2013年1月25日

『広告論講義』天野祐吉・著 Vol.3111

【これぞロングセラー】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000228250

本日の一冊は、創元社、博報堂などを経て、1979年に「広告批評」を創刊、コラムニストとして活躍中の天野祐吉氏が、20世紀の広告を振り返った名講義の単行本化。

発行された2002年以来、ロングセラーとなっている本ですが、読んでみて、その意味がよくわかりました。

<大量生産・大量消費・大量流通という巨大な歯車をまわしてきたのは広告であって、その働きなしにはいまのような大衆消費社会というのは成り立たなかっただろう>とのっけから鋭い視点を披露し、その幕開けとなったパリ万博を取り上げて論じています。

著者によると、<広告が売るのは、基本的にイメージ>だそうですが、このパリ万博は、<革命的な商品やエンターテインメントにかこまれた“二〇世紀的生活”の夢を、技術文明の成果が約束する“豊かな生活”のイメージを、全世界にいきいきと広告してみせた>。

以後、ビジネスがどう展開したか、どんな商品が登場し、どんな広告が出現したか、歴史に残る名コピーも含め、紹介されています。

実際にあったかどうかわからない、シャクルトンのコピーや、デイヴィッド・オグルヴィのロールスロイスの広告コピー、歴史に残るフォルクスワーゲン(VW)のコピーなど、数多くの作品が紹介されており、読ませてくれます。

<求む男子。至難の旅。僅かな報酬。厳寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る>──アーネスト・シャクルトン

<時速六〇マイルで走るとき、このロールスロイスから聞こえるいちばん大きな音は、クルマのなかの電気時計の音です>──デイヴィッド・オグルヴィ

<小さいことはいいことだ> ※フォルクスワーゲンのコピー

典型的な広告の枠にとらわれず、ヒトラーの演説やカーレースなど、広い意味での広告に属するあらゆるトピックを取り上げており、じつに興味深い内容です。

いつの時代も、「転換点」に鈍感な人間は生き残れないものですが、本書を読み、「20世紀とは何だったのか」を振り返れば、自ずと今後、求められるものも見えてきます。

資料価値として秀逸。読んで面白い。これを買わない手はないでしょう。

ぜひ読むことをおすすめします。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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大量生産・大量消費・大量流通という巨大な歯車をまわしてきたのは広告であって、その働きなしにはいまのような大衆消費社会というのは成り立たなかっただろう

一九〇〇年のパリ万博は、革命的な商品やエンターテインメントにかこまれた“二〇世紀的生活”の夢を、技術文明の成果が約束する“豊かな生活”のイメージを、全世界にいきいきと広告してみせた

宗教広告が“安心”を、政治広告が“安全”のイメージを売ってきたのに対して、商業広告は何を売ってきたかと言えば、それは“安楽”のイメージです

欲望のビッグバンを引き起こした主役は万博ですが、その万博には百貨店という名コンビがいました

求む男子。至難の旅。僅かな報酬。厳寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る──アーネスト・シャクルトン

未知の世界を見物しようと、たくさんの人たちがぞろぞろ地球の上を歩き回る。二〇世紀は、そんな“人類大移動の世紀”という一面を持っています

富山の薬売りは、薬を売るというより、世の中のニュースを売って歩いたんですね。ワイドショー的なうわさ話やニュースを持っていくと、たいていの人は話聞きたさに家の中に入れてくれる。で、ニュースを話して、その見返りに薬箱を置いてもらう。そういううまいやり方をしていたんです

リースマンの言葉を借りれば、「若者には親の考え方や監視からの自由を、黒人には黒人専用席からの自由を、既婚者には配偶者からの自由を、独身女性には男のエスコートからの自由を」といったように、まさにクルマは、さまざまな“~からの自由”を世の中に提供することになったのです

“単純化と反復”──これこそが大衆説得のコツ

「宗教的、政治的方法での偉大な歴史的なだれを起こした力は、永遠の昔から語られることばの魔力だけだった」(『我が闘争』)

「小さいことはいいことだ」(VWの印刷広告)

一口に言って、インターネット広告は、情報を個人化し、言葉をムラ化する

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『広告論講義』天野祐吉・著 岩波書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000228250

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◆目次◆

第一講 パリ万博──欲望のビッグバン
第二講 南極探検隊員募集──未知への誘惑
第三講 エンゼルと福助──消費者の登場
第四講 T型フォード──民主主義を広告する
第五講 ヒトラー──ナショナリズムを売る
第六講 スモカ歯磨──差異化のパイオニア
第七講 フォルクスワーゲン──裏返しのステータス
第八講 アンクルトリス──インテリげんちゃんの出現
第九講 NASA──地球を広告する
第一〇講 ハングリー?──二一世紀への送り状
補 講 広告の明日──20世紀は終わったのか

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