2012年11月18日

『世界の経営学者はいま何を考えているのか』入山章栄・著 vol.3043

【本場アメリカ経営学の最前線。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761097

本日の一冊は、最近オフィスに届いた本のなかで、最も楽しみにしていた本。

週末にゆっくり読もうと思って、とっておいたのですが、これは大当たりでした。

『世界の経営学者はいま何を考えているのか』は、慶應義塾大学大学院、三菱総合研究所を経てピッツバーグ大学経営大学院で博士号を取得、2008年からニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサーを務める著者が、経営学の最前線を紹介した一冊。

ドラッカーがアメリカのビジネススクールであまり読まれていない事実や、ポーターの競争戦略が時代にそぐわなくなっている事実、ハーバード・ビジネス・レビューが学術誌ではない理由などを挙げ、日本のビジネスマンに、アカデミックの最先端を見ることを勧めています。

今の時代に成功している企業は、「一時的な競争優位の連鎖」を生み出しているという可能性を指摘したダヴェニ、それを明らかにしたウィギンズとルエフリをはじめ、経営学の巨人たちの知が次々登場し、重要な示唆を与えてくれます。

いくつか、役立ちそうな主張、研究成果を挙げてみましょう。

<人間のカップル、チーム、組織は、互いを知りあうほど「相手が何に詳しいか」というトランザクティブ・メモリーを自然に持つようになる>(ウェグナーたちの主張)

<ストラクチュアル・ホールを多く持つ人は、ネットワーク上に流れる情報や知識をコントロールすることができるようになるため、それを利用して得をすることができる>(バートが生み出したストラクチュアル・ホールの概念)

◆ヘイワードとハンブリックの研究
1.過去に買収で成功をおさめた経験のあるCEOが率いる企業は、その後の買収で高いプレミアムを払う傾向がある
2.メディアが賞賛しているCEOが率いている企業ほど高い買収プレミアムを払う傾向がある
3.報酬が高いCEOほど自身の経営手腕が高く評価されていると過信するために、その後の買収プレミアムが高くなる

いずれの知識も、著者がアメリカで学んだこと、あるいは著名な学術誌で発表された論文をもとにしており、まさにビジネスの知の最前線。

大学、あるいはビジネススクール卒業以来、10年以上経っているという方には、知識をアップデートするため、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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アメリカの経営学者はドラッカーを読まない

ハーバード・ビジネス・レビューは学術誌ではない

「おもしろい」ということと、それが「真理に近い」かは別の話

効率性の視点からは、企業とは「市場取引ではコストがかかりすぎる部分を組織内部に取り込んだもの」

現在の優れた企業とは、長いあいだ安定して競争優位を保っているのではなく、一時的な優位をくさりのようにつないで、結果として長期的に高い業績を得ているように見えている(ウィギンズとルエフリ)

<人間のカップル、チーム、組織は、互いを知りあうほど「相手が何に詳しいか」というトランザクティブ・メモリーを自然に持つようになる>(ウェグナーたちの主張)

◆内生性の問題
ポイントは、BとCの矢印を見過ごしてしまうことで、Aの矢印が本当は存在しないのに、あたかもそれがとても重要な経営効果であるかのように過大評価してしまうこと

人材を入れ替えたグループのほうが入れ替えを行わなかったグループよりも多様なアイデアを生み出せる

◆コンピテンシー・トラップ
当面の事業が成功すればするほど、知の探索をおこたりがちになり、結果として中長期的なイノベーションが停滞する

より多様な情報を効率よく遠くまで拡散するには、実は弱い結びつきからなるネットワークのほうが優れている

<ストラクチュアル・ホールを多く持つ人は、ネットワーク上に流れる情報や知識をコントロールすることができるようになるため、それを利用して得をすることができる>(バートが生み出したストラクチュアル・ホールの概念)

◆ヘイワードとハンブリックの研究
1.過去に買収で成功をおさめた経験のあるCEOが率いる企業は、その後の買収で高いプレミアムを払う傾向がある
2.メディアが賞賛しているCEOが率いている企業ほど高い買収プレミアムを払う傾向がある
3.報酬が高いCEOほど自身の経営手腕が高く評価されていると過信するために、その後の買収プレミアムが高くなる

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『世界の経営学者はいま何を考えているのか』入山章栄・著 英治出版

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4862761097

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◆目次◆

CHAPTER1 直感を信じる
CHAPTER2 リスクを負う
CHAPTER3 物づくりの本質
CHAPTER4 組織改革
CHAPTER5 仕事とは本来、温かいもの

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