50歳まで)
 中間管理職として、身についた実務を生かす「実力発揮期」
第3フェーズ(50歳前後~60代半ば)
 最後に自分のやりたい仕事をやる「成熟期」

重要なのは、自分の「勝負期」と「勝負スキル」を決めること

次のIT業界の主戦場はスマホでもタブレット端末でもなく、「リビングルーム」である(中略)ただし、リビングルームの定義は「自宅の居間」ではなく、「その人がいる場所(room in which he is living)」に変わった

◆これからの後継者選び、三つの重要な評価基準
1.海外勤務経験
2.「Two extreme(両極端)」──将来有望な事業か、撤退・整理が容易でない不採算事業──のどちらかを任せ、その結果から判断するというやり方
3.強いリーダーシップによって「新しい方向・価値観」を示せる人物かという点

いま親や学校がやるべきは、ドイツのように子供たちを彷徨わせ、「人生を考える旅」をさせることだ

この国をダメにした「偏差値」を廃止せよ

「稼ぐ力」とは、すなわち、余人をもって代えがたいスキルと意欲のある人が持っている力である。出発点は、アンビションであり、目線の高さだ。次に、それを裏付ける“筋トレ(=基礎の勉強)”と、頭の訓練だ

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『稼ぐ力「仕事がなくなる」時代の新しい働き方』大前研一・著 小学館
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093798478

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◆目次◆

まえがき 一人一人の「稼ぐ力」が問われている
第1章 <現状認識Part1> 日本企業は今、何に苦しんでいるのか
第2章 <現状認識Part2> これからの日本企業に必要な人材とは
第3章 <新しい働き方研究> 世代別「稼ぐ力」をどう鍛えるか
第4章 <企業経営分析> 産業“突然死”に備えるケース・スタディ
第5章 <人材教育> 求む!日本と日本企業を強くする新世代人
あとがき この国をダメにした「偏差値」を廃止せよ
[特別英語講座]大前流プラクティカル・イングリッシュ習得法

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