2013年9月29日

『ネンドノカンド 脱力デザイン論』佐藤オオキ・著 vol.3358

【世界的デザイナーの感性を学ぶ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093460892

本日の一冊は、世界的に注目されるデザイナーであり、「Newsweek」誌「世界が尊敬する日本人100人」にも選出された佐藤オオキさん、初の著書。

佐藤オオキさんは、ロッテのガム「ACUO」や、プーマのイベントスペース「Puma House Tokyo」、カップヌードルミュージアムのオープンに合わせてデザインした「cupnoodle urushi」など、さまざまなパッケージ、店舗デザインを担当していますが、本書には、それらの写真と著者によるデザイン解説が加えられています。

子どもの目線と親の目線が同居する親子カフェ「tokyo baby cafe」や、「一見すると壁に扉が整然と並んでいるけど、実は、どれひとつとして扉として機能しない」という「MD.net Clinic AKASAKA」の壁、「機能一辺倒のロッククライミングの壁を、アートフレームやインテリア雑貨で構成」したという、「ILLOIHA OMOTESANDO」の壁、普段はわからないけど、「必要な時に突然現れるくつべら」など。

著者が手掛けたデザインの数々と、その元となったアイデア、着眼点が示されており、じつに参考になります。

<椅子の上に立って見る>
<「お題」である対象物をどう「デフォルメ」するか>
<わざと「ボタンを1つ掛け違える」>

個人的に興味を持ったのは、著者がデザインした、「chocolate pencils」。色鉛筆のトレーの形をしたお皿をデザインし、そこにパティシエに作ってもらったオリジナルチョコレートケーキ、カカオ濃度が異なるチョコレート製の鉛筆数本と鉛筆削り
を載せたものです。

鉛筆の削りカスを主役にしようという試みには、思わず目からウロコが落ちました。

ゆるい雑談を展開しながらも、時折見せる鋭い視点、アイデア発想の原理原則などは、一読に値する内容だと思います。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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ラーメン屋さんに依頼されたら、行列ができるお店にする方法を考える。業界2番手の企業に依頼されたら、何がなんでも1番手に勝つ方法を、1番手に依頼されたら、2番手以下を突き放す方法を、「自分のこと」として考えないといけません

打開策のひとつとして、「椅子の上に立って見る」というのがあります。ものすごく高い位置から俯瞰するわけではなく、デスク上でにらめっこしていた対象物を「ほんの少しだけ」引いて見る感覚です

同じテーブルでも、大人はテーブルの天板の上面を見ます。さらには、そこにのっているものを強く意識します。でも、子供はテーブルの裏面が見えてるのです。テーブルの脚は柱のように見え、テーブル自体が小屋のような感覚になるのかもしれません。それと同じように、子供用の家具を大人が見ると、まるでおもちゃのように見えます。これを糸口にして、インテリアのテーマは「子供目線」と「大人目線」に決まりました。「すごく大きい」ものと、「すごく小さい」ものがある場所

「お題」である対象物をどう「デフォルメ」するか。特徴的な部分はこれでもか、と「強調」して、それ以外の部分は徹底的に「省略」する。鼻が大きい人は画面いっぱいに鼻を大きくして、目や口などは無くてもいいかもしれません。そうすることで、「伝わる」顔になるんです

わざと「ボタンを1つ掛け違える」ことによって、芋づる式に不思議なデザインが次々と発生するのです

デザインにおける「引き算」的な方法論は、時にとても有効です。「花瓶が無いのに花だけが立っている」というような、要素がひとつ消えたにもかかわらず、それを感じさせずに自然体で存在するようなおもしろさ

倍の速度でアイデアを形にできれば、クライアントに対して2倍の選択肢を提示でき、様々な可能性を広げることができます

学生の頃、「自分のモノサシを作れ」と教わった記憶がありますが、持論としてはモノサシが2つないと意味がないと思っています。2つというのは「好きなデザイン」と「正しいデザイン」

まずは自分が色鉛筆のトレーの形をしたお皿をデザインし、それに合わせてオリジナルのチョコレートケーキを(辻口博啓さんに)作っていただきました。そして、カカオの濃度が異なる「チョコレート製の鉛筆」数本と「鉛筆削り」が添えられ、食べる人が自分の好みに合わせてケーキの上にチョコレートを削って楽しめるようにしました。本来は捨てるものでしかない鉛筆の削りカスを一転して主役にしちゃうデザインです

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『ネンドノカンド 脱力デザイン論』佐藤オオキ・著 小学館
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093460892

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◆目次◆

“ゆるさ”から生まれる21世紀デザイン──妖怪だるま
“ひっかかり”アイデアのススメ──peel
継続的デザインの素晴らしさ──shupatto!
打開策は「椅子の上に立って見る」──tokyo baby cafe
似顔絵マスターのデフォルメ術─corona
当方デザイナー、友達募集中──24 ISSEY MIYAKE
職人さんのおかげです──cord‐chair
胃腸が弱いデザイナーの悲劇──virus attacker
ボタンの掛け違い的デザイン──MD.net Clinic AKASAKA
バナナとデザインの鮮度──socket‐deer
ほか

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