2012年11月1日

『投資で一番大切な20の教え』ハワード・マークス・著 vol.3026

【珠玉の一冊。あのバフェットが絶賛した投資本】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532355397

<デイトレーダーは、ある株式を一〇ドルで買って一一ドルで売り、翌週に二四ドルで買い戻して二五ドルで売り、さらに一週間後に三九ドルで買って四〇ドルで売る、といった取引をしたときに、成功したと思うらしい。三〇ドル値上がりした株を売買したのに三ドルの利益しか得ていない、ということに気づかない人は、これ以上、本書を読むべきではないだろう>

辛辣なコメントでデイトレーダーを一刀両断しているのは、『投資で一番大切な20の教え』の著者、ハワード・マークス。

日本ではまだまだ知名度は低いですが、「リーマン・ショックで最も稼いだ運用会社」であり、世界最大級の投資運用会社、オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者兼会長です。

あの世界一の投資家、ウォーレン・バフェットをして「君が本を書くなら、必ず推薦文を寄せる」と言わしめた賢人による、待望の一冊。

バンガード・グループ創業者のジョン・C・ボーグルが「投資関連書として他を圧倒する水準」と絶賛している、折り紙つきの内容です。

読んだ感想から申し上げれば、本書は、2012年に出た投資本のなかで、文句なしのNo.1。10年後も読まれる価値のある、珠玉の一冊です。

歴史的視点と知性をベースに、投資で勝つための本質をとらえた、ウィットに富んだ内容。

「バリュー投資」と「グロース投資」を中心に、勝つための投資術を指南し、<平均的な投資家を上回る成績をあげる(アウトパフォームする)には、コンセンサスの裏をかく必要がある>として、そのための具体的方法を説いています。

著者が提唱する考え方のなかで興味深かったのは、「二次的思考」という思考スタイル。

これは、情報面と分析面のどちらか、あるいは両方から決断の差異化をはかる方法で、具体的には、以下を読むとイメージしやすいでしょう。

<「これは良い企業だから、株を買おう」というのが一次的思考。一方、「これは良い企業だ。ただ、周りは偉大な企業と見ているが、実際にはそうではない。この株は過大評価されていて割高だから売ろう」というのが二次的思考である>

人と違う行動をすることは、投資で勝つための必要条件ですが、それだけではダメだと指摘しているのが、本書の深いところ。

<どんな資産も、高すぎる価格で買ってしまえば悪い投資になる>

<投売りする人から買い、どんな価格でもよい買い手に売るというやり方で投資家としてのキャリアを築くことはできない>

<市場が活況を呈している時期には、最も高いリターンは最も高いリスクをとった者によって達成されることが多い>

正論を吐く投資家が陥りがちな罠を指摘し、状況に応じて判断が異なることを詳述している点は、単なる金言集、理論書にない、実践家の本ならではの特長と言えるでしょう。

チェックポイントをまとめるだけで、一冊できてしまいそうなほど、充実した内容。

これはもう買うしかないですね。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「これは良い企業だから、株を買おう」というのが一次的思考。一方、「これは良い企業だ。ただ、周りは偉大な企業と見ているが、実際にはそうではない。この株は過大評価されていて割高だから売ろう」というのが二次的思考である

二次的思考をする者は、すばらしいパフォーマンスを達成するには、情報面と分析面のどちらか、あるいは両方で強みを持つ必要があるとわかっている

過ちとミスプライシングが起きている市場では、類まれな洞察力を持った者が勝つことが可能である

「あそこに落ちているのは一〇ドル札では?」と言う学生に、教授が答える。「いや、そんなわけはない。もし一〇ドル札なら、誰かが拾ってしまっているはずだ」教授が立ち去ったあと、学生は一〇ドル札を拾い上げ、一杯のビールにありついた

どんな資産も、高すぎる価格で買ってしまえば悪い投資になる

良い買い物は半ば売れたも同然

投売りする人から買い、どんな価格でもよい買い手に売るというやり方で投資家としてのキャリアを築くことはできない。このような相手はつねに存在するわけではなく、危機時かバブル期という、まれにしか訪れない極端な状況でのみ出現するからだ

市場が活況を呈している時期には、最も高いリターンは最も高いリスクをとった者によって達成されることが多い

振り子の軌道の中心点は「平均的な」位置と呼ぶにふさわしいが、実際にその場所に振り子がある時間はほんの一瞬である。そもそも、振り子は軌道の一端からもう一端へとほぼ休みなく揺れ動いている。そして一端に近づけば、遅かれ早かれ中心点に向かってまた動きが反転することは避けられない。じつのところ、一端に向かう動きこそが、もう一端へ揺れ戻るためのエネルギーを生み出すのだ

賢明な人が最初にやること、それは愚か者が最後にやることだ

儲かる投資機会を逸することは、損をする投資に手を出すほど重要な問題ではない

レバレッジは結果の度合いを増幅させるが、価値の増大にはつながらない

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『投資で一番大切な20の教え』ハワード・マークス・著 日本経済新聞出版社

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532355397

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◆目次◆

1.二次的思考をめぐらす
2.市場の効率性(とその限界)を理解する
3.バリュー投資を行う
4.価格と価値の関係性に目を向ける
5.リスクを理解する
6.リスクを認識する
7.リスクをコントロールする
8.サイクルに注意を向ける
9.振り子を意識する
10.心理的要因の悪影響をかわす
11.逆張りをする
12.掘り出し物を見つける
13.我慢強くチャンスを待つ
14.無知を知る
15.今どこにいるのかを感じとる
16.運の影響力を認識する
17.ディフェンシブに投資する
18.落とし穴を避ける
19.付加価値を生み出す
20.すべての極意をまとめて実践する
訳者あとがき

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