2013年1月26日

『ニッチ:新しい市場の生態系にどう適応するか』ジェームズ・ハーキン・著 Vol.3112

【大衆が消える時代の市場の見つけ方とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492522077

昨年末、大晦日の紅白歌合戦は、マス時代のスーパースターと、特定のコミュニティで支持されているニッチャーをごちゃまぜにした、総合デパートのような品揃えでした。

本日紹介する『ニッチ:新しい市場の生態系にどう適応するか』は、この紅白歌合戦のようにあらゆる人を取り込もうとした結果、苦境に陥ったギャップ、そして倒産してしまった英国ハイストリートの小売業者ウールワースの話から始まります。

著者によれば、これらの企業が行き詰った原因は、市場から、「真ん中」が失われてしまったこと。

ギャップは、アバクロやJクルー、H&Mに駆逐され、ウールワースはウォルマートやコストコに駆逐されてしまったのです。

「そこに行けば何でもある店」は、インターネットで「どこに何があるか自分で見つけられる」消費者に存在価値を否定され、大量生産品の価格は底値まで下落する。

一方で、入手しづらい特別な商品のためなら、余分なお金を払うことを厭わない新たな客層も生まれていると、著者は指摘しています。

大きいものがどうしてダメになったのか、映画や書籍、小売りなどさまざまな業界事例を分析し、その原因を徹底追求。そして、どうすればビジネスマンやマーケターが、ニッチマーケットの心をつかめるのか、ヒントが示されています。

なかでも有用なのが、ラストに出てくるオートバイディーラー、トム・ヒックスの言葉でしょう。

<トライアンフが好きな人は、ハーレーが数台置いてあったり、トライアンフと無関係のTシャツがあったり、トライアンフのことをまるでわかってない販売員が一人でもいたりする店に入りたがらない。熱狂的なファンが私の店にやってきて、自分が夢中になっているものに関するものが何でもあるとわかったら、驚嘆して二度とよその店に行こうと思わなくなる>

<オートバイは個々で楽しむ乗り物だが、結局は、一緒に走れる仲間が必要になるんだよ>

著者いわく、<さまざまな居場所や何かを熱心に支持する集団がこれだけたくさんある環境で、新しいものに関心を持ってもらうためにはどうすればいいのか? その答えはもちろん、人々が集まれる場所を自分で育てていくしかない>。

ビジネスに活かすニッチの見つけ方、コミュニティ作りのヒントが学べる一冊です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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ウールワースのように市場の真ん中に位置し、中程度の品揃えの小売業者は、あらゆる方向から攻撃されているのが現状だ

異なる文化を融合しようとすると、それぞれが独自に新しい環境のなかに居場所を見つけてしまうのだ

既存の店や商品を比較できるようになったことで、人々は非情なまでに底値を追求する消費者へと変わり、オンラインで誰でも手に入れられるものの価格が下がるようになった。その反面、入手しづらい特別な商品のためなら、余分なお金を払うことを厭わなくもなった

彼ら(ニッチバスター媒体)に共通するのは、一般大衆に何かを説明するのではなく、その狭い分野を余すことなく知りたいと思っている人々のために徹底して調査するということだ

何かの熱狂的ファンのグループの仲間になると、微妙な違いなどがわかるようになり、彼らと一緒にいるのがどんどん楽しくなっていく

個々がたまたま持ち合わせている特性を通じて識別するのではなく、個々の関心の矛先で識別する

さまざまな居場所や何かを熱心に支持する集団がこれだけたくさんある環境で、新しいものに関心を持ってもらうためにはどうすればいいのか? その答えはもちろん、人々が集まれる場所を自分で育てていくしかない

「トライアンフが好きな人は、ハーレーが数台置いてあったり、トライアンフと無関係のTシャツがあったり、トライアンフのことをまるでわかってない販売員が一人でもいたりする店に入りたがらない。熱狂的なファンが私の店にやってきて、自分が夢中になっているものに関するものが何でもあるとわかったら、驚嘆して二度とよその店に行こうと思わなくなる」(オートバイディーラー トム・ヒックス)

今は、誰もがほかの人と違う存在になりたがっているので、ハーレーダビッドソンのような大手ブランドのバイクですら、購入者の手によって装飾を施されたりカスタマイズされたりしている

ヒックスはこんな言い方をしていた。「オートバイは個々で楽しむ乗り物だが、結局は、一緒に走れる仲間が必要になるんだよ」

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『ニッチ:新しい市場の生態系にどう適応するか』ジェームズ・ハーキン・著 東洋経済新報社
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◆目次◆

第1章 市場から「大衆」が消えた──怪物企業の支配は終わった
第2章 次のターゲットはどこか?──市場を細分化する怪物たち
第3章 主流の下は宝の山?──モグラになる怪物たち
第4章 与えても見向きもされない──タカになった消費者
第5章 タカはどこに舞い降りるのか?──生態系が変わればニッチも変わる
第6章 熱狂的なファンの群れ──類は友を呼ぶ
第7章 隣の群れは何の群れ?──ニッチに潜む問題点
第8章 カルトを育てる

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