2012年12月18日

『不運のすすめ』米長邦雄・著 vol.3073

【追悼・米長邦雄】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047100544

7年前に書いた『成功読書術』の「勝負師たちに学ぶ極意」で、9人の勝負師の一人として紹介させていただいた、米長邦雄棋聖が、本日お亡くなりになりました。

※参考:『人間における勝負の研究』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396310498

氏は、84年に十段、棋聖、棋王、王将を獲得し四冠王となるなど最強棋士としての道を歩み、85年には永世棋聖、93年に戴冠し、49歳11カ月で史上最年長初の名人となった人物です。

株式投資にも造詣が深く、それだけに面白い「勝負論」を展開する方でした。

本日は、この米長邦雄氏の死を悼みつつ、氏の書籍を紹介したいと思います。

タイトルこそ『不運のすすめ』とネガティブですが、中身は骨太の勝負論・人生論。

これまで読んだ氏の作品は、他の棋士や弟子の話が多かったのですが、本書は、米長氏の人生にフォーカスしていて、とくに興味深く拝読することができました。

<私は、誉め言葉に乗って「運」を開いたのである>
<懸命に考えたあげく、「勝って相手の首を斬る」という決断を下した>
<若手に師事してタイトル戦へ>

氏のプロ棋士としての生き方を追いながら、勝負とは何か、人生とは何かを考えさせられる一冊です。

「人生に負けない勝負師」になるには、プロとして勝つことで得られる幸せと、負けてもなお保証される幸せを目指すこと。これは良い気づきとなりました。

本書のなかで、<いつの日か人生を終える時に、勝負の世界の尺度ではなく、米長邦雄という一人の人間としての尺度で、幸運な人生だったのか、不運な人生であったのかをトータルに判断したい>と語った著者。

ご本人が晩年、どう感じてらっしゃったのかは知るべくもありませんが、ビジネス書ファンとしては、優れた本をいくつも遺してくださったことに感謝するばかりです。

ありがとうございます。心よりご冥福をお祈りいたします。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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プロ棋士は、一度指した手を引っ込めてはいけない

混迷の中にある時には、原点に戻るのがいちばん

「人生、笑える時に笑っておけ。すぐに泣く時がくる」
(升田幸三氏に贈られた言葉)

私は、誉め言葉に乗って「運」を開いたのである

真剣勝負はあとくされを残さないものなのである

慈悲の心とは、本来人間が持っている智恵によって、この世に存在するさまざまな問題の解決を図ることである。他人の幸せのために自分が犠牲になることではない。自分が負ければ目の前にいる人が幸せになるような気がするのは、錯覚にすぎない

私は、二つのことをめざした。第一は、将棋に勝つこと、将棋が強いことによって得られる幸せ。これは棋士としての本道である。第二には、将棋に負けてもなお保証される幸せ。この二つをめざしていれば、「人生に負けない勝負師」になれる

この先も私は、過去の実績が通用しない世界で自分の道を切り開いていきたい。そして、いつの日か人生を終える時に、勝負の世界の尺度ではなく、米長邦雄という一人の人間としての尺度で、幸運な人生だったのか、不運な人生であったのかをトータルに判断したい。それが私の生き方だ

すべからくプロ棋士は、不利な形勢に置かれた時はじっとしながら、「逆転するには、どこで、どういうことをすべきか」を一心不乱に窺っているものである。今は自分が不利だが、相手はどこかで絶対に間違える。俺がこのあと百点満点の手を指し続け、これ以上形勢を悪くしないで粘っていれば、必ず相手は一手間違えるぞ、という気持ちで指している。この気魄ともいえるエネルギーが「不利の勢い」である。その勢いは相手に伝わる

好調時に欠点を直し、不調時に長所を伸ばす

常に頭の中のガレージを新車でいっぱいにしておくこと、これが「若さ」なのである

世の中には、個人の勝利などよりももっと大切な「勝ち」がある。これは、運・不運を考えるうえで非常に重要なことである

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『不運のすすめ』米長邦雄・著 角川書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047100544

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◆目次◆

第一章 不運は人を強くする
第二章 運も不運も実力のうち
第三章 貧乏神に好かれないために
第四章 「道」を忘れれば運も落ちる
第五章 晩年の運の呼び方
第六章 明日の勝利をつかむために
終 章 「名人戦問題」の不運は誰か

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