2013年3月9日

『ハーバード大学特別講義 リーダーシップが滅ぶ時代』 バーバラ・ケラーマン・著 Vol.3154

【ハーバードの最新リーダー論】
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本日の一冊は、最近話題のアメリカ有名大学の特別講義本。

タイトルには、「ハーバード大学」とだけありますが、実際には、数多くの政治リーダーを輩出してきた名門、ハーバード大学ケネディスクールの講師がまとめたもの。

原題は『The End of Leadership』で、これまで隆盛だった研修やオンラインセミナー、ビデオなどの「リーダーシップビジネス」の問題点を指摘し、これからのリーダーシップを論じています。

権力を持つ側から説かれたマキャベリの『君主論』に始まり、トマス・ホッブズの「社会契約説」、権力の分散、均衡を説いたジョン・ロックの理論と説明を続けていき、リーダーシップとそれを支える理論がどう変化してきたか、その変遷を書いています。

われわれは、ついリーダーシップを普遍のものと捉えてしまいがちですが、著者によると、それはちょっと違う。

著者によると、リーダーシップとは、「リーダー」「フォロワー」「状況」の3要素で決まるのであり、これらは時代によっても移り変わる。

特に昨今は、インターネットの登場で、<リーダーの力とフォロワーの力はますます均衡してきて>おり、そんな時代には、これまでとは違ったリーダーシップのスタイルが求められるというのです。

本書には、リーダー中心の考え方を改められなかったばかりに失脚した多くの政治リーダー、ビジネスリーダーの悲惨な例が出てくるのですが、これがじつに読み応えがあります。

有名なビル・クリントンの「モニカ・ルインスキー事件」、信頼の厚かったドイツのグーテンベルク国防相の失脚、聖職者による性的虐待事件に対し、煮え切らない態度を取ったベネディクト十六世の失敗…。

事例を読むだけで、リーダーシップの今日的問題がよくわかる内容となっています。

では、どんなリーダーシップを育めばいいのか、という点は、正直曖昧なままですが、それでもフォロワーを考慮する、悪いリーダーの影響を最小限にとどめるという視点は示されています。

リーダー教育に携わる方、リーダーシップを巡る歴史に興味のある方、これからの組織統率のヒントをつかみたい方は、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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今は、リーダーはなにをするのか命令するのではなく、提案するか、または勧めるのが理想とされている

中間層と最下層の人々、フォロワーである普通の人々の権利意識は、「得るものはより多く、与えるものはより小さく」というように強くなっている

ホッブスが提唱した考え方はこうだ。フォロワーは、絶対君主的なリーダーに絶対権を授与し、その代償としてリーダーは、フォロワーになにかを与える。リーダーは国家を通じて、フォロワーに保護を与える──まず生存権を確保してやり、次によりよい生活を提供する、というものだ

リーダーの力とフォロワーの力はますます均衡してきている

文化が変化し、それに従って技術も進歩すると、フォロワーはリーダーの欠点、以前にはまったく目につかなかったリーダーの些細な弱点に気づくようになる。弱点を知ることによって生まれてくるのは軽視だ

なぜ、起業家精神が最近になって、新たな可能性としてもてはやされるようになったのだろう? 一つの理由は、起業家は、伝統的な階級組織がそれほど魅力的ではない今の時代に、伝統的な階級組織の外で事業を行うからだろう

アメリカを引っぱっていくのは生易しいことではない。だが、今それがかつてないほど難しいのは、あまりに多くの不適格なリーダーがいるからばかりでなく、あまりに多くのどうしようもないフォロワーがいるからだ

リーダーの力、権力、影響力は以前より低下し、他の要素が決定要因となっている時代に私たちは住んでいるのだ。「だからこそ、いなくなった『偉大な人』の穴を埋めるため、リーダーシップビジネスが成長産業になったのだ」

リーダーシップビジネスを今苦しめている問題の一つは、明らかに、有能なリーダーを育成することに固執していることである。無能なリーダーを辞めさせる、または少なくともその害を少なくするという問題を、完全に無視しているからだ

ほとんどの教授法は、フォロワーが重要であることを忘れている

二十一世紀の良いリーダーシップの概念には、命令や支配より、協力や協調という言葉がぴったりだ
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『ハーバード大学特別講義 リーダーシップが滅ぶ時代』バーバラ・ケラーマン・著 ソフトバンククリエイティブ 
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◆目次◆

プロローグ
──二十一世紀のリーダーシップ、そしてフォロワーシップ
第一部 パワーシフト
第一章 歴史的軌跡──衰えゆくリーダーの力
第二章 文化的制約──対等な立場で勝負する
第三章 避けられない技術革命──テクノロジーに振り回される
第二部 時代の変遷
第四章 社会契約──むしばまれる信頼関係
第五章 今アメリカで──弱体化するリーダー
第六章 世界的な動き──勢いづくフォロワー
第三部 パラダイムシフト
第七章 リーダーシップビジネス──リーダーシップ大流行の中で
第八章 特別講義完了──現代に求められるリーダーとは
訳注
参考図書

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