2013年4月8日

『JAL再生』引頭麻実・編著 Vol.3184

【JALはこうして再生した。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532318548

本日の一冊は、稲盛和夫名誉会長が率いて大成功を収めた、JAL再生の現場を、大和総研執行役員の著者が取材し、まとめた一冊。

JALの経営幹部、中堅幹部および現場の社員の方々に取材し、さらに稲盛和夫氏のインタビューを掲載したもので、JAL再生の熱気が伝わるレポートとなっています。

更生計画をはるかに上回り、計画では641億円の連結営業利益だったところを、その3倍弱、1243億円の超過利益を達成。

コスト意識が低く、ナショナル・フラッグ・キャリアとしてのプライドが高かったかつてのJALを、どうやって経営破綻後、わずか2年8カ月で再上場させることができたのか。

本書には、そのために稲盛和夫氏が手掛けた「改革」のエッセンスが書かれています。

航空機種数の削減、赤字路線からの撤退、人員削減、100%の減資など、ありとあらゆる手を尽くしたのも事実ですが、カギとなったのは、「フィロソフィー」を軸に置いた、リーダー教育でした。

勉強会への経営幹部全員参加、教育プログラム終了後の飲み会、策定された「JALフィロソフィ」、部門採算制度導入に伴う経営数値の把握…。

幹部が変わった結果、現場の意識も変わり、次々に改革が実行に移されていったというのが実情のようです。

本書には、経営幹部を変えた稲盛氏の言葉も紹介されており、これを読むだけでも、経営者として気が引き締まります。

「数字を踊らせるな」
「動機善なりや、私心なかりしか」
「君の大義は何だ」

経営改善のヒントとして、組織の意識改革のヒントとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「全社員の物心両面の幸福を追求する、が最初に来ています。自分自身、最初は腹に落ちませんでした。やはり、社会への貢献が一番ではないかと思いました。あるとき、稲盛会長に質問しました。『一番目になぜ、全社員の幸福を追求する、が来るのですか』と。稲盛会長は、『高邁な企業理念では社員にはわからんぞ』と答えられました。この会社で働き、幸せになりたいという社員がいて初めて、お客さまへのサービスや企業価値、社会貢献が実現できる(以下省略)」

「数字を踊らせるな」業績報告会で、稲盛会長は、しばしばこうした指摘をする。月次や日次の数値、あるいは一連の経営数値の動きやトレンドには必ず意味がある。異常値があれば、その背景が必ずある。そうした数字の動きに敏感でなければならず、放置していてはいけない。その理由を徹底的に突き止めよ。そして対策を講じよ。この言葉には、そうした意味が込められている

◆現場と経営の距離感を縮めた3つのポイント
1.リーダー教育による意識改革と部門採算制度の導入
2.トップ自らが現場に出向いたこと
3.職種や階層を超えたフィロソフィ教育

物事を判断する際の最もベーシックな価値観とは何か。それは、「人間として何が正しいのか」「正義にもとることなかりしか」「動機善なりや、私心なかりしか」などであると私は考えます(稲盛氏インタビュー)

JALでは、こうした意識改革を短期間でやらなければならないものですから、もう必死でした。本当はぶん殴りたいくらいの人も何人もいました。ビールを飲みながら、濡れたオシボリをぶつけたこともあります(稲盛氏インタビュー)

少し弱音を吐いたときに、名誉会長から、「君の大義は何だ」と聞かれました。「一番好きなフライトをやめて、操縦桿を置いて、執行役員になったのだろう。その大義をもう一度思い出しなさい。それを背中にしっかりと背負ったとき、人は強くなれるよ」と言われました。大義を背負ったときに人は強くなる。執行役員になった当時と比べると、自分自身、強くなったと感じます(植木社長のインタビューより)

◆JALを再生させた5つのカギ
1.衆目にさらされての再生
2.稲盛氏のリーダーシップと社内の共感
3.価値観を共有する仕組みや仕掛け
4.社員が共有できる管理会計の仕組み
5.新しい価値観に基づく社員ひとりひとりの行動

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『JAL再生』引頭麻実・編著 日本経済新聞出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532318548

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◆目次◆
第1章 更生計画を上回るV字回復
第2章 管理者ではなく、リーダーであれ
第3章 部門別採算による意識改革
第4章 トップが現場に出向く
第5章 マニュアル主義から考える現場へ
第6章 価値を生みはじめたバリューチェーン
第7章 改革に死角はないか
終 章 JALを再生させた5つのカギ

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